第六十四話
※
シャハトホルムの村は、白く凍りつくかのようだった。
建物には氷の薄膜が張り、雪は道を覆い隠す。補強された建物は古代の石碑のようにたたずむ。
「ドルニテ様、アルゼリテ様……」
ドアは凍りついていた、強引に開けて入ってみたが、誰もいない。中は冷え切っているというより、人の熱が絶えて何日経っているのか。
ふと、脂の匂いを感じる。最初は違和感とともに来た。何年も嗅いでいない匂いだったからだ。
まばらな建物を左右に見て、村の奥へ。
果たしてドルニテはそこにいた。大ぶりなマントで体を包み、村の広場に。
目の前では炭火が。細かく砕かれた木炭が敷き詰められ。その上で牛の肋肉が焼かれている。風は強くはなく、黒煙は散り散りに、脂が燃える白煙が真っすぐに昇る。
「この牛には触れるべきじゃなかったんだ」
ドルニテは火の前に座り、濡れた皮の手袋で炭を動かす。シャルロットに向けた言葉なのか、それとも独り言なのか判然としない。
「せっかく掘り出したけど、思っていたほど嬉しいと思えない、心が浮き立たない。こんなはずじゃなかったのに」
「ドルニテ様、この牛は晴れの日に供するものでしたね……何か、喜ばしいことが?」
「何もないよ。何日もかけて氷を掘って、牛を吊り上げるのは大変だった。特定の日に間に合わせるなんて無理なんだ」
ドルニテは擦り切れた手袋を強引にむしり取る。指先にあまり力が入ってないと見えた。シャルロットは己の背中から懐炉を抜き出す。
「ドルニテ様、もう長いこと外におられますね? 足の指が凍傷にかからぬように、これを」
「ああ……ありがとう。でも大丈夫なんだよ」
ドルニテは靴を脱ぎ、厚い布地の靴下をばりばりと剥がすように脱ぐ。足の指はわずかに震えているが、それは寒さによる震えとは違って見えた。指の中を何かが動くような皮膚の隆起。皮膚は血色というより土の色。茶の混ざった色が意識される。
「どうも全身……動きが鈍いんだが、腐り落ちたりはしない……変な感じだ。冷たさは分かるんだが痛みを伴わない。あるいは痛さが苦しみじゃない。何と言うんだろうな、わからない」
「ザレの作用でしょうか」
「それなら素晴らしいんだが、俺の理解では説明しきれない」
シャルロットは肉を見つめる。脂が焼けた炭に落ちる音。炭のはぜる音。肉から染み出して沸騰する水分。それを見ても、思いのほか心がざわめかない。それは妙だと感じる。自分はもっと食べ物に歓心を持つ人間だったはず。
「アルゼリテにはもう命がないような気がする」
石を落とすように言う。
「この牛を焼いたとしても、アルゼリテの心を呼び戻すことができると思えない。アルゼリテは人形のようだ。俺の言葉が届いていない」
「この村の冬守りに……何が起きたのでございますか?」
「分からない……俺は本当にこの牛を求めていたのか。ザレがあればそれでいいんじゃないのか。そんなことばかり考える。いや、ザレ以外のことが遠くなっていく。俺たちはシャハトホルムの村人じゃなくて、村になったような……変なことを言ってるな、すまない」
ドルニテのこわばったマントが円錐形に広がっている。その姿は幾何学的な、抽象的な人間になったかのようだ。
「遠くなるんだ。必要なくなっていく。食べ物も、水も、日の光も建物も、衣服も熱も、排泄も、言葉までも」
「ドルニテさま……」
「わからない。俺はたぶんアルゼリテに近づいてる。だけど俺はアルゼリテほどなりきれない。時間がかかる。俺はなぜ牛を焼こうと思ったんだろう。いつかどこかで決めたことに引きずられている。いや違う。俺は本来これを求めていたんだ。求める心がどこかに行ってしまった。どこへ……」
「……」
「シャルロットさん。アルゼリテはザレ場にいる。俺の代わりに、アルゼリテから言葉を受けとってくれ」
