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デス・スメルにまみれた飛び級昇格

9/10 本日も遅めの投稿となります

 森の入り口から数十m離れた地点、合わせて

120名あまりの人物が、1人の人物に対して

静観を決め込んでいた。そして注目の的となった

1人の人物は、口を開いた。


「はい、これでほぼ全ての岩を除去出来ました。

後は少数の邪魔な岩を除去すれば、クエスト完了

ですね」


 俺、ショウ・ザ・マジック改め、ワイルド・

サモン・フェリンは、この場の誰にも行えない

方法で、フェニックスフォールダムを(はば)んでいた

岩群(がんぐん)の多数を除去した。


「…………ワイルド・サモン・フェリンといったか?」


 1人のスタッフが、緊張した面持ちで声を

かけてきた。


「はい、何でしょう?」


 普段の明るさで、返事を返した。


「貴様、何を考えてこのようなマネをした?」


「そうですね、早めに作業を終わらせて、早く

昇格したかったのが理由ですかね」


 俺が言い終わる頃には、彼の表情は鬼の(ぎょう)(そう)

へと変貌(へんぼう)していた。


「F級風情がふざけた戯言(ざれごと)を抜かすのもいい加減に

しろよ? 貴様の筋書きごとき見抜くことくらい、

我々にとっては朝飯前も良いところだぞ」


「俺の筋書き…………即ち、心を読むときましたか

…………ぜひご拝見させて頂きたいですね」


 …………まぁ、案の定勘違いも良いところといった

内容だった。少し前まで雑魚も良いところだった

俺としては、気持ちも分からなくはないが。


「まず、貴様は数日前の夜に、転送型魔法道具で

倉庫の奥底に眠るダイナマイトを大量に盗み、

そのまま滝の上の岩にセットをした」


「奥底だけ抜き取れば、パッと見手前側から

見たら、在庫は揃って見えるからな」


 2人目のスタッフも援護射撃を開始した。


「そして、移動中に架空の人物を例に挙げ、超速

でのクエスト進行をほのめかす」


 3人目も加わった。


「で、音を発生させる魔法道具で音速で石を

投げたかのように見せかけ、同時にダイナマイトを

遠隔で起動させる魔法道具を発動させた」


 4人目が饒舌に話し込み、


「そーして、ダイナマイトを転送した魔法道具を

魔石ブースト込みで発動させ、落石を何処かに

転送させる。良くもまぁこんなストーリーを

考え付くよなぁ」


 5人目が()(くく)った。


「いや、全くですよ。あなた方5人の発想力に、

俺は脱帽(だつぼう)しちゃいました。ですが、俺がそれを

実行することはありません」


「あ? お前多少頭がキレるからって、調子に

乗るなよ?? 俺達はギルド職員、お前らの

お偉いさんなんだぞ?」


 再び1人目が圧力をかけてきた。


「俺は調子に乗ってなどいませんよ。勿論、

あなた方の述べた筋書き通りに動いても

いません。これが事実です」


 そう言って、召喚の回廊(かいろう)を1つ作った。


「俺の能力は、このような小道具を呼び出す

ものが1つ」


 回廊から現れた石をキャッチしながら、語る。


「そして、落下物等を別の場所へ転送するのが

もう1つ」


 先程の回廊を消し、石を投げ上げてから、

落下予測地点に回廊を出し、石を地球に戻した。


「以上から、俺の知らない場所にある

ダイナマイトを召喚することは、不可能です」


 この世界の住人ほぼ全てが、地球の存在を

知らないことを逆手にとり、転送能力のみ

優れる召喚士アピールを行った。


「フ、だったら、知っていれば良いという

話ではないか」


 2人目が、何故か(あせ)った様子で語り始めた。

この時点で俺には1つの()(ねん)が浮かんでいた。


「お前のその敏捷性なら、こっそりと

ダイナマイトを盗んで配置しに行く等、

容易い事だろう」


「そして上述の行動を取ったぁ!」


 3人目の職員と、4人目の職員がいきり立った。


「では、アリバイを立証…………する前に、石を

音速で投げる振りをした事のアリバイを立証

してくださり、ありがとうございます」


「は? 何をおかしな事を…………あっ!」


 5人目が、先程3人目が語った敏捷性に

より、俺の音速石投げの現実性を支持している

事に気づいた。


