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パワー・リフト!!

皆大好きワークアウト!

「バルディ、何かもめ事でも起こしたか?」


 俺は、緑髪の女の子と口論になっているバルディに

話しかけた。


「おおっ! 心友(しんゆう)のワイルドじゃねぇか! 丁度

良かった! 聞いてくれよ、このチンチクリンが

よぉ…………」


 俺の問いかけに反応したバルディが、状況説明を

開始したのだが…………


「あーーー! バルディ、身体はデカイ癖に、

2対1で私を論破するつもり!? 流石に

キンタマ小さすぎよ!」


「なぁんだとぉ!!?」


 女の子が俺を加勢させまいと、バルディに

釘を刺した。そして見事にバルディを狼狽(ろうばい)させた。


「2人とも落ち着いてくれ(てか俺、いつから

バルディの親友(しんゆう)扱いになってるんだ??)。まず、

どうして口論になったか説明してくれ。戦士系

じゃない第3者視点の意見を述べるつもりだ」


「あん? 助太刀に来たんじゃねーのかよ…………」


「それはこの子の主張の正当性次第だ。えっと…………」


「ミュールです。もうちょっとでE級昇格予定の

戦士です。後、いくら1ランク上だからって、

女の子扱いは控えて欲しいです…………」


 俺の事を知らないミュールは、俺がバルディの

友人ということで、一緒にE級に上がったと思って

いるらしい。


「おいおい、彼は"2ランク"上だぞ」


 正直ランク差はどうでも良かったが、バルディが

訂正してくれた。


「え…………?? あっ! 凄い働きぶりで飛び級

昇格した人だ!」


「へぇ、ちょっとは(うわさ)になっていたんだね。

それで、何でバルディと口論になっていたの?」


 …………まぁ、先程盗み聞いた内容だけで、どんな

口論だったのかは目星が着いているけどね。


「…………私が、アースヒーローズのカルロスに乱暴

された事実を、バルディが認めてくれなかったことで

口論になりました」


 やはり、そうだった。というか、3日前に

彼女の事をカルロスから救ったのは、紛れもない

俺自身なのだから。


「アースヒーローズ…………女王様が召喚した

転生者達で結成されたパーティーだよね。

そんな選ばれし英雄候補の中に、女性に乱暴を

働く(やから)がいるのか…………」


 まぁ、正確には俺以外の4人全員が、絶対に

(ゆる)してはいけない極悪外道な輩なんだけどね。

…………きっと、俺が覚醒する以前にも、多くの

人々や動物達が、人知れず奴らに苦しめられ、

時に殺害されていたのだろう。


「はい。私は実際に、"才能がある"とか都合の

良い事を吹き込まれ、断れない状況でクスリ入りの

酒を飲まされ、そして…………」


 そう思うと、腹の底から腸が煮え繰り返る

思いに包まれる。俺が覚醒せずにレッドドラゴンに

食われていたら、目の前のミュールも地獄の苦痛を

味合わされた後に、最悪死んでいたのだろう。


 そうなったら、友人(?)のバルディもきっと…………


 というか、


「どうにか逃げ延びて…………ヒグッ、ギルド長に

報告した次第です…………グスッ」


「成る程な。バルディ、俺はどうにもミュールが

嘘をついているように見えない。彼女、普段から

嘘泣きとかするタイプだったか?」


 バルディはカルロスの事をどう思っているん

だろう? てか、勢いで話を振っちまったけど、

2人は同郷なのかな?


