Bくん再び
藤堂歩くんとのゴルフの打ちっぱなしの約束は、
守ることになった。
その日、なにも予定がなかったし、私は歩くんの車で、一緒に近くのゴルフ練習場についていった。
酔っぱらってない歩くんは、やっぱり格好よかった。
「やり方、教えて?」
初めての私は、歩くんにそう頼んだ。
「あぁ、いいよ」
すると歩くんが、私の後ろに立ち、包み込むように私の持つクラブを持つ。
(教えてって言ったのは私だけど…こうなると分かってたら言わなかったのにっ)
心臓が急に暴れだして、顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「こんな感じ。―――悠莉ちゃん聞いてた?」
「あ、うん。聞いてた聞いてた」
同じことを二回繰り返すなんて、動揺丸出しで恥ずかしかった。
ゴルフの練習場から帰るとき、歩くんが、
「お腹空かない?」
と言った。
「空いたねー。私の家近いから良かったら夕御飯食べていかない?」
「お、悠莉ちゃん一人暮らしなんだ?」
「うん。実家は近いんだけど、一人暮らししてみたくて」
「じゃあ、お邪魔しようかな」
歩くんが来ることになって、二人で近所のスーパーで野菜を買って、手料理を作ることになった。
(なんか、こういうの…ーーステキ…ーーー)
好きな人とスーパーで買い出し、なんか甘くて幸せな気持ちになる。
クイズ番組を見ながら料理を食べ終わると、すっかり夜になっていた。
「あぁ、もうこんな時間か…」
名残惜しそうに、歩くんが時計を見た。
「じゃあ俺帰るね、ごちそうさま」
部屋に二人きりなのに、酔っぱらっていない歩くんはやっぱり私に指一本触れなかった。
そんな素っ気なさが、私の心に灯をともす。
「あ、そうだ、」
帰り際、歩くんが振り返って言う。
「悠莉ちゃん、今度合コンしたいって言ってたよね?」
(…――――言ったっけ?)
「どんな男がタイプなの?俺極力努力するからさ」
「…―――髪は黒くて、背は私より高め、目は一重で、タバコ吸わない人」
私が思い付く限りに条件を挙げる。
「それ、俺じゃん…」
歩くんがそう言って笑った。
彼は冗談のつもりだったのかもしれない。だけど私は…ーーー。
(気付かなかった…ーーー)
初めてそこで、歩くんのことが本当に好きだと気づいたんだ。




