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153話 助言です、助言。西の公爵夫人が悪趣味なだけですよ

「紅蓮将軍! 僕に兄上や姉上が居たとは、本当のことですか!?」


 一人っ子王子様は、今朝一番の感情の取り乱しを見せました。

 春の国の王太子の威厳は、どこにも見当たりません。


「落ち着かれよ。デリケートな話になるが……王妃殿下が、なかなか身ごもれなかったり、懐妊しても、すぐ流れてしまうのは、国際社会では有名なのだ。

王妃殿下が三回続けてお子を流されたときには、国王陛下へ側室を迎える話が持ち上がったはず。

以後、流れるたびに、側室話が出たと記憶している」

「内務大臣、本当なのか!?」

「……まことでございます」


 レオ様は前のめりの姿勢のまま、隣に座る内務大臣を凝視されました。

 神妙な顔付きになった内務大臣は、机にくっつくほど頭を下げながら、短く答えました。


「側室の話は、周辺国家にも伝わっておるよ。

『側室を迎えるつもりなら、我が国の王女を新たな正室にしてはどうか?』と、他国の王家が何度か持ちかけたことも、わしは雪の王族として把握しておる」

「外務大臣!」

「レオナール様。国王陛下のご命令で、すべての縁談話は、お断りしております」


 内務大臣の隣に座っていた外務大臣は、うやうやしく頭を下げました。

 春の国王陛下が、「現在の妻以外は要らない」と宣言した。そう、言外に込めながら。


 さすがに大臣たちは、言葉数が少ないです。

 今のレオ様のお気持ちを思うと、下手に声かけできませんよ。

 言い出しっぺのおじ様へ、責任を丸投げしているのが、分かりました。


「王太子殿下。座られよ。お主が落ち着かねば、続きは話せぬ」


 低いおじ様の声で、レオ様は仏頂面になりました。

 先程の青い顔色から復帰した使用人が、倒れたイスを元に戻してくれたので、座られます。

 震えの止まった侍女たちは、手分けして、お茶をテーブルにつく全員に配っていますね。

 レオ様は黙ってお茶を口にされ、気持ちを落ち着けておられるようでした。


 しばらくして、おじ様はレオ様へ声をかけます。


「そろそろ冷静に話せるな?」


 レオ様は無言で伏せ目がちになり、長く、長く、息を吐きました。

 空っぽになったカップを机におき、おじ様へ虚ろな視線を寄越します。


 現在の王妃様の年齢では、二人目のお子は望めないと言われております。

 もしも、ご懐妊なされば、母子共に天国へ召されると、医者伯爵家当主が忠告していますからね。

 愛妻家の国王陛下が、側室を迎えるはずはなく、レオナール様は、国王夫妻のたった一人の子供として大切に育てられます。


 一人っ子王子様は、心の底から兄弟を切望していました。

 同時に、「血の繋がった兄弟を持つのは、絶対に叶わない夢」と悟っています。

 だから、私の弟妹と兄弟ごっこをされ、我慢しておられるのでしょう。


 そんなレオ様が、生まれるはずだった兄や姉の命が、人の手で奪われたと知ったのです。

 天地がひっくり返るほど、大きな衝撃を受けたはず。虚ろな眼差しも、仕方ありませんね。


「王太子殿下。おそらく、王妃殿下は懐妊するたびに、毒薬を飲まされて、お子を殺されておったはず。

国王の世継ぎは、最優先で必要だから、側室の話がでるのも、自然の理となろう?

それを踏まえて考えれば、春の国内で国王の新たな花嫁になれるのは誰だ?