「…………いいや、戦士訓練生時代から、実直で

マジメだけが取り柄の芋女だったぜ。流石に

今の見たら、カルロスさんg…」

「だ・れ・が、芋女よーーーー!!」

『バァン!!』


 ミュールは素早く涙を拭い、その反動で

右ストレートを繰り出した。が、バルディの

左手で軽く受け止められてしまった。


「おいおい、信じてやったのにこの仕打ちは

ねぇだろ」


「信じるのは当然! でも私を芋女と侮辱した

分を顔面に食らいなさいよ!」


 遂に連打まで開始した。流石にこちらを見始める

ギャラリーが現れだしたので、


『『ガシッ!』』


「気持ちは察するが、落ち着いてくれ。後で

伸び伸びとバトル出来る場所を案内するからさ」


 俺はミュールの両腕を(つか)んで止めた。


「っえ? 動かないんだけど!?」


 ミュールは召喚士の俺に、力で負けた事に

心底驚いている様子だ。


「鍛え方が違うからね。それはそうとバルディ、

ここまでの話を聞いて、カルロスの印象は

変わったか?」


「…………まぁ、ちっと幻滅(げんめつ)したわな。…………けどさ、

A級の竜族相手でも斧の一撃で瞬殺する勇姿は、

どうしても脳裏から離れねぇんだよなぁ…………」


 アースヒーローズが、とあるクエストを受けて

いた時に、A級の竜族が乱入してきた事があった。

その時、アーロンに指名されたカルロスが、一撃で

ドラゴンの首を両断したのだ。


 そしてその勇姿は、肖像画となって王宮や

冒険者ギルドの壁に飾られている。


「ふんだ! バルディなんて、1度憧れの

クソカルロスにボコボコにされればいいのよ!」


「俺はバルディもミュールも災難に()って

欲しくないな。それはそうとバルディ、俺は

今から物理攻撃力と敏捷性を爆発的に上げる

トレーニングをしに行こうと思うのだが、

一緒に来るか? 良かったらミュールも!」


「ほぉ…………俺様にそれを教えちまうのかぁ

…………一瞬で追い抜かれても良いってんなら、

是非(ぜひ)ともご一緒させて頂くぜ!」


 バルディは乗り気になったようだ。


「そう簡単に抜かされっかよ。ミュールは?」


「私は…………」


 一瞬、バルディの方を見てから


「ご一緒させて頂きます。ワイルドコーチ!」


「よし、それじゃあ早速向かおうか。って、コーチ!?」


「あー、コイツ案外立場を(わきま)えて発言出来る奴

なんだよ。俺は敬語苦手だから、お偉いさんとの

会話は丸投げしてたぜ」


「全く…………見た目通りのガサツ男なんだから…………」


「成る程成る程。聞く順番間違えたけど、腹減りは

大丈夫そうか?」


「「問題ねぇ(ないわ)!」」


 と言うわけで、昨日まで野宿していた修行場に

たどり着いた。


「着いたよ!」


「こりゃあ…………」


「いかにもって感じですね~…………」


 殺風景な岩場。正しく修行の山といった場所だ。

俺はここで筋トレやダッシュ、投擲を繰り返しつつ、

アースヒーローズの外道達を観察・妨害していたのだ。

遠視レベル6があってこそ成せる技だ。


「まずはお2人さんの大好きであろう、筋トレから

始めようか!」


「ヒャッホォーー!」


 バルディは喜んだが…………


「りょ、了解ですっ!」


 ミュールは一瞬、()(まど)った。筋トレが嫌いなのか、

はたまたバルディに劣る姿を見せたくないのか。


「まず、筋トレの目的はなんと言っても物理攻撃力の

向上だ。そして、あわよくば怪力スキルの進化を

促したい。バルディは持っているのを知っているが、

ミュールも怪力スキルは持っているのか?」


「持っていますけど…………その、レベル1です」


 少々()ずかしげに答えた。


「あるなら問題ない。初めの内は爆発的に伸びる

から、楽しみにすると良いよ」


「へぇ、それじゃあ早速、方法を教えてくれよ」


「分かった。まず、持ち上げられるかどうかって

感じの岩を用意する」

『ヒュッ!』


「「え!?」」


 2人は、俺が高速移動したことで、消えたと

錯覚(さっかく)して驚いた。


『ドゴゴゴゴゴン!!』


「うおーーーー!?」

「キャーーーー!?」


 更に、大小様々な岩が飛来してきた事に驚いた。


「さっ、この中から先程の基準で選んでくれ!」


 バルディが2t、ミュールが1t程の岩を掴んだ。


「(成る程…………レベリングの基礎力にスキルの

ブーストがかかったら、大体こんな重さになるん

だな)よし、1度俺が手本を見せるから、後で

同様の動きで持ち挙げろ」


 俺は14tは下らない巨岩を抱えた。ミュールの

目玉が飛び出しそうになっていても、今は全身の

筋肉に集中だ。


「これを、出来るだけ短時間で、可能なら頭上まで

持ち上げる!」


「え? そんだけ!?」


 バルディが、今まで習った筋トレと違った事から、

驚きながら聞き返してきた。


「ああっ、それだけさっ、まぁ、見て……」


 答えながら、興奮し(アドレナリンを)ていき(分泌していき)…………


『お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"

お"お"ッッッ!!!!!!!!!!』


 ミュールの両耳を塞がせ、バルディも気圧される

程の雄叫びを上げながら、全速力で巨岩を上へ加速

させ、ギリギリの所で頭上まで持ち上げた。


「ぬ"あ"あ"ッッッ!!」

『ズズゥゥン!!!!』


 そして、意識が飛ぶか飛ばないかの(はざ)()で、

どうにか前方に巨岩を投げ落とした。


「ゼェ…………ゼェ…………ハッ、こんな…………感じだぜ

…………うおお、目が…………回る…………」


 膝を着いて酸欠と筋疲労に苦しむ俺を、駆け出し

戦士の2人は固まりながら見ることしか出来なかった。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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