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心の揺らぎ

エリオットは、息を呑むほどの速さで撤退を決断した。体力の回復は必要不可欠だった。彼は仲間とともに、再編成と休息をとりながら、傷を癒していった。その間、紅羊の力が内に宿る感覚が強くなり、彼の意識は少しずつ明確さを取り戻していった。


そして、数日後。再びセラフとの対決が迫っていた。戦場に戻ったエリオットは、冷徹な目で周囲を見渡す。彼の体には、紅羊の力がまだ脈打っていた。


「今度こそ終わらせる。」


その覚悟が、彼の心を一層固くした。


戦場に立つと、セラフの姿が目に入った。相変わらず、無表情で冷徹な彼の存在がエリオットの胸を突いた。


「来たか。」


セラフは、感情を隠したままでエリオットを見据えた。彼の視線に動揺することなく、エリオットは一歩踏み出す。


「俺が終わらせる。」


一瞬の静寂が戦場を包み、次の瞬間には両者がぶつかり合った。セラフの一撃がエリオットを直撃するが、今のエリオットには以前のような弱さはない。紅羊の力が、彼の肉体を支え、傷もすぐに癒える。


「お前の力は、もう限界だ。」


セラフは、冷徹に言い放った。言葉とは裏腹に、彼の表情には一抹の驚きが隠しきれない。


だが、エリオットはその言葉を無視し、さらに攻撃を仕掛ける。力強く突き進み、セラフの防御を打破していく。


戦いは熾烈を極め、エリオットは冷静さを保ちながらも、その力を最大限に引き出していた。しかし、セラフの隙をついて一撃を放った瞬間、セラフが低く笑った。


「お前、何もわかっていないな。」


その言葉に、エリオットの身体が一瞬、止まる。


「お前の心は、作り物だ。紅羊の力も、お前を支える本当の力ではない。」


その瞬間、エリオットの内面で何かが崩れ始める。紅羊の力を得てから、彼の中で次第に薄れた人間としての自我が、セラフの言葉によって激しく揺さぶられた。


「心を無くしたお前に、何ができる?」


セラフの言葉がエリオットの胸に重く突き刺さる。自分の中にある本当の心が見えなくなり、揺れ動くその感覚に、彼は一瞬、立ちすくむ。


「俺は――!」


エリオットの中で、さまざまな感情が交錯する。そのとき、彼は確かに感じていた。自分の中に何か欠けていること、何かが壊れていること。


だが、それが何かはわからない。彼の心の中で、紅羊の力がますます強くなる一方で、人間としての感情がどんどん薄れていくのを感じていた。


「お前が何を失おうと、戦いは終わらない。」


セラフの言葉が耳を貫き、エリオットはそれに反応するかのように、再び力を振り絞る。


だが、その反応には、もはや人間らしい温もりは感じられなかった。自分の心を見失いかけたエリオットは、今、完全に紅羊の力に飲み込まれようとしていた。


ーー心の中の揺れ動き、すべてを支配する力。エリオットは今、何を守り、何を失っているのか。

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