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果樹園の魔法使い~形のない宝石を求めて  作者: こんぎつね
8章 聖地カンザギアとゼルド国
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地吹雪

【前話までのあらすじ】


『形のない宝石』がゼルド国にはないと知りながらも、果樹園パーティは、魔獣人討伐に力を貸すことになった。しかしリジはいま一つ乗り気になれなかった。そんなリジの背中を押すのはライスだった。

◇◇◇

 『俺はやはり反対だ、ルヴァー。ゼルド国のことを他世界の人間に頼るなど。我々の戦士の沽券にもかかわるだろ!』


 『私もエイクと同意見だ』


 ルヴァーは果樹園パーティに相談する前に、他の戦士たちにも話を通していた。しかし、屈強なギガウを見た戦士の中には、対抗心から意見を覆す者も現れた。


 戦士を納得させるには、「強さ」を見せるのが一番である。ルヴァーは20戦士の中から代表者を選出し、ギガウと闘わせることにした。


 場所は正式な試合が行われるララ闘技場だ。


 ララ闘技場とは戦士が何かを決める時に使われる神聖なる場所だ。それは各国の中央裁定所で行われる決闘裁定によく似ている。しかし、ゼルド国では犯罪の決議に使われるよりも戦士を得心させることに使われることが多い。


 「まったく、あいつらギガウを何だと思っているんだ。面倒だ、私が20戦士とやらをこのルースの矢で眠らせてやろうか」


 「落ち着いて! アシリア!」


 ライスは慌てて、いきり立つたつアシリアを止めに入った。


 「ははは。心配するな、ライス。アシリアの冗談だよ」


 ピリピリするアシリアからはどうも冗談めいたものを感じられなかった。


 「大丈夫、ギガウ?」


 「大丈夫だよ、ライス。大昔にはチャカス族でも決闘決議が行われていたと親父から聞いたことがある。それに燃えるんだ! これはきっとチャカス族の戦士の血だ」


 闘技場には全国民が集まった。老人から子供まで目を輝かせながら闘技が行われるのを待ち構えていた。さすがは戦闘民族だ。


 『―これより20戦士代表シグドとチャカス族ギガウの力比べを行うものとする』


 試合開始の掛け声がすると、ギガウは対する20戦士の代表に声をかけた。


 「俺は誇りあるチャカス族の戦士ギガウだ。こうなったからには悪いが勝たせてもらうぞ」


 「シグド。指弾のシグド。ここ、ララ闘技場。お前と俺。戦士として闘うだけ」


 シグドの言葉には私怨の類は微塵も感じなかった。むしろ言葉にはギガウへの尊敬の念さえ感じられた。戦士は、この「ララ闘技場」という場所で闘うことに誇りを感じているのだ。


 20戦士は速さ、防御、攻撃などそれぞれが特化性を持つ戦士たちの集まりだ。シグドはその中でも怪力を誇る戦士だ。


 彼の逸話としてはティアール鉄よりも固いモグラ魔獣の爪を指の一撃で粉砕したという。


 シグドは開始と共に必殺の指弾の連続攻撃を仕掛けた。


 駆け引きはない。自分の全力をぶつけてきたのだ。


 しかし、ギガウはその指弾を漏らさず全て素手で受け止めた。


 指弾の凄まじい衝撃に最初の2発は空気を揺さぶり、観衆の頬の肉を揺らすほどだった。しかしその衝撃は、やがて湿気た爆竹のようなものに変わった。 


 ギガウがインパクトの瞬間、衝撃を地面へと分散させたのだ。


 その様子を見ていたリュキュエスは『当たり前だ。ギガウのおっさんは、あたしの攻撃をすべて受けながすくらい強いんだから』と自分のことのように自慢げに語った。


 逆に指弾の衝撃を返されたシグドは指を固められ、そのまま膝をつかざる負えなくなった。ギガウは胸下にあるシグドの顔面に渾身の一撃を放とうと拳を振り上げた。


 『ま、まいった!!』


 あっさりと勝負はついた。


 ギガウの勝利が告げられると闘技場は割れんばかりの歓声に包まれた。


 後にシグドは語った。―ギガウの拳があまりにも巨大に見えた。自分との格の違いを見せつけられた―と。


 そう語るシグドは、意外にも清々しい顔をしていたのであった。


 この神聖な勝負以降、ギガウや果樹園パーティに不敬な扱いをする者はいなくなった。


 果樹園パーティは本当の意味でゼルド国に認められたのだ。


 翌日、ゼルド国の秘宝を取り戻すためギガウ、アシリア、リジは白い魔獣人の巣となった宝物庫へ向かって出発した。


 作戦はシンプルだった。


 ギガウ、アシリア、リジの3人が白い魔獣人を足止めする。


 そして別動隊のルヴァー、戦士長エイク、指弾のシグドが宝物庫から秘宝を取り戻すという作戦だ。


 今までもこの作戦を試みたが、足止め時間が3分たらずで、作戦を完遂する事すらできなかった。


 鹿ソリの荷台では戦士長のエイクがルヴァーにある質問をしていた。


 「ルヴァー様、なぜ作戦にビュルスを参加させなかったのですか。あの者の反射能力は白い魔獣人ロレイスに有効です」


 「ビュルスの力など借りずともギガウさんをはじめ果樹園の方々で十分だ」


 「 ..そうですか。フレイディスを同行させなかった理由はなぜですか。白い魔獣人の速さに唯一追いつけるのは、彼女の瞬足のみです」


 「 姉さ.. フレイディスはライスさんの世話をしてもらうために残してきたのだ」


 「 ..そうですか。 あの..ルヴァー様はもしかして、ビュルスとフレイディスの復縁を願っているのでは?」


 「黙れ、エイク。父のいない私たち兄妹。あいつは私との闘いでフレイディスを奪う必要があった。臆病風に吹かれたあいつは、姉を置いて逃げたのだ。今更、あいつと姉さんの復縁を望むわけがないだろう」


 しかしルヴァーは知っていた。ビュルスが勝負を避けた本当の理由を。


 反射の能力を持つビュルスと闘えば、ルヴァーは自分の力を跳ね返されて負けるという屈辱的な姿を民衆に見せることとなる。


 そんな姿を民衆に見せれば、統治者となったばかりのルヴァーの求心力は失墜してしまう。


 ビュルスは自ら身を引いたのだ。


 だからこそ、ルヴァーは、許せなかった。


 戦士の誇りを汚し、姉を悲しませたビュルスを許せなかったのだ。


 2台のソリはゼルド国の宝物庫が見える場所に着くと二手に分かれた。白い魔獣人を足止めするギガウの班と宝庫から秘宝を運び出すルヴァーの班だ。


 ギガウたちがソリから降りて10歩前に進むと、突風による地吹雪が巻き起こる。


 そして、雪に溶ける純白なたてがみをなびかせながら白い魔獣人が姿を現した。


 「作戦開始」


 ギガウが呟いた。


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