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果樹園の魔法使い~形のない宝石を求めて  作者: こんぎつね
8章 聖地カンザギアとゼルド国
186/223

決着

【前話までのあらすじ】


白い魔獣人ロレイスは分身体をつくりギガウ、アシリア、リジに個別の闘いを挑んだ。3人はそれぞれ善戦するがロレイスに決定的なダメージを負わせることが出来ない。戦闘中、ギガウは自分の打撃の範囲にリジの斬撃の傷が出来るのを見て、その秘密に気が付く。ギガウをロレイスの牙が襲う時、山麓の守護人リュキュエスが助けに入った。

◇◇◇

 白い魔獣人ロレイスの横面を殴り、屈託のない笑顔を見せるのはリュキュエスだった。


 「ひとつ貸しだよ」


 「あ、ああ.. それよりお前、どうやってここまで..」


 「いや、白い魔獣人って凄く強いって聞いたから、どうしても見てみたくてさ。荷台の樽に隠れていたんだけど、おっさんが降りた後、何か別の方向に行っちゃってさ。そんでここまで走ってきたわけだよ」


 「おまえ、このこと、ビュルスは知ってるのか?」


 「内緒、内緒。パパには内緒ね!」


 「じゃ、それで貸し借りなしだな」


 「あっ、ずるい!!」


 吹き飛ばされたロレイスはのっそりと立ち上がった。


 「驚いたぞ。私を吹き飛ばすとは、やるではないか。今日の客は本当に面白い」


 ロレイスはたてがみを毛づくろいするとリュキュエスを見据えた。


 「驚いたなぁ。あたしの渾身の一発なのにケロッとしてるよ。何なのあの獣は」


 「あいつが白い魔獣人ロレイスだ。言っておくが、あいつは強いぞ。俺が闘った誰よりも強い」


 その言葉を聞くとリュキュエスの口角がゆっくり上がった。


 「へぇ、ギガウのおっさんにそこまで言わせるとは面白い。やっぱり来て正解だった」


 「私も君との闘いが楽しめそうだ」


 ロレイスはさらにもう一体分身を出した。


 [ ―さぁ、闘いを始めよう― ]


 またしても口も声も同時に発していた。


 「リュキュ、こいつは普通の攻撃では倒せない。だが俺とお前なら倒せるかもしれない。俺は山麓でのお前の拳撃を全て覚えている。俺が合図をしたら、山麓での攻撃をロレイスに浴びせるんだ。お前なら再現できるよな」


 「ほんとずるいよね。そんな言い方されたら出来ないなんて言えないじゃん」


 リュキュエスは口を尖らせた後、不敵に笑った。


 「何をするかわからないけどさ、さぁ、いくよ!」


 「ああ、頼むぞ!」


 ギガウはロレイスの攻撃を縦槌でいなしながら、タイミングを計った。


 それはリュキュエスが必殺の連撃を出すタイミングだ。


 リュキュエスの重い拳に、ロレイスの体がわずかに沈んだ。


 「リュキュエス! 今だ! 白い奴を俺と思え!」


 リュキュエスの両手が朱色に染まると、凄まじい連撃が放たれた。


 ギガウも山麓で自分が受けたリュキュエスの拳の軌道、タイミングを全て再現し、ロレイスに連撃した。


 リュキュエスとギガウの拳が寸分たがわぬタイミングでロレイスを打ち付ける、打ち付ける、打ち付ける。


 リュキュエスの連打は止まらない。この連打は相手が倒れるまで止まらず繰り返されるのだ。


 ロレイスの顔は左右に激しく振れ、腹に当たれば、くの字に折れ曲がる。しかし、連撃は倒れることを許さず、ロレイスの体を宙に浮かせる。


 ロレイスの口から飛散した唾液が血交じりとなり、雪を赤く染めあげていく。


 [ ―ぐががああああああ― ]


 ロレイスから大きな叫び声が上がった。



 闘いは終わった。


 リジやアシリアに対峙していたロレイスの分身も姿を消した。


 雪の上にうずくまる白い魔獣人ロレイスにギガウが近づく。


 「ロレイス..」


 「み、見事だ。ギガウよ。よくぞ私を破った。私の秘密を見抜くとはな」


 「リジの剣撃がヒントになった。あなたはリジの剣撃を受けすぎたんだ。だから、俺の打撃痕に剣で受けた傷が浮かび上がった。あなたを倒すには本体と分身体に同じタイミングで攻撃しなければならない。あなたが分身体とシンクロした時、その攻撃だけが本当のダメージとなるんだ」


 「ふふふ。その通りだよ。どうやら私は自分の力を過信しすぎたようだ。無暗にリジやアシリアの攻撃を受けすぎてしまった..いや、間違いだ。単純に君たちが強かった。それだけだ」


 「あたりまえだ。でも、白い魔獣人ロレイス、あんたもなかなかのものだったよ」


 リュキュエスが彼女なりの賛辞を贈った。


 「君には驚かされたよ。リュキュエスと言ったな。ギガウよ、お前の作戦が成功したのは、ひとえにこの娘のおかげだ。攻撃を合わせたのはこの娘なのだから..ガフ」


 ロレイスは大きく吐血した。


 「私の秘密を暴いた戦士は過去にもいた。天才の類だ。しかし、作戦を実行できるものはいなかった」


 リュキュエスは、弱るロレイスのたてがみを優しくなでる。


 「ねぇ、ギガウ、ロレイスは死んじゃうのか? あたし、またロレイスと闘いたいよ」


 「ふっ、リュキュエスよ、大丈夫だ。私は死なないのだ。いや、死ねないのだ。王との約束だから。ゼルド国の王の魂が再び蘇り、秘宝をその手にするまで私は守らなくてはならない。それが約束であり王の願いなのだ」


 その言葉を聞くとリュキュエスはロレイスの大きな頭を体いっぱいに抱きしめた。そして言ったのだ。


 「ありがとう。ずっと覚えていてくれたんだね.. ローレイ」


 そのときロレイスは目を見開いた。


 「あれ、あたし何を言っているんだろう」


 リュキュエスも無意識に出た言葉に戸惑っていた。


 「そうか.. やっと生まれ変わったのですね、ルイセルト王よ」


 ロレイスは力を振り絞って立ち上がった。そして、リュキュエスに背中に乗って欲しいと願った。


――


 「ギガウさんは、無事であろうか? それにしても通信係のオルファは何処へ行ったんだ」


 宝物庫から無事に『ゼルド国の秘宝』を運びだしたルヴァーと20戦士たちは今か今かとソリの近くで待っていた。


 指弾のシグドが興奮気味に指をさして言った。


 「来た! ギガウ! 戦士ギガウ!  ん~ん 〇▽%×□!!」


 「何だ、シグド! 何言ってるかわからん。落ち着いて..!」


 ルヴァーは大切に抱えていた秘宝の入った箱を落としてしまった。


 「 し、し、白い 魔獣人だぁ!!」


 ギガウ、アシリア、リジ、そしてリュキュエスを背に乗せた白い魔獣人ロレイスが近づいてきたのだ。


 ルヴァーと20戦士は臨戦態勢をとった。


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