27.ヲサイヤ-賊長
シュラッケンは莞爾として笑った。
「私とて、外部とも良好な関係を築いていきたいのだ。考えがある。許多な兵を送ることも考えたが、数が多いだけではそちらでも統制が取りづらいだろう」
それ以外の選択肢が存在するのだろうか。寧ろ、多く兵をよこすことが単純にして唯一の策だと考えていたヨサイヤは訝しんだ。
「代わりに、」長は後ろに控えている3人に前に進むよう手で促した。
「ここにいる3人のうちの一人を派遣いたそう」
「それで十分だと言うのか」ふざけるなといった様子でヲサイヤが食って掛かった。
「ヲサイヤさま。落ち着いて」他の魔法使いがたしなめる。
「はっはっは。そう怒るのも無理はない。だがよく聞け。ここにいるのはどれもこの世界で長を務める逸材だ。片方は私の後釜である副山海賊長。あとの二人は海賊の長と山賊の長だ。一人につき兵1000人分の力があると思え」
「信じていいのか」彼は聞いた。
「もし不安だと言うのなら、ここで力比べでもしてみるか」3人のうちの一人が答えた。
「いや、やめておく。信じてもよいのだな」
「勿論。後に分かることになるだろう」山海賊の長は落ち着き払った様子で座っていた。
「無礼を赦してほしい。こちらとしても大きな力を渡しすぎるわけにはいかない。連れていけるのはこの中の一人だけだ」
「なに」
「こちらとしても最善を尽くしているつもりだ。悪く思わないで欲しい」
「・・・分かった。では、そちらの副なんとやらを貸していただきたい」
「いいだろう。では、今日のところはこれまでだ。・・一晩休んでいくといい。食事も用意してある」
「できることなら今すぐにでもここを発ちたいのだが」
「やめておけ。日が暮れてからのこの地域は危ないぞ。それに、翌朝までにこちらからも旅の足しとなるようなものを用意しておこう」
「そうか。すまない」
その後は盛大に宴が開かれた。食事は山の幸、海の幸を囲んだ豪勢な食事であった。ヲサイヤ、そしてシュラッケンは互いの国の情勢を交換し合った。ガンセンに詳しくこの領邦の情報を与えられなかったヲサイヤには全てが新鮮であった。ここに来て良かったと初めて思えるようなひと時だった。召使たちは今日の出来事を懸命の書き留め、魔法使い達も楽しそうに相手方の賊と会話をしている。賑やかな場において彼の耳は一切の余計な音を掴まないので、シュラッケンとの一対一の対話をしっかり行うことができた。当初の印象よりも幾分和らいだ雰囲気の中、宴は幕を閉じた。
出発は翌朝。9名は荷物をまとめて早々に砦を出た。