春の二代前の王妃殿は、北の侯爵。先代王妃殿下は、東の侯爵。現王妃殿下は南の侯爵出身。

順番的に考えれば、次は西地方の公爵よな? だが、公爵家には娘がいない」


 約一時間前に、私が春の国王陛下の前で述べたのと、同じ意見ですね。

 まあ、おじ様が、私の父方のおばあ様と同じような考えをするってことは、国際社会でも、同じように考えられていた証拠になります。


「……父上の側室が、西地方から選ばれると?」

「当時の春の国の状況を、思い返すことだ。

西地方に、平民を祖先に持つ新興貴族が多く誕生したことを考えると……その代表格とされた『西の侯爵家』の名が、真っ先にあがるはず。

わしの親戚になる北地方の貴族も、西地方の新興貴族に配慮すれば、反対はできぬよ。

国民感情を考えると、平民の血筋を持つ貴族が、王族へ嫁ぐのは、国民の夢や希望を膨らませることになり、大歓迎されようからな。心当たりは、あらぬか?」

「……内務大臣」

「レオナール様が生まれる前ですので、わたくしめが、当時の状況を説明します。

西の公爵当主が再婚相手を、西の侯爵家から迎えるとき、西地方は二つに割れました。

王女殿下の降嫁された医者伯爵をはじめとする、世襲貴族は反対。

西の侯爵を旗印に結束した、平民から貴族になったばかりの新興貴族は、大賛成でございました。

国民感情は、王妃殿下と王弟妃殿下よりも若い花嫁に、世継ぎ誕生を期待して、二人の結婚を後押ししたのです」

「……やはり、新興貴族の後押しがあったか」

「はい」


 おじ様、絶対に知ってて聞いています。

 大臣たちも、分かってて、おじ様に答えています。

 すべては、書記官がメモしている、非公式会談に発言記録を残すため。

 春の国の国家転覆と聞けば、王妃様に忠実な南地方の貴族である大臣たちは、絶対におじ様の味方をすると見越してね。


「すでに春の国王陛下、王弟殿下、公爵殿下が正室を迎えていた以上、未婚の貴族の娘が、春の王族に嫁ぐには、側室として嫁入りするしかなかったはずだ。

どの王子にも、世継ぎがいなければ、優先的に国王陛下へ、側室の話が取り沙汰されるよ。

側室が世継ぎを生めば、王妃殿下を排除して、新たな王妃になれるからな」

「……そうですね」

「王太子殿下、しっかりなされよ! お主は、春の国王になるのだろう?

きちんと思考を回せ! 感情にのまれて、現実逃避するでない!」


 わぁ、おじ様の怒鳴り声が響きました! 室内の空気を震わせ、真下にいた私の耳も震わせます。

 くわん、くわんと頭の中で反響して、世界がグルグル回り始めました。


「おじ様、うるさいです! 何を怒鳴られているのですか?」


 思わず、文句を言いましたよ。ぷるぷる顔を動かして、おじ様から逃れようとします。


「うん? アンジェリーナ? おお、すまん、すまん!

つい部下に怒鳴る癖で、腹から声を出してしまったゆえ、耳栓の効果も無かったか」


 豪快に笑いながら、おじ様は私の頭から両手を離してくれました。

 よしよしと、なだめるように、頭を撫でてくれます。

 私にしたら、笑い事じゃありませんって!


「もう! 調子が良いんですから! レオ様と、何の話をしてらしたのですか? 大人の話は終わったのですか?」


 ぐるぐる揺れる世界の中、おじ様に尋ねます。途中から盗み聞きをしていたことを悟られて、怒られたく無いので、適当にね。

 とりあえず、「私の末の妹に、帝王学をきちんと施す希望」と、「春の国のおバカさん王女のおかげで、春の国が滅びかけている」のは、把握しましたけど。


「……昔話をしておった。春の王族たちに、なかなかお子が授からなかった話をな」


 頭を振りながら目を閉じて、めまいがおさまるのを待ちました。

 しばらくの沈黙後、おじ様の声がふってきます。


「……アンジェリーナよ。もしも、西の侯爵家の娘の立場であれば、どのような方法をとって、春の王家へ輿入れする?」

「はい? 輿入れ? なんの仮定ですか?

具体的に絞りこんでくれなければ、考える範囲が広すぎて、答えようがありません。

私が現実主義なのは、ご存知でしょう?」


 不思議そうな表情を作り、真上を見上げました。

 覗きこむおじ様と視線があうと、相手は少し考える顔つきになります。


「……お主は、そういう娘であったな。

現在の春の国王陛下が、王妃殿下と結婚された直後の話と仮定しよう。

恋愛結婚されたばかりで、ラブラブ新婚夫婦の間に割り込み、国王陛下の寵愛を受けるとするなら、どのような方法をとる?

結婚適齢期の娘の意見を聞いてみたいのだ」

「……ハードル高い仮定話ですね。しばらく待ちください」


 おじ様とレオ様の会話を聞いておりましたからね。

 国王夫妻の子供たちが殺されるような話に持っていって欲しいのは、分かっていますよ?


「側室として、国王陛下への輿入れを狙いますね。簡単な結論ですよ♪」


 どうですか? 簡潔明瞭で、分かりやすいでしょう?

