40.物にだって寿命はあります
私とレイは皇城で借りている一室に戻った。
「ねえ、あげたってことはレイ作ったの?」
「魔道具のことか。そうだな。初代国王と共に作った」
「……それで、直せそうなの?」
私は後ろに立っていたレイに向き直り、聞いた。
すると私が予想していなかった答えが返ってきた。
「直せる。けれど直してもあれは使いものにはならないんだ」
「どういうこと?」
「簡単に言うと寿命だな。物にも寿命があり、それは魔道具も例外ではない。永遠に続くわけじゃないんだ。あの魔道具は昔からあるもので、そろそろ限界だった。盗まれて壊されなかったとしても、どの道今の状況にはなっていたということだ」
「…………」
じゃあ今まで魔道具を盗んだ皇帝の証拠とか、色々した意味なかったんじゃない?
……うん、やめよう。それを考えたらダメな気がする。
今はとにかく魔道具のことを考えよう。
もし魔道具を作ったのがレイなら──────
「レイ。あの魔道具を直さなかったら、帝国はこのままってことだよね」
「あぁ」
「……新しく作ることってできたりする?」
「作るって魔道具をか? ティナだったらできなくはないが、普通の魔道具を作るのとはわけが違うぞ」
「それでもやりたい」
「わかった。それならば手伝おう」
直しても意味がないのならば、新しく作ればいい。
初めて作る魔道具が難しいのは少し気が引けるが、レイと一緒ならば大丈夫な気がする。
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「ということなので、しばらくお部屋を借りることになります」
「それは構わないがレイ殿は精霊王だったのか」
「あれ、言ってませんでしたっけ。まあそういうことですね」
「そうか。……魔道具ももう限界だったのだな。ではあの兵士の処分も考え直さなければならない」
ルカ皇子に魔道具がすでに限界だったこと、そして新しく作るということを伝えた。
話の流れでレイが精霊王だってこともバレてしまったけど……まあ、マルクス王国の貴族はほとんど知っているし大丈夫だろう。それに隠してたわけじゃないし。
ルカ皇子は皇帝不在のため、宰相らと協力をして仕事を回しているらしい。その仕事のしすぎなのか、顔色が悪く見える。
無理をするなと言いたいところだが、今の状況を考えるとどうしても無理をしてしまうのだろう。
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「失礼します、ルカ皇子。連れてまいりました」
「入れ」
入ってきたのは二人の兵士だった。
一人は思い詰めている様子で名は確かフリッツ、もう一人はその兵士を連れてきた者だ。
フリッツの様子を見ると、不注意で魔道具を落としてしまったことに罪悪感などを募らせているのだろう。
俺が彼をここに呼んだのはあの場での処遇を言い渡すためだ。
「ここに呼んだ理由については分かっているな?」
「……はい」
「お前の処遇を決める前に話さなければならないことがある」
俺はティナさんに聞いたことをありのまま話した。
それを聞いた彼は驚いたり、言いたいこともあっただろうが、俺が話し終わるまで黙っていた。
「だから処刑はされない。宰相とも話したのだが、処罰は君の仕事への取り組んできた姿勢で決めるということになったわけだ。それでフリッツは普段どうなんだ?」
「フリッツは日頃から真面目に取り組んでおり、他の兵士からも信頼されております!」
俺はフリッツをここまで連れてきた同僚の兵士に聞いた。
兵士は聞かれたときに緊張したように答えてたが、嘘は感じなかった。
皇子として生きてきて、人が嘘をついているかついていないのかは一応判断できるつもりだ。
「そうか。では、処罰を言い渡す。今日は引き続き皇城での警備、明日からは街の警備に当たることを命じる」
「はいっ!」




