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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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109話.精霊界と妖精(2)

妖精達が何やら暗躍しています。


妖精達は、自由人なので基本的に誰の命令もききません。でも守護妖精にはびくびくしてましたね。


それに妖精達に何かすると後が怖いんです。服のボタンが全部とれていたりとか・・・。


精霊界は、1000年以上も技術的な進歩が全くない状態が続いていた。


それは、空間転移システムの誕生によってもたらされた恩恵の裏返しであった。


それほど空間転移システムというものは、精霊達にとてつもない利益をもたらした。だが、それは逆に今までの高度な技術を全て陳腐化させてしまう結果となった。


例えば光速を超えるワープ航法が可能な大型宇宙船。精霊界には、数百を超える宇宙船を建造し運用する科学力を要していた。


ところが空間転移システムと宇宙船を比べてしまうと、かかるコストがあまりにも違い過ぎた。


便利でコストのかからない技術が生まれた事で、複雑でコストが莫大にかかるシステムは全て非効率という言葉の前に廃棄された。


宇宙船には特別な技術が使われていた。例えば生命維持システム、宇宙空間の座標把握システム、反物質エネルギー変換炉、或いはワープエンジンなど。


それを空間転移システムの誕生により全て不要と判断された。その決定が下された途端、あらゆる新技術の開発も製造技術もその伝承も全て断ち切れてしまった。


1度でもモノ造りの伝承が途切れると、それを復活させるのはほぼ不可能に近い。


空間転移システムの誕生から1000年の時が流れ技術の伝承もされず、残った技術も徐々に廃れていった。


今では、精霊樹の維持すらできなくなり精霊達の住む星は、死の星へと変貌していた。




ある時、精霊界の将来を憂いた精霊が現れた。その精霊は、精霊界を再生させる知恵を異世界に求め、空間転移システムを用いて複数の異世界へ精霊を送り込んだ。


だが、戻って来た精霊は僅か。さらに戻ってきた精霊達がもたらした知識からは何も得られなかった。


そして精霊界は崩壊の道を徐々にたどり、精霊界の生命の源である精霊樹を辛うじて維持するだけの世界となり、いつしか精霊界の終焉を待ち侘びる者さえ現れるようになる。


そんな時が永遠の様に流れた時、精霊界に扉が現れた。それは、遥か昔に送り出した精霊が精霊界への扉を召喚して戻って来た事の証であった。


精霊界の精霊は、過去に異世界へと旅立たせた精霊に期待を込めた。


そして精霊達が持ち帰ったものは、異世界の原住民が作った薬であった。






カルは、メリルやライラと共に担当官とセスタール湖に建設予定の監視塔について視察を行っていた。


セスタール湖に水龍を放した事で、冒険者から水龍を守るために必要な施設であり、それをセスタール湖の対岸にも建設する予定であった。


「監視塔の建設予定地は、ここと対岸のここになります」


「湖畔の監視は、この2ヶ所の監視塔で行うんですね」


「はい。それと日に何度か兵士を巡回させる予定です。同じ時間に巡回すると水龍を狩ろうとする者にばれてしまいますから、そこは臨機応変にと考えています」


「巡回する警備隊には、トレントや妖精さんも同行させますか」


「いえ、逆にトレントや妖精は、湖畔にいてもらって拠点防衛的な警備をお願いしたいですね」


「分かりました。ラピリア・トレント族の族長さんに依頼してみます」


「助かります。彼らラピリア・トレント族と会話できるのが領主様で助かってますよ」


「ははは、僕にはそれくらいしかできませんから」


カルと担当官は、図面を見ながら監視塔についてあれやこれやと意見を出し合いながら話をしていた。


すると精霊の森から大勢の妖精達が飛んで来ると、カルの手を引っ張り背中を押して精霊の森へと連れて行こうとする。


「妖精さん。森で何かあったの」


妖精達が首を縦にふり、身振り手振りでカルに何かを一生懸命に伝えようとしている。


「何か森であったんですかね」


「分かりませんが、とにかく行ってみます。それと監視塔の件は、さっき話した感じでお願いします」


「了解しました」


担当官は、妖精に半ば拉致されていくカルの背中に手を振りながら、部下に指示を出して監視塔の建設場所の測量を始めていた。




カルが連れて来られたのは、精霊の森を抜けた先にある茫漠。さらにその先には、ワームが住む砂漠が広がる。メリルとライラも妖精に連れられて来たカルの後を追って茫漠の地へと到着した。