 得意満面で観察していると、おじ様の眉にシワがよりました。


「……アンジェリーナよ。一言で済まそうとするのは、お主の悪い癖だ」


 えー! おじ様、理解できないの? 仕方ありませんね。


「まず、世間一般がすぐ考えるような、色目を使って国王陛下に取り入るのは無理!

そして、王妃様が他の男性と恋に落ちていたような醜聞を作るのも、無理!

なにせ、恋愛結婚したい国王陛下の思惑と、由緒正しき血筋の娘を王妃にしたい貴族の思惑が一致した結婚ですので。

この強固な結婚を、正攻法で崩すのは難しいので、王家の隙をつきます」

「……わしが聞きたいのは、そういう発言では無かったのだが……」


 なんで? お望み通り、きちんと説明しましたよ!?

 国王陛下へ色目使うのは、ムリ! 王妃様を悪者にするのも、ムリって!


 あー、もしかして、世代のギャップと言うやつですかね?

 そうですよねー。おじ様と私は、かなりの年齢差がありますもんねー。

 くだけた若者口調の表現では、通じませんか。お母様に説明するように、きちんとした言い方をしましょう。


「よろしいですか、おじ様?

息子であるレオナール様のお話を伺うに、国王陛下は王太子時代に一目惚れした、ご様子。

そして、一目惚れした相手は、南の侯爵家の娘です。この時点で、将来の王妃になるのは、内定したも同然ですね。

南の侯爵家は、春の王位継承権を持ち、六代目国王の善良王や、南の海の国の王家へ花嫁を輩出した、由緒正しき血筋。

そして、王位継承権保持者同士の結婚となれば、濃い春の王家の血筋の子供を望めますからね。将来の国王の政略結婚相手として、申し分ありません。春の貴族たちは、大賛成しましょう。

ゆえに、国王夫妻を別れさせないためにも、恋愛がらみの醜聞は貴族たちがもみ消して、絶対に広がらないと考えられます。

だから、いつまでも正室の座が空かず、側室として輿入れするしか、選択肢が無いのですよ。

ここまで説明すれば、ご理解いただけますよね」

「……アンジェリーナ。お主、いくつになった?」

「おじ様、私は十六ですよ、十六。もう結婚できる年齢です。政略結婚の意味くらい、きちんと理解しておりますって!」

「……そうか、十六か。今どきの十六の娘は、こんな風に考えるものなのか……時代は変わったな」


 あれ? きちんと説明したのに、おじ様の反応が、思ったより薄い……。

 んー、期待に届かなかった?


「……おい、アンジェ。まず、色仕掛けをするとか、考えんのか?」

「レオ様、今の私は、国王陛下が結婚した当時の西の侯爵令嬢の立場と仮定して、発言しています。

自分の顔つきとファッションセンスを正確に把握していれば、絶対に、色仕掛けなんてしませんね」

「……顔つきとファッションセンス? ファムの母上は美人だし、ファッションセンスも良いと思うが……」


 ちらりと書記官を見ながら、言葉を選ぶ王太子。発言が記録されているので、女性をおとしめる言葉は、慎んでいるようです。


「美人? どこが? 素材は素敵なはずなのに、自分の信念を貫きすぎて、化け物化粧と化していますよ?

公爵夫人は、女らしい顔つきの可愛い系や美人系と言うよりは、男性と言っても通る中性的な顔つきです。

ですので、いつもされているような、真っ白に塗りたくり、ピンクの頬紅をきかせ、赤い唇を強調する、『正統派美少女!』の化粧技法は似合わず、絶望的に顔を不細工に見せておりますね」

「……ア、アンジェの目には、そう見えるのか?」

「はい。あのような顔つきでしたら、性別を不明に見せる、エキゾチックな化粧が似合うと思います」

「エキゾチックぅ?」

「はい。本来の地肌を活かして、色合いを数段、南国の色に近づけるのです。

無理して真っ白に塗るから、時折服の隙間から見える、本来の肌と化粧の境が際立ち、厚化粧していると思われるのですよ。

えーと……夫である西の公爵閣下が、奥方の肩へ手を回して、仲良さをアピールしているのを、ご存知ですか?」

「ときどき見かけるな。普通なら、腰に手を回わすと思うんだが」

「あれ、公爵夫人が背中へ汗をかいて、化粧がはげたときに、西の公爵閣下が急いでフォローしてるんですよ。

肩に手を回したときは、公爵閣下は疲れたアピールしまくって、夫人が恥をかく前に、必死で家へ連れて帰ろうとしていますからね」

「お前、よく見てるな!? ……お子様は鋭い観察眼を持つと聞くが、本当だったのか……」

「化粧と地肌の境は、男性の観客がさりげなくチェックしている、ポイントの一つですよ?

