縮地と最速のE級昇格
9/9本日は夕方に投稿します。
「スキル : 神風レベル1、加速術レベル8」
『ゴオオオーーーーー!!!』
太陽が照りつけ、小鳥が囀ずる大草原。そこに
突如として暴風が吹き荒れた。風が収まった草原を
見渡すと、薬草のみがキレイに摘み取られていた。
「う~ん、やっぱりちょっと違うんだよなぁ。ま、
ノルマの数は回収できたし、ギルドに戻ろっか」
身長こそ平均的だが、身体を覆う筋肉が良く
発達している男は、再び先程の速度で城下町の
方へと消えていった。
~冒険者ギルド~
「…………10分」
「ん、どうしましたか?」
俺が、どっさり山盛りになった薬草を机に
置いたところ、受付嬢が時間を呟いて固まったので、
聞き返した。
「ワ、ワイルドさん…………この量の薬草を…………
どうやってたったの10分で採取したのですか!!」
今度は軽く怒気も混ざった叫びで詰め寄ってきた。
「走りながら、地面から生えているものを
片っ端から摘まんだだけです。ちゃんと
指定のエリア内だけから採取しましたよ」
「…………そのようですね。はい、報酬金です」
人の家の薬草や、保護区の薬草を取らないように、
ギルドでは薬草に付着した土から、どの土地由来の
土であるかを判明する機械が置かれている。
「何か時間も有り余ってますし、もう1つ依頼を
受けようと思います」
報酬金を受けとりながら、クエスト受注の意思を伝えた。
「…………これがF級最後の依頼ですよ」
「あ、本当だ。何々、F級の皆様全員で力を合わせ、
フェニックスフォールのダムを塞き止めている岩を
除去しましょう…………か」
「F級からは、毎日のように昇格試験を受ける人が
現れるので、こうして共同作業を行わせると、
何かと効率的なのです」
クマ獣人の受付嬢、リズは満面の笑みで、
試験官人件費削減の方策を述べてきた。
「…………まぁ、深くは突っ込みませんが、この
試験は受けますよ。契約書を下さい」
「分かりましたっ! ワイルドさん、今日は
あなたの実力に驚かされっぱなしでしたが、
冒険者は甘くない。油断の無いようにだけは
してくださいね!」
「ええ、昨晩と昼間に油断は厳禁だと肝に
命じましたので、ご安心を!」
言いながら、出された契約書にサインを書いた。
「契約を受け付けました! 3~4日間の任務、
頑張って下さいね!」
「はい! でももしかしたら、明日には顔を
出すかもしれません。その時はヨロシク!」
「???」
最後の言葉は、リズには伝わらなかったようだ。
…………まぁ、F級冒険者が、あんな方法でダムの岩を
除去するなんて、思わないもんね。
~1時間後~
「全員揃ったか?」
白の和服に鉄下駄、女王様似の黒髪を左側で
サイドテールに纏めた女侍が、ギルドスタッフに
声を掛けた。
「はい。総勢108人の受験者は、誰一人
欠員無く揃いました!」
「ご苦労。これより、E級昇格試験を執り行う!」
大声によって、受験者全員の注目が、侍に集まった。
「諸君! 拙者は本試験の教官を務めるB級冒険者
クレインだ。初回の昇格試験といえど、危険行為や
迷惑行為を行う者は、即座に切り捨てる」
最後の一言と同時に放たれた殺気により、
ほぼ全ての受験者が戦慄した。
(…………クレインさんの殺気も中々だけど、
アーロンと比べると、相当可愛く見える。
というか美人さん…………おっとっと)
俺は余計な思考を振り払い、"真面目に
試験に向き合い"始めた。
「だが、働きの良かった者には、報酬に色を
付けてやるぞ。さぁ、着いてこい!」
全員が、クレインの後に続いた。
「オイ、あんた」
「ん?」
声がした方を向くと、190cmはあろうかという、
赤髪オールバックの斧使いが並んで歩いていた。
「あんた、背丈は大したこと無いが、ガタイ以上の
力を持っているだろ」
「まぁ、俺体型の平均的な力よりは強いかな」
「そう謙遜すんなって。まぁ、要は一緒に
貢献しまくって、報酬を大量に貰おうって話さ。
俺はバルディだ」
「そりゃ良いな、俺はワイルドだ。よろしく」
互いに拳を合わせあった。しかし、俺としては、
可能であればそうじゃない方法を行いたい。
