39.皇帝
「あったのか!?」
「ありました。ある本を抜くと本棚が動き、隠し部屋へと続くようになっていました」
「そうか……」
ルカ皇子は一瞬悲しそうな瞳をしていた。
やはり辛いのだろう。
魔道具を盗んだ人物というのはこの国の皇帝、つまりはルカ皇子にとって父にあたるのだから。
けれど民のことを考えると皇子としての選択は決まっている。
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玉座の間には私とレイ、それからルカ皇子と数人の兵士がおり、エミリーとリル達には別室で待機してもらっている。
私はこれから起こることの予想はついていた。
「これは一体何のつもりだ!」
そう叫んだ人物は皇帝だった。
彼の手首には手錠がされ、兵士に連れられて登場した。
おそらくは抵抗されないためだろう。
「父上……いえ陛下。この国は変わってしまった。それはなぜだか分かりますか」
「それは魔道具が盗まれたからだろう。そんなこと、この城にいるものならば知っている」
「そうですね……ではなぜその盗まれたものが陛下の部屋から出てきたんでしょうか」
「なっ! なぜお前がそれを!」
皇帝は今まで澄ました顔をしていたが、ルカ皇子が持っている魔道具を目にすると一瞬で顔色が青を通り越して真っ青になっていた。
魔道具はルカ皇子に頼まれて、転移で隠し部屋から取ってきたのだ。
「それを渡せ!」
そう言いながら両脇にいた兵士を振り払い、ルカ皇子の持っている魔道具を奪いにかかった。
咄嗟のことで対応できなかったのか、魔道具は皇帝の手に渡ってしまった。
彼は魔道具を握り締めて玉座の間から逃げようと扉の方へと走り出したが、そうはさせまいと私が風魔法で行く手を阻む。
その隙に兵士たちは皇帝を拘束しにかかる。
逃げる場所を失った彼は床に膝を付け、諦めたように見えたが、魔道具だけは手から離さなかった。
兵士たちはどうにか魔道具を手から離させようとし、数人がかりでようやく取り返すことができた。
が、事はそう簡単には進まなかった。
魔道具を持っていた兵士が手を滑らせて落としてしまった。
その拍子に、お皿を落とした時に聞こえる音を立てて割れ、玉座の間にいた人たち全員が凍り付いてしまった。
やっとの思いで取り戻せた魔道具が、うっかり手を滑らせて使い物にならなくなったのだから。
「す……すみませんでした!」
「………とにかく皇帝を牢に入れろ! 魔道具のことは少し考えさせてくれ」
ルカ皇子はいつもと変わらぬ表情で皇帝を牢に入れることを命じた。
こういうところで動揺したところを見せないのは、さすがね。
玉座の間から私たち三人以外の人がいなくなると、ルカ皇子はため息をしながら言った。
「どうすればいいんだ………」
「ルカ皇子、魔道具は誰から頂いたのかもう一度聞きしても?」
それが何だとでもいうような表情を浮かべ、答える。
けれど私は名前を聞いたとき、もしかしたらと思った。
「魔道具の件は任せていただけますか」




