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プロローグ:やり直しの終わりに選んだもの


 最初は、ただの事故だった。


 トラックに轢かれて死んで、気がついたら別の世界にいた。

 よくある話だと、その時は思った。


 ――二回目までは。


 二回目の死で、違和感に気づいた。


 また同じ“感覚”で目が覚めたのだ。

 場所も違う、体も違う、それでもはっきり分かる。


 これは“続き”だと。


 そして三回目で、確信した。


 自分は――


 死ぬたびに、別の世界へ転生している。


 理由は分からない。


 誰かに与えられた力なのか、ただの現象なのか。


 ただ一つだけ分かったことがある。


 やり直せる。


 最初は、救いだった。


 一回目でできなかったことを、次でやればいい。

 失敗しても、また次がある。


 三回目では、力を求めた。


 強くなれば、何も失わずに済むと思ったからだ。


 結果は――最悪だった。


 五回目では、守ることに徹した。


 それでも、足りなかった。


 守れなかった。


 そして――七回目。


 そこで、初めて“気づいた”。


 自分の選択が、妙に“都合よく”配置されていることに。


 出会うはずの人物。

 起きるはずの事件。

 絶妙なタイミングで訪れる分岐。


 まるで――


 誰かが見て、調整しているみたいに。


 試した。


 あえて選ばない。

 流れを外す。

 何もしない。


 すると――


 “別の形で”、同じ結末に収束した。


 ぞっとした。


 これはやり直しじゃない。


 “試されている”のかもしれない。


 その仮説に辿り着いた時には、もう遅かった。


 世界は崩壊を始めていた。

 七回目は、そこで終わった。


 八回目。

 意識はあったが、確証は持てなかった。


 ただ、どこかで“見られている”感覚だけが残っていた。


 九回目で、結論に至る。


 自分が動くほど、状況は悪くなる。


 選択は誘導される。

 行動は収束する。

 抗っても、別の形で同じ結末に辿り着く。


 なら、どうすればいいか。


 答えは、簡単だった。


 最初から何もしなければいい。


 観測されているのなら、

 動かなければ、歪まない。


 十回目。


 目を覚ました世界は、これまでで一番“整っていた”。


 争いは少なく、理不尽もほとんどない。

 人々は穏やかで、空気はやさしい。

実に平和な世界


 ああ、と思った。


 ここなら――


 “何も起こさなくて済む”。


 だったら俺は、


 何も背負わずに生きる。


 そう決めた。


 生きるための仕事が必要だった。


 戦いは論外。

 誰かの運命に関わるのも避けたい。


 だから選んだ。


 パン屋を。


 パンは、世界を変えない。


 誰かを救いすぎることも、壊すこともない。


 ただ焼いて、食べられて、消える。


 それくらいが、ちょうどいい。


 そうして俺は

 誰の運命にも深く関わらず

 ただ日々を消費するための場所として、


 小さなパン屋を始めた。

 これでいい。


 これ以上は望まない。


 ――そう思っていた。

 この世界が、

 これまで自分が繰り返してきた“やり直し”の、

 歪みの集まりでできているとも知らずに。


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