歌劇団の女優であれば、誰でも気を付けます。化粧の基本の一つだと、私は習いました。

公爵夫人は、自分の地肌の色を、正確に掴んでおられ無いのでしょうね。侍女たちの助言も聞き入れず、真っ白に塗りたくる日々を重ねているかと。

ゆえに、いつまでたっても絶望的に似合わない、不細工な化け物顔の化粧を、他人に見せ続けると思いますよ」


 レオ様ができないのなら、私が公爵夫人をおとしめてやります。

 きちんと助言めいた発言も混ぜたので、簡単に怪しまれることは無いでしょう。


「……公爵夫人のファッションセンスの方は、どう思ってるんだ?」

「ファッションセンスの無さは、去年の春に、証明されていますよね?

当時の最先端流行であった、パッチワークのワンピースを着た私を『田舎臭いツギハギ衣装を着た、いも娘』と笑い飛ばした実績をお持ちです。

ご自分が誇らしげに行商人たちにお話になっているので、今ごろ大陸中の笑い者になっているのは、避けられるませんね」

「……普段の衣装は、アンジェから見ると、どう見える?」

「いつも、好んでお召しになっている、フリフリ、ヒラヒラの服装……いわゆる、少女ロマンを思わすドレスは、絶望的に似合いません。

あれが許されるのは、ご息女である、ファム嬢の年齢までです!

その上、公爵夫人は、豊満な胸を強調するためか、胸元と背中を大きく開き他人に見せつけると言う、少女ロマンの意義を、根底からひっくり返すデザインを好むので……見た目のインパクトも絶望的に最悪だと思いますね」

「絶望的の連発……素直に発言するお子様は、容赦ないな……」

「絶望的なのは、娘であるファム嬢ですよ。

先ほどの母親が私を笑い者にした件がウワサになっているので、世界各国の王家で、『春の分家王族の女性は、ファッションセンスが絶望的、壊滅的に無い』と思われていそうです。

去年の春の終わりだって、少女ロマンを理解していない母親が、個性的すぎるドレスを作り、娘にもお揃いで着せて、親子二人で並んで立って居たことで、夜会に出席した森の国の外交官たちがドン引きしていました。

挨拶のとき以外、誰もお二人に近寄らなかったでしょう?

ファム嬢の美意識は母親譲りで、魅せる化粧を知らず、ファッションセンスの欠片も無いと思われたから、森の国の外交官は誰も誉めることができず、声をかけられなかったのです。

年頃の娘が、外見の美しさを他国から誉められないのは、化け物の化粧と悪趣味で個性的や衣装をまとう、母親のせいだと思いますね」

「おい。アンジェも、個性的なドレス着てるよな? 人のことを言えるギリか?」

「……この前、レオ様が不思議がっていた、私が開発した膝下にスリットを入れて、動きやすさを追及したドレス。

雪花旅一座のおばあ様に送って感想を聞いた所、舞台衣裳として取り入れられました。

今は東の倭の国で女主人公の新しい衣装として、お披露目されています。

今年の秋ごろに最先端流行として、春に戻ってくると思いますよ」

「お前、最先端ファッションを、東国へ輸出したのか!?」

「はい。レオ様は、私と公爵夫人の話を聞き比べて、どちらのファッションセンスが、絶望的で壊滅的だと思いますか?