「なぁ、バルディ。もしもだけどさ、1人の奴が、
お前ら報酬を半分寄越すなら、俺が岩を全て片付ける
って言ったら、どう答える?」
「あー、任せるかな? さっさとランクアップ
するために、クエストを多く受けてぇし。
お前はどうよ?」
バルディは、隣を歩いていた重歩兵の背中を
いきなり叩いて話を振った。俺はその様子を見て、
前世だったら陽キャの彼と、会話すらしなかった
だろうなぁと思っていた。
「ボクも任せると思うなー。3人はどう?」
彼も組み立てのパーティーメンバー達に話を
振った所、「任せる」という返事が全員から
聞こえてきた。そしてこの問答が受験者全員に
広がったので
「私語は慎め」
クレインから注意が出されたのだった。
こうして俺達は三十数分かけて、フェニックス
フォールダムが遠望できる地点まで歩みを進めた。
「見えるか? 今からお前達は、あそこの滝を阻む
岩々を除去し、開通させるのだ。転落だけには
気を付けてくれ。では行こう」
こうして全員が歩みを再開しようとした時だった。
「お待ちください!」
俺が声を上げた。
「?、まさかとは思うが、今の解説が分からなかったか」
「いえ、理解しました。しかし、俺ならここから
あの岩を全て除去する事が可能です」
全員の声が消え失せた。
「…………何を言い出すかと思えば、下らん妄言で
時間を潰すな」
「いいえ、事実を述べたまでです」
『『『『『ゾクッ!』』』』』
食い下がらない俺に苛立ち、クレインが殺気を
ばら蒔いたので、皆ビビってしまった。
「…………どうやらお前は切り捨てられるべき
不適格者だな。最後のチャンスだ、非を詫びて
減給で済ませるか、わがままをほざいて拙者に
斬られるか」
「わがままをほざいて大金をゲットだぜ!」
敢えてふざけて大口を叩いた。こうなれば、
とことん賭けに出よう。
「ワイルド、超短い付き合いだったぜ」
バルディが俺の最期を悟って、別れの一言を
呟いた。
「そうか、ならば思い知れ」
スキル : 神風レベル1
スキル : 縮地レベル1
(居合い・雷閃!)
クレインが、F級全員が目視不能な速度で
居合い技を繰り出した。
(そう! この動きをやりたかったんだ!)
スキル : 時間感覚加速レベル4
スキル : 神風レベル1
スキル : 加速術レベル8
(クレインさんは、中々の速さだけど
まだまだ脚力が不足しているな)
『ピロリン♪
スキル : 縮地レベル1を獲得しました。
』
「まぁ、落ち着いて見ていてください」
「…………な!!?」
クレインは俺に刀を奪われた事で、心底
驚きを見せた。
「「「………………え?」」」
受験者達に至っては、倒れている筈の俺が
平然と立ち、クレインの刀を持っているという
想定外により、脳機能が停止している。
「さて、まずは召喚によって、岩を破壊するための
武器を持ちます」
刀を地面に刺してから、地球から、一定の硬さを
有する拳大の石を召喚した。
「「「……………………」」」
誰も喋れない。
「そして投げます」
スキル : 時間感覚加速レベル4
スキル : 神風レベル1
スキル : 縮地レベル1
スキル : 剛力レベル6
トップスピードに達したら、全力で地面を踏み抜く。
スキル : 遠視レベル6
スキル : 照準レベル6
スキル : 投擲レベル7
スキル : 加速術レベル8
腕を超加速させて、石を音速で投げる。
"音速投擲"
『パァン!!』
物体が音速を超えたときに発生する音が響く。
素人目には、音と同時に滝の岩々がちょっとだけ
弾け飛び、次の瞬間激流が岩々を押し退ける様子が
映し出された。
「……………………」
クレインは違う意味で開いた口が塞がらなく
なっている。
「そして、落石を全て処理します。多重召喚」
俺は複数個の召喚の回廊を、寸分違わない時間に、
岩の真下に展開し、落石による水棲生物への被害を
食い止めたのだった。
F級冒険者の多数と、少数の有力者に存在を
認知させたワイルド・サモン・フェリン。しかし、
これはあくまで偽名であり、来る時に大々的に
名乗る予定の本名は、
ショウ・ザ・マジック
最後まで読んでくださりありがとうございます。




