3.白い眼の男
夜に入ってから、長い時間が経過していた。王宮内は既に寝静まっており、トオヤミガラスが鳴き始めていた。このカラスは月が頂上を迎えたころに鳴きだす、この国では不吉の象徴とされる生き物である。王宮の庭園に座っているその男は、その鳥と月とを「眺め」ていた。「神。そんなものが存在するならば、この私が引きずり降ろしてお前の罪を全て告白してもらう」スニークと名を負うこの青年は、早くに妻を失くしていた。原因から何まで全て謎に包まれた彼女の死を理解できない彼は、いつからか白魔教に傾倒していった。生者との魔術であると知ったときには妻は既に亡くなっていたが、彼自身が神父となることで教えを広めようとしていた。ついに国王に目をつけられ、白魔法の隠された力を国が隠蔽していたことを知り、それを利用しようと試みたのだ。彼の知っている白魔教についての知識の提供を義務付けられたが、多くを教える気はなかった。いまや、彼自身が力を手にして神に近づいたのである。儀式の際に目にしたあの世界。彼が視界を失くす前に垣間見えたあの世界こそ、スニークの求める世界だと考えていた。「現世に生きる人の為の白魔教。それを導くのが白魔法。その先に開かれているのが、白魔界だ」故に、彼はもっと多くを知る必要があった。自身の一部となったこの白の魔法について、可能性を広げることが、何よりもの優先事項なのだ。加えて、黒魔法との接触についても、彼には関心があった。未知の魔法の力。そこに隠されたこの世界の秘密とは。
というようなことを考えては、庭園内を歩いていた。いずれはこの魔法の全てを理解してやる。そう思い、再び宿舎に戻った。
宿舎の前には、別の男が立っていた。彼も見知っている魔法使いの一人である。
「何をしていた」男は聞いた。
「考え事だ。そう大した用ではない」
スニークはそう返し、扉を開いた。この男に口で応えたところで、聞こえるはずもないのだが。