「言葉、でございますか」
「俺じゃだめなんだ。俺はアルゼリテのようにはこれに染まれない。これを言い表す言葉がない。俺の中からどんどん言葉が抜け落ちて、何もかもどうでもよくなってくる。俺は」
「俺は、脂と血を供える」
ドルニテの手が肉をまさぐる。白い脂肪、骨の表面からこそぎ取る血のかけら。混ざり合えば赤が強くなる。ドルニテはそれを褐色の革手袋で握り、ぎゅうと拳を閉じる。
「俺はもうアルゼリテに何もしてやれない。ただ血と脂を供える。それでこの村は終わりになるんだ。だがアルゼリテは、あと一つか二つは言葉を残せるかも知れない。それを受け止めるのは俺じゃダメなんだ。雪惑いさん、あんたが聞いてくれ。あいつは鼻がよかった。ものの味もよく分かった。俺よりもずっと鋭敏な感覚を持ってた。だからきっと、これを言い表す言葉がある。雪惑いは、そのような言葉を、物語を集めるんだろう?」
「分かりました、ドルニテさま」
ドルニテは、自分が思っているほどは大きく動いていなかった。ほとんど首を巡らせることなく、声を高ぶらせることも無い。人間が氷像に近づくような恐ろしさが。
「必ず、アルゼリテ様から言葉を」
ザレ場に向かう。
アルゼリテの姿を見て、彼女だと分かったのはずいぶん近づいてのことだった。それが人間だという確信が持てなかった。描かれたもの、彫られたもののように思われた。
断層にザレの層が露出している。アルゼリテはそれに背中をつけて座り、やはりこわばったマントを円錐型に広げている。
「アルゼリテ様、雪惑いシャルロットです。私を覚えておられますか」
「ええ」
声が返る。自分の声が崖に反射したのかと思った。声から個人の特質、個性というものが失せている。
「アルゼリテ様、ドルニテ様が心配しておられます。あなたが、どうなってしまうのかと」
「不安なことではないの。ドルニテも、ちゃんとわかっている」
アルゼリテは目を開かず、口もほとんど動かすことはない。わずかに露出した断層の周囲は圧倒的なまでの白。物寂しい舞台劇のように、二人の会話が行われる。
「アルゼリテ様、ザレとは何なのですか? 私は山の奥深くでザレの生まれる場所を見ました。そこは不可思議な熱源があり、ザレの元となる苔類が繁茂していた。それが長い時間をかけて這いずるように動き、シャハトホルムに至る、そこまでは分かります」
「ええ、そうね。断層の中を流れる水によって、ザレは命を繋いでいる。ザレはほんのわずかだけど、動いている、成長している、命の火を持っているの」
「ですが、シャハトホルムにあるザレはただの食料とは思えない。あなたの不可思議な変化は何なのですか。ドルニテ様も、以前のような情熱を失いかけている」
「それは、なにも不思議なことじゃないの」
おだやかに、あるいは冷ややかに、言葉が返る。
「ザレはね、とても高い場所の視座なの」
「……視座、とは」
「ザレとは栄え。とても小さな生き物の集まり、そこには個があり家族があり、集団があり社会があり、都市があり国があった。悠久に栄えている世界。私たちはそれを食らう。食べて小さいものたちの栄えを見下ろすの。この一握の中にある、無限の宴が私の中に入ってくるの」
「それは……それは錯覚です。ザレは藻類、珪藻土の一種に過ぎません。腐敗の菌に侵されていないというだけの藻の集まりです」
「かつてはそうだった。ザレは不完全だった。ただの藻であり味気ないもの。毒が潜むものだった。今は違うの」
マントの中で、アルゼリテが両手を組むような気配がある。実際にはそのような動作を示す要素は何もない。錯覚であるとシャルロットにも認識できる。祈りの所作が、アルゼリテの精神の中だけで完結している。
