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30.絶対に許さないわ




 あの襲撃(と言っていいのかわからないが)から数日が経った。



 あれから相手側の動きがない。

 こちらのことを様子見でもしているのだろうと思う。

 


 今回の件もあり、もしもの時のためにミア様には魔道具を渡しておいた。

 ネックレスの形をしているのだが、持ち主に危険が迫れば私が持っている対の魔道具(ネックレス)が光って教えてくれる。

 それに気づいた私は転移でミア様の元へ駆けつけるのだ。

 







 廊下の向こう側からはヘレン様たちが歩いてきた。

 彼女は私が見ていたことに気づいたのか、軽く微笑んだ。

 



 「他の人は巻き込まないで下さい。もしそのようなことがあれば覚悟なさい。あと、きちんと現実を見てくださいね」



 私はすれ違う時に彼女にしか聞こえない声で忠告した。

 それを聞き、ヘレン様は一瞬だけ口元を引きつらせていたが、何事もなかったように微笑む。





 「忠告か?」


 「えぇ、仏の顔も三度までよ。まあ、実際は三度以上になってしまっているけれど、それは私にだけ被害が出ていたからいいのよ。けれど他の人たちを巻き込んだら絶対に許さないわ」


 「本当はティナに被害が出ているのも許せないがな」


 「その気持ちは嬉しいけど、()()我慢してくれるかしら?」


 「ティナが言うなら()()まだ我慢する」


 「ふふ、ありがとう」




 レイがそう思ってくれるのは嬉しい。

 でもそのせいでレイの正体がばれてレイとの楽しい学園生活が過ごせなくなるのは、ヘレン様たちに言いがかりをつけられるより嫌なのよ。

 だから我慢するくらいどうってことないわ。



 それに、もうすぐ私たちは進級してヘレン様たちとは違うクラスになれる。

 陛下のおかげでね。

 けれど、その前に私たちの二歳上の子息令嬢たちの卒業パーティーに出席しなければならない。

 しかもその卒業パーティーが一週間後だったりするのよね。

 それまで何事もないといいけど………






 だが事件はその日の放課後に起こった──────



 ミア様との対の魔道具(ネックレス)が赤く光ったのだ。

 光る色で相手の危険度がわかるのだが、赤は命に係わる状態を意味する。

 ここは学園でそんな危険はないと思っていたのが間違いだった。



 学園では転移を使えば、絶対に目立つからと今までは使わないでいたけれど今はそんなことを気にしている場合ではない。

 私とレイは急いでミア様の元へ転移した。







 『きゃあああーーー!』



 私たちが転移した先は、学園の校舎の傍だった。

 周りにいた者たちは上を見て叫んでいたので視線を向けると、ミア様が落ちてきていたのだ。

 急いで風魔法を上に向けて放ったので落ちるスピードが次第に遅くなっていく。

 その間に私は転移でミア様を受け止められるところに移動し、ゆっくり落ちてきたミア様を抱きかかえてそのまま保健室に転移した。

 ミア様は気絶しており、意識がない。




 「ミア様、巻き込んでしまいすみませんでした」



 今回の件は明らかに私のせいだった。

 ミア様を受け止める際に校舎上に視線を向けたとき、ヘレン様の姿があったのだ。

 彼女は私が忠告したのにも関わらず、ミア様を巻き込んだ。

 私は今にもヘレン様にぶつけたい怒りを必死に堪えているつもりだった。



 「ティナ、殺気が出ている」

 

 「あ……ごめんなさい」


 「仕方がない。あんなことまでされて我慢できる方がおかしい」



 どうやら殺気が出ていたらしい。

 私だけでなく、レイも今回の件で怒っていた。

 今までは私に被害だけ出ていたのもあったが、主な理由は言いがかりだけだったから私たちは我慢してきた。

 だが今回はミア様に手を出し、命を危険に晒したのだ。

 本当に人のことをなんだと思っているの?




 「………ティナ様……私は、大丈夫です」


 「ミア様! 本当に申し訳ありません。今回のことは私が巻き込んでしまい──────」


 「そんなに自分を責めないでください。それに今の泣きそうな顔はティナ様らしくないですわ。いつもの笑顔でいてくださいまし!」


 「はい……!」



 こんな時まで私のことを励ましてくれるミア様は優しすぎる。

 そんな人を傷つけようとしたことは絶対に許さない。

 ここまでして手に入れる幸せなんて私が壊してやるわ!



 それからしばらくして、ミア様の父であるギャレット伯爵が迎えに来た。

 ミア様はしばらく休むとのことだった。

 私も学園を休み、ギャレット伯爵の元へ謝罪に行ったりと忙しくようやく登校できたのは卒業パーティーが行われる日だった。




 


 ~~~~~~~~~~~~~~~



 「────────────のようなことがありました」


 「………報告ご苦労。引き続き頼む」


 「はっ!」



 今の報告を聞き私は頭を抱えそうになった。

 本当にヘレン嬢は何をしてくれたのだ。

 いくら上位精霊と契約しているとはいえ、平民が貴族に手を出すなどあってはならないことだというのに。




 これは卒業パーティーに何かありそうだな。

 私は嫌な予感がしたので、卒業パーティーに出席することを決めた。

 騒ぎなどの問題がなければ人前に出るつもりはない。

 この嫌な予感が当たらなければいいのだが……。









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