エピローグ 新春放談
(FMジングル、少しだけ擦れたカセットノイズ)
「……えー、新春放談ということで始まりましたけど」
「始まりましたね。でも、始まってる感じあんまりしないですね」
「それ言うと全部そうなっちゃうんですよ」
「そうなんですよね」
「この前さ、レコード棚ちょっと整理してて」
「またやってたんですか」
「いや、気づいたらやってるやつですねあれは」
「分かりますけど」
「で、出てきたんですよ。ブレイクの元ネタみたいなの」
「またそこ行きましたね」
「結局あれってさ、全部同じところ掘ってるだけなんですよね」
「同じって言い切りますね」
「いや、でもそうじゃない?」
「でも違うと思いますよ」
「どこがです?」
「間ですかね」
「間?」
「切り方とか、置き方とか」
「サンプリングって結局そういうことでしょ」
「いや、そうなんだけど……それだけでもない気もするんですよね」
「また曖昧になった」
「曖昧じゃないとこで話すと終わっちゃうんですよ」
「でもさ、例えばFunky Drummerとかさ」
「出ましたね」
「出ますよこれは」
「出ますけどね」
「同じネタでも、DJ PremierとPete Rockで全然違うじゃないですか」
「まあ違いますね」
「でも同じでもある」
「どっちなんですかそれ」
「どっちでもいいんですよ」
(少し笑い)
「今さ」
「はい」
「ちょっと同じ話してる気がしない?」
「してますね」
「でもちょっと違う気もする」
「それ毎回言ってますね」
「でもさ、その“ちょっと”が大事なんじゃないですか」
「また抽象に逃げましたね」
「逃げてないですよ」
(間)
「さっきから思ってたんですけど」
「はい」
「なんか、少しずつ揃ってきてません?」
「揃ってきてるように聞こえるだけかもしれないですけどね」
「でも今の“揃ってきてる”ってさ」
「はい」
「前より自然じゃない?」
「そうかもしれないですね」
「収束してるのかな」
「収束してるように“見えるだけ”かもしれませんけど」
(FMノイズ、わずかに整う)
「まあいいか」
「ですね」
(少しだけ沈黙)
「……今の“ですね”も、ちょっと揃ってた気がします」
「気のせいですよ」
(ノイズ一定化)
「じゃ、そろそろ」
「そうですね」
(フェードアウト)