「私の中でザレが栄えて、私は大地になるの。何も求めず、何も奪われない。分かるの。すべてを手に入れるということは、何一つ求めないということ。ザレはすべてを与えてくれるし、すべてを奪ってくれる。それは等価なこと」
「……私にも、わずかにそれが訪れました。私は雪惑いとしては俗物的だったはずなのに、肉を求めなかった。五感の求めが遠ざかっていたのですね」
日記が。
背中の日記が、いましめから抜けようとしている。シャルロットは背中に手を回して抜き放つ。
「刻みましょう。これもまた一つの魔法。ザレとは高貴なる栄え。与えてなお奪うものであると」
言葉が途絶える。特殊な速記文字が刻まれる音が。アルゼリテの息の音は、最初から聞こえていない。
生命の気配が抜けていく。それは意思の気配とでも言うべきものか。ヒトをヒトたらしめる振る舞い、その根源にあるものが、抜けていく。
生命の極限。
種が芽吹くような、ともしびが消えるような一瞬。凄絶なる明暗がそこにある。アルゼリテの目は閉じられたまま、ただ静かに終焉を、あるいは完成を迎える。
「ああ」
シャルロットは、泣いていると感じる。
声は出ない、指の震えもない。ただひと言だけ声が漏れる。万感の声が。心の中では泉のような涙が――。
※
シャルロットは、ドルニテのところへは戻らなかった。アルゼリテのいたザレ場を遠く見て、今は雪の積もる小高い丘へ。
立ち枯れの木。遠くかすむ山。冬枯れの景色に抱かれて、シャハトホルムはそこにある。
雪惑いはしばらく眺めている。立ち去り難い時間。しかしいつか、その場を離れるという確信とともに。
「……!」
その目が、ふいに緊張を帯びる。うずくまっていた彼女は、立ち上がって周囲を見る。
そこに、影が。
巨大で圧倒的な影。雲の立ち上る如く現れる。黒衣の人物。
「商人さま」
「雪惑いどの、ザレの終焉を見極めていただけましたか。さぞや素晴らしい閉幕であったことでしょう。永遠が一瞬と等しく、無限が刹那に重なるような眺めであったことでしょう」
商人の言葉には喜悦がにじむ。歌うように伸びやかに、予言のように無造作に奏でられる。
「商人さま、ザレとは何だったのですか。あれは商人さまが作り上げたのですか」
「ザレとは失敗作だったのですよ」
馬上の貴人は、宵闇の商人はそのように言う。粋人めいた山高帽と夜会服。たっぷりとした襞襟。このような文明の果ての果て、シャハトホルムの村にはよほど似つかわしくない姿。だが有無を言わせぬ姿でもある。世界の法則のほうが、その人物に従うかのような。
「ある種の珪藻を繁殖させ、浄化の光を浴びせて滅菌処理するのです。こうして生まれた土は冬の時代において腐ることがなくなる。しかし、この浄化の光は人間もまた清めてしまう」
「人間も……」
「ええ、浄化の光を浴びたザレは、それ自体も浄化の力を宿すのです。生命を死に至らしめる光、目には見えない光を放射し、体細胞を癌化させてしまう。それもまた、命と病の天秤という命題ではありますが」
「商人さまが、そのような不完全なものを扱うことがあるのですか?」
「無論です。むしろ私ほど不完全に親しむものがありましょうか。不完全もまた愛しむべきものですよ。この世が完全ならざるからこそ、神秘を求める旅人にも意味がある」
馬は微動だにしない。呼吸をしているのかどうかも分からない。ただ黒硝子のような目が、シャルロットに向けられていると感じる。
「ザレが完全になるとすれば、超常の力しかなかったのです。いつか、輝きの剣がその毒性だけを絶ってくれることを願っておりました」
「……越冬官様が」
では、商人は越冬官を利用したのだろうか。
商人は不完全に親しむとは言うが、それは自分自身に向けられる言葉という気がしない。失敗作と分かっていたなら、意味もなく放置するはずがない。