誰が比べても、一目瞭然の結果ですよね?」

「うっ……説得力がありすぎる……」


 理論だてて論破したら、レオ様はひきつった王子スマイルを浮かべました。

 ふっ、ふっ、ふっ……お母様の実家、雪花旅一座万歳! 一切の反論を封じる、ファッション業界の神的存在ですからね♪


「えーと、アンジェは、公爵夫人に似合う服装を把握しているのか?」

「中性的な顔つきなので、体格をハッキリ見せる、スッキリした、シンプルな服装がお似合いになられるかと。

あのような、太った体型を想像させる、ボリュームに溢れた衣服など、私ならば絶対に着ません。胸だけでなく、腹部や太ももまで大きいと思われますからね。

体型に自信があるなら、惜しみ無く、全身のラインを見せる衣服を着ますね。

全身ラインを見せたくないなら、ハイウエストでしぼり、裾までストンとおろした縦長のワンピースにします。

胸を強調するだけでなく、腰が高い位置に見え、全身のスタイルも良く見えると、思いますからね」

「……お前、本当にスラスラと知識が出てくるんだな。さすが、最先端ファッションを産み出した、雪花旅一座の孫娘」

「お母様の方が、もっと的確ですよ? 雪花旅一座で生まれ育った、正真正銘の女優なんですから」


 レオ様の後ろで控えている、キラキラした瞳の侍女の方々へ、雪の天使の微笑みを浮かべて、手を振っておきましょうか。

 後で、お母様に助言してもらえるように、きちんとお願いしておくので、安心してくださいね。


「……とりあえず、今までの説明を聞いて、お前が色仕掛けの方針を考えられんのは、理解できた。

ならば、どうやって、父上の側室になるつもりだ?」

「えーと、血筋の正統性を認められた夫婦に、側室を押し付けるは、極めて難しい話ですからね。

ゆえに、西の公爵家を利用します。分家王族が推薦すれば、本家王族とて断れず、側室確定!

簡単で、確実でしょう? ねっ♪」


 仏頂面の親友は、不機嫌な声を投げ返してきましたけど。


「あのなぁ……さっきみたいに、きちんと説明しろ! アンジェの結論は簡潔すぎて、理解に苦しむ!」


 えー! きちんと過程も、説明しましたよ!? 西の公爵を利用して、側室に推薦してもらうって!

 レオ様、物分かりがワルーイ!


「……分家王族の西の公爵家は、西地方の貴族の総元締めなので、下位貴族が見ている手前、高位貴族である西の侯爵家の願いを無下にできません。そこを悪用するのです。

西の公爵家に、行儀見習いにいき、存命中だった奥方に気に入られるようにゴマスリしておきます。

信頼を上げておき、頃合いを見計らって『国内の貴族のバランスを取る』と言う名目で、国王の側室入りできるように紹介してもらうのです。

表面上は、お飾りの側室。実際は、王妃様より先に子供を生んで、国母になる野望を秘めた反逆者としてね」

「なるほどな。母上より先に子供を生めば、その時点で国母決定だ。

春の国は、王子にも、王女にも、王位継承権が認められているから、子供の性別は関係ない。

王子を一番に生まなければ、王妃になれない、東の倭の国よりは、国母になるための条件が低いと言えるぞ」

「けれども、王家乗っ取りを企てる、西の侯爵家の娘ならば、国母になるだけでは満足しないかと。

私がその立場ならば、王妃様を正室の座から引きずり落とす方法を考えます。そして、彼らは実行したことでしょう」

「実行……母上が毒殺されかけたことか……。

母上は懐妊するたびに、毒を飲まされ、子が流れた可能性があると紅蓮将軍が言っていた。

僕を身ごもったときも、何度も生死の境をさ迷ったと、きいているからな。おそらく、事実であろう。

僕が生まれず、母上と亡くなれば、父上は改めて正室を募るしかなったはず」 


 はい、おじ様のお望み「王妃様、毒殺未遂疑惑」に到達です♪

 ここに来るまでに、わざと遠回しして、西の公爵夫人の株も、とことん下げてやりました。

 成果としては、上々かな?


 けれども、私は、それだけでは終わらせません。

 今回、西の侯爵をつぶすと決めているで、徹底的にやってやります。

 おじ様が触れなかった疑惑へ。


「いや、王妃様だけでなく、王弟妃様も、先代公爵夫人も、毒を飲ませられたと思いますよ?

先代公爵夫人の場合は、毒が利きすぎて、暗殺されてしまったんでしょうね」

「……王族の正室たちが、全員、毒薬を飲まされただと?」

「雪の王族の歴史を知っていれば、簡単に考え付きますよ。ねっ、おじ様?」


 同意を求めておじ様を見上げると、苦虫をかみつぶした顔になりました。

 雪の王族として、表舞台に立つおじ様にとって、腹立だしい歴史ですからね。


メモ。ここまてで、約80万文字。

サラッと流すつもりだった、当て馬娘退治編、ガッツリ執筆中……。

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