荒れた茫漠の地に妖精達がなにやら苗木を植え、根本に水を撒いていたがそれで苗木が大きくなる訳ではない。


「え~と、この苗木を大きくして欲しいの?」


妖精は、カルの言葉に返す様に首を縦に振りつづける。


「だったら僕よりライラさんの精霊治癒魔法の方がいいかな。ライラさんお願いします」


「はい。では皆さん苗木から少し下がってください」


ライラは、カルから送られた魔法杖という名の魔導砲を構えると精霊治癒魔法の呪文を唱える。


「我の力の源たる精霊に願う、癒しの風を吹け、命の泉を湧け、守りの光よ導け、守護の力を貸し与えたまえ、精霊の癒しの力よ、かの者を守りたまへ」


すると荒地に植えた小さな苗木は、みるみる大きくなり・・・大きく・・・さらに大きく・・・どんどん大きくなり、しまいには裁定の木の半分程の巨木へと成長した。


「すごい。ライラさんの精霊治癒魔法がさらに磨きがかかったようです」


「そっ、そんなはずはないです。きっ、きっとカルさんが送ってくれたこの魔法杖の影響です」


カルとライラの会話を他所にメリルが巨木と化した木を見上げながら思わず言葉がもれる。


「それにしてもすごいわね。でもこんな木なんてあの山の上の裁定の木以外に見た事ないわ」


「確かにそうですね。しかも枝ぶりとかも裁定の木さんに似ていますよね。もしかして精霊界の木なんでしょうか」


カルとライラの会話を聞いていた妖精達がいっせいに目線をあらぬ方向へと向け始めた。


カルは、思わずそんな妖精達に向かってじっと目線を贈り続ける。すると妖精達の目線が例の如く泳いでいく。


「やっぱり精霊界から苗木を持って来たみたい」


「へえ。でも精霊界ってすごい木があるんですね」


「この木って裁定の木みたいに歩いたり飛んだりしないですよね」


「・・・どうなんだろう」


メリルの歩いたり飛んだりしないかという問いかけに思わず悩む3人。


そこにカルの背中を叩く誰かがいた。


カルが不意に顔を持ち上げると、それは目の前の巨木の枝であった。


巨木の枝は、カルに何か話しかけている様だがカルにはその言葉が理解できない。


するとカルが腰にぶら下げた鞄を開けて勝手に枝を鞄の中へと押し入れる巨木。


「えっ、なっ、何を・・・」


巨木の枝は、カルの鞄の中をまさぐると大きな樽を3つほど持ち出していく。


「あっ、それはラピリア酒(薬)の入った樽・・・」


巨木は、カルの鞄から持ち出した樽の栓を抜き幹に樽を近づけると樽の中身のお酒を飲む仕草を始める。



「まさか木がお酒を飲んでるんでしょうか」


「そうみたいね」


「なんだか妖精さんの様です」


巨木が3つめの樽を飲み終えた頃、巨木の幹の色が徐々に変化を始める。


「あれ、巨木の幹が赤くなってませんか」


「まさか巨木が酔ってる?」


しまいには、口のない巨木がどこからか酒臭い息を吐き出すと、巨木がさらなる成長を始めた。


「巨木がまた大きくなってますね」


「凄い。でもどこまで大きくなるんでしょう」


巨木は、さらに大きくなり裁定の木程の大きさにまで成長を続けた。


カル達がその巨木を眺めている横で、妖精達が硝子の様な透明なプレートを出すと何かの操作を始める。すると妖精達の前に精霊界への扉と同じものが複数現れた。


妖精達は、その扉を開けると次々とその扉の中へと入っていく。


「あの扉はなんでしょうか」


「さあ、でも入っていいとは言われてないし・・・」


「何かやっかい事に巻き込まれる気が・・・湖に戻りましょうか」


「そっ、そうですね」


カル達は、裁定の木程の大きさにまで成長した巨木と妖精達を残し、精霊の森を抜けてセスタール湖の監視塔建設予定地へと足を早めた。


そう、ここに居たら必ず面倒事に巻き込まれると確信した3人であった。






カル達が妖精に連れられて茫漠の地で苗木を巨木に成長させた頃、少し離れた茫漠の値で精霊達が同じ様に苗木を成長させるべく精霊魔法を放っていた。


「あれ、苗木が成長しません」


「おいおい。精霊が精霊魔法に失敗とかありえないだろ」


「もう1度やってみます」


だが、何度精霊魔法を苗木に放っても苗木はほんの僅かしか成長しない。こんな事は今までに無かった現象であった。


「ええい。かわれ俺がやる」


別の精霊がそう言い出したが、精霊魔法を何度放っても苗木はちっとも大きくならない。


「どうなっていやがる。この世界では精霊魔法が使えないのか」


「そんなはずはないです。この世界から来た精霊の話では、普通に精霊魔法が使えるという情報が入ってます」


「くそ。これでは研究所の立ち上げどころか、俺たちが寝泊まりする場所も確保できないぞ」


「まさか野宿ですか。勘弁してくださいよ。魔獣に食べられて死ぬなんて嫌です」


「もしかしてこの苗木のが悪いのか」


「ああっ、そういう事もありますね」


精霊達は、成長しない苗木に向かってあろうことか苗木が悪いと言い出す始末。


「予備の苗木を持って来てますからそれで試してみます」


だが、やはりというか結果は同じであった。荒地に植えた苗木に精霊魔法をいくら放っても苗木は殆ど成長しなかった。


そんな時であった。ある精霊の目にとまったのは、木が巨木へと成長していく姿であった。


「皆さん。あれ、あれを見てください」


ひとりの精霊が指さす先では、今までなかったはずの巨木が茫漠の荒地に誕生していた。


「おい、どうなっていやがる。俺たちは、この苗木に精霊魔法を放ったんだぞ。そもそもあんな所に苗木なんて植えてないぞ」


「でも、あの巨木は、我々の精霊界の木です」


「くそ。何でこんな事になるんだよ」


「悪いが、あの巨木まで移動して調査をする。何があるか分からないから戦闘準備を忘れるな」


精霊達は、荒地に突如として誕生した巨木に向かって歩きだした。


そう。荒地に誕生した巨木は、ライラの精霊治癒魔法とカルが持っていたラピリア酒(薬)によって誕生した巨木であった。


精霊達は、精霊魔法を放っても成長しない木を荒地に残したまま去ってしまう。だが、その光景をずっと見ていた者がいた。


そう、妖精達である。


妖精は、荒地に植えられた苗木に近づくと、植えられた2本の苗木を地面から掘り起こし、一目散に精霊の森へと飛び去っていく。


どうもこの精霊の森に住む妖精達は、手癖が悪いようである。


さて、苗木を持ちさってしまった妖精達は、その苗木をどうしようというのか。


もう手癖の悪い妖精ばかりが増えて・・・困ったものです。


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