「……ザレが本来持っていた毒性を、輝きの剣が斬った。そして何が起こったのですか? 私には、シャハトホルムの冬守りたちはやはり滅びの道をたどったように見えます」
「滅びの形とは様々です。老い、腐敗、痛み、あるいは孤独、迷い、怒り、それらもまた滅びの周りに浮かぶ不知火。輝きの剣はそんな形のないものすら斬る。しかし、しかしです。輝きの剣ですら斬ることのできない事象があるのですよ」
言葉が浮かぶ。
だがそれは一抱えもある鉄球のようだった。あまりに恐ろしく大きな言葉。それを雪惑いの口から言うことがはばかられる。何よりも、目の前の商人がそれを口にのぼらせたいのだと分かった。大きな鉄球を吐き出して、地にある虫のような人間たちを蹂躙したいのだと。
「それは、虚無というもの」
「虚無……」
商人は、その目にいっそう凄絶な、あるいは妖艶な光を宿す。語る言葉は短いけれど、濃密な詩吟に浴すような重々しい言葉。
「動かずとも、働かずとも生きていけるなら、ただザレを食べる以外に何も必要ないなら、人はどうなってしまうのか。それはきっと、虚無になるのでしょう」
「……」
「何も必要ない、何も求めない、何ひとつ成すこともない。それゆえに生と死の境が無くなる。静と動、暗と明が曖昧になる。そのような滅びが虚無なのです。いかに輝きの剣といえど、何もない、という事象を斬ることはできない。有為でした。それだけがただ一つ有為なること」
雪惑いははっとなる。ではまさか、このシャハトホルムに起きたことは、おそらくは数十年に渡るザレの実験とは、その一点に集約されるのでは。
すなわち、輝きの剣という魔法の限界を知るための――。
シャルロットはぎゅっと唇をかみしめる。そのような様子もまた商人の興を買うようだった。柔和な、慇懃な言葉が落ちてくる。
「面はゆい実験でした。ええ、とても貴重なことでした」
「二人は、シャハトホルムの冬守りはどうなるのでしょうか」
「どうともなりませんよ」
そこで初めて、商人の馬がぶるると鳴く。足を一度、二度、踏み鳴らす。つまらないことを聞くなと言ってるように感じた。
「どこへも行かず、何者にもならず、ただ寿命が来るまでそのままでしょう。しかし冬守りの大半はそのような人々なのです。建物を保全する? 魔法の本を守る? 何と細い光明でしょうか。100年かけて、数世代をかけてそれをやり遂げるなど、まるで絵空事のようです。冬守りの生き様が実在性を帯びるごとに、それは神秘から遠ざかっていくのですよ。おお、なんという皮肉なことでしょう。誰かが冬守りたちの生活を助けようとすれば、彼らを現実という、果てもない冬の世界に繋ぎとめる役にしか立たないのですから」
ほう、と、商人は吐息を吐く。きっと吐いたのだろう。彼の息は白くならない。
「ニール様は」
言葉が。小石のように宙を舞う。
シャルロットの発した言葉。それは何かに触れて地に落ちたように思われる。商人の周囲に暗幕のようなものがあり、ニールという言葉は容易に触れさせない、そんな気がする。
シャルロットは喉が詰まるような気がした。いま、商人はわずかに反応を示した。ニールという言葉に意識を引き付けられた。越冬官とは物語の中の存在。ニールという固有名を語ることは不興であると、商人の無意識的な反応がそう告げている。
「ニール様は、なぜここに戻らなかったのでしょうか。シャハトホルムの村に」
「戻る理由などありますか? 滅びの運命などとうに知れています」
シャルロットは、自分の腕で自分の首を絞める感覚に襲われる。商人に対して能動的に言葉を発するだけで全身の筋肉がこわばり、骨がきしむ。嵐に語りかける蝋燭のようだ。
