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傷口に塩 *プチざまぁ

後半、スリラーな雰囲気になります。

(グロくはない)


 …………ここから遥か先、約6km地点にて、

ボロボロな斧戦士の男1人と、魔法使い、

聖職者の女2人が確認できた。俺にとって、

憎たらしいほど見覚えのある3人は、一様に

悲しさと悔しさにまみれた表情をしている。


(ボロボロ加減は、強いモンスターとも、

仲間割れとも、何とでも説明が着く。だが、

あの表情と直前に会った(アーロン)阿修羅(あしゅら)(づら)から

推測すると、やはり奴の単独蛮行で

ああなったのだろうな)


 あの()弊具合(へいぐあい)に、精神的ダメージ。更に

この距離であれば、憎き3人を殺すことなぞ

造作も無いことだった。


(…………だが、殆ど美味(おい)しい思いだけの人生で、

死なせるなんてさせるかよ。…………少なくとも、

あの時の飛竜の子と俺の苦しみの倍以上の屈辱と

苦痛を与えるまでは…………お前達の現世の地獄は

終わらないぞ)


 勿論、ここで何もせずにギルドへ帰還させる

つもりは毛頭無い。だが、行動には優先事項がある。


(聖女を語る悪魔(アリス)は、バルディを誘惑して

拷問の実験台にしようとする恐れがある。

ボロボロなのは情けを誘う上では好都合

だからな)


 まずは、最も残虐なあの悪魔(アリス)から考察した。


(癇癪イビり女(ローズ)は、クレイン以外の俺達を

ストレスの()け口にしようとするだろう。

他2人と徒党を組むのは確実だし、接近は

俺以外の3人があまりにも危険だ)


 あの狂乱(ローズ)も、危険だと判断した。そして


(あの糞DV男(カルロス)。奴は事すれば、あの2人よりも

はるかに危険だ。奴の本性を知らないバルディは、

抵抗力が皆無だし、敏捷性すら、クレインさん

以上だから、本気で俺の近くの2人を狙って

きたら、あまりにも危険だ。特に…………)


 チラリとミュールの方を向いた。


(彼女(ミュール)は実際にワイセツ行為の被害に()いかけ、

俺が超遠方から救助している。間違ってでも

会わせるわけにはいかない!)


 会ってしまったら、どうなるかは目に見えている。

全身に一生残る傷を着けさせられ、そして、弄ばれる。

俺達も、特に訓練生ライバルのバルディは、そんな様

を無力に見せつけられたら、精神が持たないだろう。


(そうならないために、最低でも3人のルートを

奴等(外道達)とずらす必要があるな)


「ワイルド、どうしたの?」


 さっきチラリと見たから、ミュールが何か

あったのかと聞いてきた。


「あー、いや、ミュール達って何処に向かおうと

しているのかな~ってな」


「私はここから左に直進だよ。皆とはここで

お別れだね♪」


「俺は斜め左だ」


拙者(せっしゃ)は東東北だ」


「「とうとうほく??」」


 ヤマト王国の方位表現法が分からない2人は

同時に聞き返した。


「要するに…………うん、北30度東って事だな」


 表現方法が直ぐに浮かばなかったが、(かろ)うじて

要約(ようやく)できたと思う。


「成る程~~。クレインさん、明日ヤマト王国の

事を色々と教えてください!」


「うむ、了解した」


「おーおー、真面目だねぇ~~」


「でも、良いことだと思うよ~~」


 そう、誰1人として、奴等(外道達)と進路が被らなかった

のだ。因みに、俺は北60度東に進む。

クレインさんに言わせれば、北北東だ。


「じゃあ、時間が合えばまた明日会おう!」


「おう!」

「うん!」

「ああ」


 こうして、解散となった。さてと…………


(奴等(外道達)が道草でバルディや俺の方に向かわないように、

(なお)()つ更に精神を追い詰めてやる為に、"傷口に塩を

塗ってやる"よ…………)


 俺は(しゅく)()で移動しながら、中心のカルロスの

頭上5mに、召喚の座標を設定した。

 地球側の座標は、イスラエルとヨルダンに

挟まれた、"とある湖"に設定した。


「ゼェ…………ゼェ…………(ビッグ)召喚(ゲート)特濃(アルティメット)塩擊(デスソルト)

モグモグ」


 そして竜肉を取り出しながら、大召喚を0.5秒

だけ展開し、奴等に湖の水を落とした。自然な重力

に沿って落ちた水に、奴等の誰一人として、反応

することは出来なかった。そして俺は肉を(むさぼ)

食った。


「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアア

ッッッッッ!!!!!」」」


 完璧な一撃だった。傷だらけの奴等の身体に、

塩分濃度約30%の湖水が容赦なく侵入したのだ。

塩分濃度3%の海水でも苦痛を感じるのに、その

10倍の塩水を染み込まされたのだから、(みにく)

地べたに()いつくばり、のたうち回るのも無理は

無いだろう。


 少しは飛竜の気持ちが分かったか? 虐殺家女(アリス)


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」


 効果としては抜群といえるレベルだったようで、

虐殺家女(アリス)は元の端麗(たんれい)な顔の面影が無いほど、目と(あご)