「そう、俺には音速の投擲を可能とする

基礎能力があります。個人的には正直、

この時点で俺の正当性を認めて欲しいの

ですが…………」


「あ? 誰がインチキの言うことを信じるか!!」


「あなた方の強情さは、それを許してくれません。

と言うことで」


 俺は上半身の装備を全て外した。


「おお…………」

「魔法職なのにスゴい…………」


 冒険者達からは、俺の職種と肉体のギャップに

対する驚きの声が上がった。


「小細工のしようが無い状況で、音速投擲を

お見せしましょう」


『ゴウッ!!』


 俺は見映えを重視し、始めに隼並みの速度の

ジグザグ移動で周囲に暴風を巻き起こした。


「さっきもだが、全く見えねぇぜ…………」


 バルディが異次元の速度に固まっている。


『パァン! パァン! パァン! パァン! パァン!』


 そして、音速(ソニック)投擲(ストレート)を5連続で放った。

高所低所問わず、崖には5ヶ所の陥没が発生した。


「ま、こんな風に、実際に出来るのですよ」


 俺が証明を終えた頃には、崖の表面が砕けた

音が、5回鳴り響いていた。


「………………」


 いきり立っていたスタッフの大多数は、俺を

恐れて何も言えなくなっていた。


「一瞬で岩を破壊出来るのに、ダイナマイトを

盗んで爆破するなんて、そっちの方がめんどう

くさいでしょう?」


「ああ、あ…………」

「そう…………だよね~~…………デス」


 5人中、2人は納得してくれた。しかし…………


「その靴に魔法のギミックがあるんだ!!」


 残り3人の内の1人が、俺のブーツを指差して

叫んだ。


「…………調べるのは構いませんが」


 半ば強奪されたブーツなのだが、


「この中ni…ギャアアアアアッッ!!」


 訳あって、3日程履きっぱなしなので、


「どうしt…オエゲロゲロゲロリンチョッ、

ゲロォオ!!」


 死ぬ程臭いと思いますよと言おうとしたが、

遅かった。


「ふん! だらしねぇ。この程度鼻を

塞げば…………グググ…………」


 残り1人は学習をし、鼻を摘まんで調査を

開始したのだが、何かこの3人の執念がおかし

すぎる。そしてそれ故、疑念は確信へと変わり

つつある。


「おい! 何でも良いから、さっさと罪を

認めたり白状したりしろよぉ! 手、臭すぎぃ!!」


 ソイツはあろうことか、2個のブーツを

俺に投げ返した上、自分の手の臭いに悶絶(もんぜつ)

し始めた。…………バカだ。


「…………なぁ、あの3人変じゃね?」

「思った。なんつーか、必死すぎるよな」

「石投げて岩壊せる人が、わざわざ高価な

魔法道具を用意しないよね…………」


 冒険者達も、ただただ待ちぼうけを食らい、

ウンザリしている様子だ。完全に3人の

スタッフにヘイトが向いている。


「けどあの召喚士も惜しいよな」

「足臭くなかったら、私チームに誘ったのにww」


 …………これはたまたまなんだよ。アリバイ

証明後に、この3人にはこの件の(つぐな)いを

してもらうぞ…………。


「早く白状しろや!!」


 と、その時だった!


「全員静かにしろ!!」


 試験管を勤めるB級冒険者、クレインの声が

草原中に響き渡った。


「おお、クレインさん! こぉんの不適格者に

ガツンと言ってやって下sa…」

「逆だ」


 有力者を味方に着け、再びいきり立とうと

したのだが、真顔で(さえぎ)られてしまい、(はと)

豆鉄砲を食ったような顔になった。


「ワイルド、拙者を上回るその速度と(じん)(じょう)

ならざる力を根拠に、お前を本任務の特別

功労者として認める。言い争いになる前に

お前が述べたように、後は少数の岩の除去で、

本任務は終了だ!」


「よ、よろしいのですか…………??」


 急展開過ぎて、俺自身が聞き返してしまった。


「当然。強さを求める者として、お前のような

強者を認めないわけにはいかない。明日からは

"D級クエスト"に励んでいくとよい」


「ありがとうございます!」


 こうして俺は、飛び級でD級冒険者になったの

だった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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