蘇りし声
戦場の空気は、激しい衝突の後の沈黙に包まれていた。
エリオットは、セラフの言葉が頭の中で繰り返されるのを止められずにいた。
「お前の心は作り物だ。」
戦うたびに確かに感じていた熱も、怒りも、今は自分のものではないように思えた。足元が崩れていくような感覚。視界は歪み、耳鳴りがする。
ふと、彼の手がわずかに震えているのに気づく。
ソラは、そんなエリオットを横目に、顔を曇らせる。
「エリオット……! しっかりしろ!」
声をかけるが、エリオットはただ虚ろな瞳を返すばかりだった。
「もう限界だ。撤退する。」
ヴァレンが低い声で言い放つ。
「でも、今逃げたら――」
ソラが抗うように言うが、ヴァレンは首を振る。
「無理だ。今のエリオットは戦える状態じゃない。」
エリオットの背を支え、ヴァレンは鋭く指示を飛ばす。
「全員退却! 死にたくなければ従え!」
仲間たちは動揺しつつも、撤退を始める。ヴァレンはエリオットの腕をつかみ、そのまま無理やり後方へ引っ張る。
戦場を離れた一行が、荒れ果てた廃ビルの影に身を潜めたそのときだった。
「――待って。」
かすかな声が聞こえた。
ヴァレンが振り向く。瓦礫の影から、細い体がよろめくように姿を現した。
「……リリー?」
ソラが息を呑んだ。
そこにいたのは、確かにリリーだった。血に染まったはずの白い髪、しかし瞳にはまだ確かな光が宿っていた。
エリオットは、その姿を見た瞬間、わずかに目を見開いた。
「リリー……? でも……お前は……!」
ヴァレンが鋭い視線を送る。
「死んだはずだ。」
リリーは苦笑しながら、荒い息を整えた。
「……死んだよ。確かに一度、私は死んだ。」
ヴァレンとソラが息を呑む。
「じゃあ、なぜ……」
リリーは、痛々しい笑みを浮かべたまま、震える声で続けた。
「……リヴがね。自分の命を使って、私を蘇生させたの。」
エリオットの目が大きく見開かれる。
「リヴが……?」
「……自壊しかけた体で、私を蘇らせたの。あの子の力は、他人にも使えるって……知ってた?」
ソラが目を伏せ、唇を噛む。
「じゃあ、リヴはどこに……」
「わからない……目を覚ましたら、もういなかった。」
リリーの声はかすれ、苦痛が混じっていた。
「ごめん、私も全部は説明できない。けど……リヴが私を生かしたのは、きっとあなたを守るためだと思う。」
その言葉に、エリオットは顔を伏せ、肩を震わせた。
リリーは、一歩近づき、そっとエリオットの頬に触れる。冷たいはずのその指先が、かすかに温かい。
「行って、エリオット。君の守るべきものは、まだ残ってる。」
その声を聞きながら、エリオットは必死に崩れかけた心をつなぎ止めようとしていた。
蘇る命の意味を問いながら、戦いは続く。
そして誰もが、それぞれの痛みを胸に抱えて。