「私、は、このあたりの山々を1年かけて歩き回りました。いくつかの滅びた村を通りましたが、どこにもニール様の痕跡は無かった。足跡の薄い方ではありますが、訪れていれば雪惑いが見逃すはずはありません」
「戻らなかった、それだけの事でしょう」
それは、怒りとか不機嫌と言うにはあまりにも薄い感情。洋杯を見て、形があまり気に入らないという程度の淡さ。だがそれだけでもシャルロットの血が冷える思いがする。
「ニール様は」
「先へ進んだ、としたら?」
商人は。言葉に沈黙をもって返す。どのような言葉にも、たちどころに返答を編み上げるこの人物が。
およそ一秒ほども沈黙があっただろうか。商人はゆるゆると言葉を返す。
「この先には何もありません。雪は深く、氷は溶けることがない。レウザミオ高山帯と言われる極地です。黒槍樹は存在しない。長き冬において人間が命を繋げるものは何もありません」
商人は視線を伸ばす。黒い帽子の下にのぞくのは青い瞳。おそろしく切れ長で人間味の薄い、それでいて宝剣のような美しさを備える瞳。
「なぜ、黒槍樹が無いと分かるのですか」
「逆ですよ。私は黒槍樹を頼りに各地を渡っているのです」
一本の指を立てる。青白く長い指。そこには黒曜石のような艶のある指輪が。
「この世界の魔法を嗅ぎ取っているのです。黒槍樹を、魔法の本を、そしてこのシャハトホルムならばザレが生まれる場所の熱源を」
「……もし、この土地のはるか先に、頼るものの何もない虚無の土地があるとして」
ニールはそこへ向かったのか。どのぐらい前のことなのか。どれほど時間をかけた旅なのか分からない。
何を感じたのか。何があると感じたのか。
「その土地にも、人が住むとしたら」
商人は、答えない。
夜のごとき気配の重さ。積もった雪のきしみすら聞こえるほどの静寂。
「ありえない」
それだけを言う。シャルロットは目を見開く。この商人が、感情らしきものを見せることがあるとは。
「誰もいるはずがない。すでに長き冬が始まってから50年以上、どうやって命を継いでいるというのか」
「私は行きます」
雪惑いは一歩、踏み出す。背中に負った日記の重み。懐炉の熱はいつもより頼りなく思えた。この熱はあと何日持つだろうか。食料は。日記を書くためのインクは。それを確認することももどかしい。
「ニール様がいる。虚無のさらに虚無。厳寒にして絶無なる土地に、冬守りがいる」
「いるはずがない……」
「行ってみなければわかりません。それに何もかも、あなた様の予想通りとは行かない。だからあなたは世界を愉しむのでしょう? ニール様は、いいえ、冬守りたちは、時としてあなたの予想を超える。こうと予感されたことがそうならない。だからあなたは、かろうじて全能の領域に至っていない」
黒衣の商人は、不気味で大きな巨馬は動くことがない。この先に誰もいるはずがないと確信するのか、あるいは思い込もうとしているのか。
シャルロットが歩を進める。雪は深く、これからさらに深くなると思われた。
「雪惑い!」
その声は、しかしシャルロットの背筋を震わせはしない。商人の声ではないと分かった。
「雪惑いさん! どこなんだ! アルゼリテが、アルゼリテが目を覚ましたんだ! 肉を食べた!」
振り返るが姿は見えない、その声は雪煙の向こうにある。幻覚かもしれなかった。
そして商人も姿を消している。彼はどこから来てどこへ行くのか。彼は何者なのか。雪惑いたちですらほとんど知らない。
それでもいい。と思う。
何ひとつ定かではない時代。神話と童話がないまぜになるような時代に、それでも人は生きている。冬守りたちだけが、確かに実在するもの。冬守りなくしては世に物語も生まれない。
シャルロットは、自分が笑っていることに気づいて。
そのことになお笑う。足取りは重く、そして軽い。




