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平凡を目指す私と騎士科の王子様の告白騒動  作者: 四葉ひろ


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エピローグ

 剣術大会はその後の上級生たちの試合日も含めて無事終了した。私は、案の定、リチャードが出た日の観戦だけで疲れ果ててしまい、上級生たちの試合についてはみんなからの話を聞くだけになった。

 

 次の登校日、みんなでお昼を食べようと約束していた登校日。

 寮を出ると驚いたことにリチャードが立っていた。女子寮から出てきた生徒たちがチラチラとリチャードを見て何事かささやいている。

 こう言う状況には慣れていると思い込んでいたけれど、今になってよく見れば、リチャードはこの上なく気まずそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


 思わず駆け寄ってしまった私を見つけると、リチャードの顔がパッと明るくなる。まるで幼い頃に戻ったようで胸が温かくなる。

 

「一緒に行こうと思って。……友達に戻ったんだろ?」


 そう言っていたずらっぽく笑う。

 そうだった。私は結果として剣を捧げると言うリチャードを断った形になってしまったけれど、リチャードは屈託なく友人をやってくれるつもりのようだ。

 

「――そうね」


 何故だか涙が出そうになって慌てて横を向いて隣に立つ。私たちは、並んで歩き出した。

 リチャードの腕が肩のあたりをかすってなんだかくすぐったい。


 門を入ると一緒に歩く私たちに注目が集まった。

 剣技大会での、花冠をつけたリチャードはすでに寮でも噂になっていたし、なんとなくこうなることはわかっていた。


 でも不思議と前のように不安や恐怖は生まれなかった。

 リチャードと仲直りができたことでレノックスの呪縛から逃れられたのかもしれない。そんなことを隣にリチャードの気配を感じながら考えた。


「ベル!」


 私を呼ぶ声に振り返ると、手を振るクレアと隣にはオルディスさん。お昼にはドレイクさんも合流するはずだ。


「早速お迎えか。熱心なことで」

「すでに婚約までしているお前とは、危機感が違うからな」


 合流した男性陣は何やらボソボソと低い声で話している。何を話しているのか振り返ろうとしたけれど、クレアに手を引かれてそれは叶わなかった。


 昼食は学園のカフェテリアでとったけれど、ここでも注目の的だった。

 リチャードは当然のように私の隣に座って、「これ食べてみる?」「飲み物足りる?」となぜか過保護ぶりを発揮している。

 昔みたいに――と私が言ったから、本当に子ども時代の私と接しているつもりなのかもしれない。でも大人っぽくなった整った顔を近づけられると緊張するから適切な距離を保ってほしい。

 クレアがニヤニヤしているのがちょっと気になるけれど、とりあえず気にしないことにした。

 

 

 それ以来、私たちは何かあればいつも一緒に行動するようになった。


「ベル嬢、ある意味最強だな。リチャードのこれだけの攻勢を『お友達に戻ったから』で全て流すとは。本当に来年の剣術大会で優勝しないとこれ以上は無理なんじゃないか?」

「いいの。ベルはこの自分の気持ちにも鈍いところがいいところなんじゃない」


 婚約者同士が何やらこちらを見てヒソヒソ話しているので近づいてみる。

 

「……何? なんかクレアに悪口言われている気がする」

「違うわ。褒めてるのよ」

「本当かしら」

「ベル嬢の良いところを褒めていたんだよ」

「……そう?」

「そうそう!」

 

 どうしてあんなにビクビクしていたんだろうと拍子抜けするくらい、楽しそうに過ごす私たちに意外と周囲は好意的だった。

 そういえば、あのカフェテリアで絡んできた侯爵令嬢たちですら、リチャードがお願いしたら、あっさりと私たちを認めてくれるようになったのだ。あの剣術大会でのリチャードに感動したという。さすが王都の貴族様は素直で心が優しい。なにをお願いしたのかは教えてくれなかったけれど。

 

 平凡を望んで王都に来たのに、今の状況はずいぶん遠くに来てしまったなあと思う。だけど、今の私は平凡でなくても私らしくいられている気がする。それはきっと私の側にはクレアがいて、そしてリチャードがいる。


 今朝も寮を出るとリチャードがいた。


「おはよう」


 と言うと自然に私の手を取る。

 私はなんだかドキドキしてしまうけれど、これもお友達なので気にしてはいけないのだろう。

 

 ――でもそろそろ諦めないといけない気がする。

 お友達と思い込みたい自分にも、心のだいぶ表面まで来てしまった気持ちにも。

 

 それでも、前よりも少しあげられるようになった目線で、今日も私は学園生活を送っている。

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