表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/66

蘇りし声

戦場の空気は、激しい衝突の後の沈黙に包まれていた。


エリオットは、セラフの言葉が頭の中で繰り返されるのを止められずにいた。


「お前の心は作り物だ。」

戦うたびに確かに感じていた熱も、怒りも、今は自分のものではないように思えた。足元が崩れていくような感覚。視界は歪み、耳鳴りがする。

ふと、彼の手がわずかに震えているのに気づく。


ソラは、そんなエリオットを横目に、顔を曇らせる。


「エリオット……! しっかりしろ!」


声をかけるが、エリオットはただ虚ろな瞳を返すばかりだった。


「もう限界だ。撤退する。」


ヴァレンが低い声で言い放つ。


「でも、今逃げたら――」


ソラが抗うように言うが、ヴァレンは首を振る。


「無理だ。今のエリオットは戦える状態じゃない。」


エリオットの背を支え、ヴァレンは鋭く指示を飛ばす。


「全員退却! 死にたくなければ従え!」


仲間たちは動揺しつつも、撤退を始める。ヴァレンはエリオットの腕をつかみ、そのまま無理やり後方へ引っ張る。


戦場を離れた一行が、荒れ果てた廃ビルの影に身を潜めたそのときだった。


「――待って。」


かすかな声が聞こえた。


ヴァレンが振り向く。瓦礫の影から、細い体がよろめくように姿を現した。


「……リリー?」


ソラが息を呑んだ。


そこにいたのは、確かにリリーだった。血に染まったはずの白い髪、しかし瞳にはまだ確かな光が宿っていた。


エリオットは、その姿を見た瞬間、わずかに目を見開いた。


「リリー……? でも……お前は……!」


ヴァレンが鋭い視線を送る。


「死んだはずだ。」


リリーは苦笑しながら、荒い息を整えた。


「……死んだよ。確かに一度、私は死んだ。」


ヴァレンとソラが息を呑む。


「じゃあ、なぜ……」


リリーは、痛々しい笑みを浮かべたまま、震える声で続けた。


「……リヴがね。自分の命を使って、私を蘇生させたの。」


エリオットの目が大きく見開かれる。


「リヴが……?」


「……自壊しかけた体で、私を蘇らせたの。あの子の力は、他人にも使えるって……知ってた?」


ソラが目を伏せ、唇を噛む。


「じゃあ、リヴはどこに……」


「わからない……目を覚ましたら、もういなかった。」


リリーの声はかすれ、苦痛が混じっていた。


「ごめん、私も全部は説明できない。けど……リヴが私を生かしたのは、きっとあなたを守るためだと思う。」


その言葉に、エリオットは顔を伏せ、肩を震わせた。


リリーは、一歩近づき、そっとエリオットの頬に触れる。冷たいはずのその指先が、かすかに温かい。


「行って、エリオット。君の守るべきものは、まだ残ってる。」


その声を聞きながら、エリオットは必死に崩れかけた心をつなぎ止めようとしていた。


蘇る命の意味を問いながら、戦いは続く。

そして誰もが、それぞれの痛みを胸に抱えて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