開きながら叫び散らしている。


「モグモグ、極小(ミニマム)多重(アロット)召喚(ゲート)特濃(アルティメット)塩拷問(デスソルターチャー)


 とどめに、奴等の傷口に沿って極小召喚を

多重展開する事で、避けられない追撃を

絶え間なく続けた。


 飛竜の苦しみを再現する絶好のチャンスだった為、

虐殺家女(アリス)は特に多くの門を配置した。


「いやー、恐るべしは死海の塩分濃度ですわー」


 塩分濃度30%水、これ程裂傷に効果抜群の

攻撃も、そうそう無いだろう。


「さて、畑荒らしすぎなスーパーボア君の討伐に

向かおうか」


 今回の俺の受注クエストは、山の(ふもと)の農家の

おじさんの依頼だ。巨大猪・スーパーボアの

ものと思われる食害が、収まる気配が見られない。

魔法も使えないおじさんの作る罠では、全く歯が

立たないため、モンスター討伐としてD級クエスト

に配備される運びとなった。


「こんにちは、冒険者ギルドから派遣された

D級冒険者、ワイルド・サモン・フェリンです」


「おお、お主が冒険者さんか。ワシはビアードじゃ。

奴に関係する質問はドンドン聞いてくれ」


「分かりました。先ずは…………」


 2分ほど、ビアードおじさんから、食害の

詳細を聞き、特に害されたブロンズキャロットの

食われた残骸(ざんがい)を出してもらった。


「ヒドイものじゃろう…………。芯の1番うまい

部分だけ乱雑に食い散らかされてのォ…………」


「お言葉ですが、完全に舐め腐った食われ方と

言えますね。ですが、こんな堂々と痕跡を残して

くれたお陰で、俺は直ぐに犯人を見つけることが

出来そうです。スキル : (しゅう)分解析(ぶんかいせき)レベル2!」


 食われたニンジンに着いた"()(えき)"から、

うっすらと食獣の全体像を浮かばせていく。


「…………推定体高2.7m、推定体長5mクラスの

スーパーボア…………が、犯人だと思われます。

…………この臭い、よくよく()ぐと畑中に広がって

いますね」


「臭いで…………把握しているじゃと!?」


 ビアードおじさんは、俺の超嗅覚に驚いて

いるようだ。そして俺は、スキル : ()跡嗅読(せきしゅうどく)

レベル1の(おもむ)くままに、猪の足跡を次々と

発見し、歩幅の距離や臭分解析レベル2で

得られた情報を掛け合わせ、更なる猪の詳細を

(ひも)()いていった。


「ビアードさん、犯人の詳細は全て解析

出来ました。先程の大きさに加え、性別は雄、

年齢は約7歳ですね。足跡の自信からみても、

スーパーボア最強格の個体です」


「そ、そんな奴が…………ワシの畑に…………」


「そしてここからが大事なポイントです。奴は

畑の作物を食べ飽きている様子でして、さりとて、

山の獣すら食べ飽きています。しかし、1種類

だけ、食べたことの無い動物が居るようです」


「…………まさか!」


「人間です。本来、スーパーボアといえども、

襲うのは精々小型の昆虫型モンスター位です。

大型生物は、死体でなければ食べません」


「じゃが…………奴はスーパーグリズリーを含む

全ての獣すら捕食せしめる頂点捕食者。加えて、

ワシのせいで人も恐くない…………」


「そうです。段々と臭いが近づいてきました。

あっ、そこの木陰からこちらを見ていますよ~~」


 お出ましだった。怪物以外の何でもない猪は、

名を体で表すが如く、一直線にチーター並の速度に

加速し、ビアードおじさんに向かってきた。


 "お前を食ってやろうと"


「はい、ストップ!」

『ドォン!!!』


 (せつ)()の一瞬で、俺の両腕が猪の両牙(りょうきば)を捉え、

その巨体を()き止めた。


「ビアードさんは兎も角、俺は君を恨まない。

だけど、彼に危害を与え続ける君を生かして

おけなくなった。だから、ゴメンね」


 俺はそう言って、スーパーボアをジャイアント

スイングし、地面に叩き付けて即死させた。


「大自然の命に、感謝します」


 そして、余すことなく彼の素材を()()り、

肉の1部をビアードおじさんに分けて、美味しく

食べられる簡単な調理法も教えた。


「何から何まで…………何とお礼を申し上げれば良いか」


「いえ、お仕事分の報酬を頂いたので、他は

何も求めません」


 冒険者の中には、依頼主を下に見て、現金を

カツアゲする(やから)も存在する。形は違えどアーロンも

その1種であり、俺は奴が言葉巧みに金を巻き上げる

様子を何度も見ていた。そして、その度に自分の

無力さに苦しんでいた。


「ワイルドさん、お暇な時にいつでも来てください。

最高のブロンズキャロットをご馳走しますぞ」


「ありがとうございます。友達にもビアードさんの

ブロンズキャロットを紹介しますね!」


 俺はそう言って、任地を後にした。虫料理の前に、

猪料理の研究だ!

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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