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果樹園の魔法使い~形のない宝石を求めて  作者: こんぎつね
8章 聖地カンザギアとゼルド国
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複雑な心境

【前話までのあらすじ】


ライスたちはゼルド国の成り立ちを知った。そして、『形のない宝石』が、すでにゼルド国には無いことをルヴァーから告げられた。それでも、ライスたち果樹園パーティはゼルド国の問題=魔獣討伐を手伝うことを決めた。

◇◇◇

 「なんか、リライに騙された感じするなぁ。私はここに『形のない宝石』があるかと思ったのに」


 リジが不満を口にした。


 「でも、まるっきり関係ない話じゃなかった。それに『天樹』がそれぞれの世界に3つあることから『天にかける3脚』と呼ばれていること とか ゼルドの民がそのひとつの世界から流れ着いた人々だっていうのもわかったよね」


 「ライスは前向きだね」


 ライスの表情を確認すると、リジはわずかにニヒルな笑みをこぼした。


 「リジはゼルド国を手伝うのは嫌なの?」


 「別にそう思ってはいないけどさ.. それに何か一番期待されているのはギガウだし」


 ルヴァーは戸建ての家を果樹園パーティとビュルス親子、それぞれに用意してくれた。


 リジはソファに寝ころびながら、もやもやした気持ちを吐き出し、それをテーブルで豆だし湯を飲みながらライスが聞いていた。


 ギガウは2階の窓から外を眺めていたが、吹き抜け響く2人の会話を聞いていた。


 リジが今一つ乗り気でないことについて、ギガウには心当たりがあった。それはアシリアが森へ姿を隠す時に言い放った言葉だ。


 アシリアはこう言ったのだ。


 『この国で、ギガウ、お前が一番苦労するかもしれない。しかし、本当に危険なのはライスだ』


 この国は歴代の戦士が女神ララの術式を使い『禁魔法の結界』を張っている。それは国の秘密を保持することと、ゼルドの戦士の闘いに魔法は邪道とされていたからだ。


 「でもさ、ルヴァーは魔獣人を退治する前提で話しているけどさ、それもなんかなぁ..」


 リジには乗り気になれない理由が、さらにもうひとつあった。


**

――数時間前の玉座の広間――


 「あいつは強すぎるのです。私では白い魔獣人に討ち勝つことが出来ない。こんなことを他の方々に頼むのは筋違いなのはわかっています。しかしギガウ様ならばあの白い魔獣人を足止めしていただけるかと」


 「自分の国の問題をギガウひとりに委ねようというのか?」


 アシリアが厳しい言葉を言い放った。


 「私をはじめこの国にはもう戦士は20名ほどしかいません。しかし私たちの攻撃ではわずかな傷を負わせることができる程度なのです。あいつが住処にしている宝庫から秘宝さえ取り戻せたなら、私たちに戦士の力が戻るはずなのです」


 「戦士の癖に誇りというものが感じられないな」


 アシリアの辛辣な言葉がルヴァーの胸をえぐった。


 「いや、アシリア、俺はそうは思わない。このゼルド国は俺の祖先チャスカ族と同じ匂いがする。ルヴァーはその戦士の誇りを自ら脱ぎ捨て、俺たちに頼んでいるのだ。ルヴァー、俺はお前たちを手伝ってもいいと思っている」


 「私は反対」


 「リジ..」


 「だってさ、戦士の数が20名くらいしかいなくなったのは、その白い魔獣人に殺されてしまったからでしょ。戦士の力が弱まったからと言って、昼に私たちと闘ったあなたたちは別格に強かったよ。もしも魔獣人の強さが私たちの想像よりも遥かに上だったとしたら、ギガウが危険すぎるよ」


 「いいえ、リジ様。私たちの国の戦士が20名ほどしかいない理由は、白い魔獣人に殺されたからではありません。この国の少子化が主な理由です」


 「え? だってさっき魔獣人には勝てないって言ってたじゃん」


 「そう、あいつは私たちを完膚なきまで倒すと、まるで下賤なものを見るように一瞥して立ち去るのです。あいつは私たちの戦士の誇りをへし折ることを楽しんでいるのです。だからこそ、ギガウ様の命が奪われる危険はないでしょう」


 「だったら、なおさら自分たちで何度でも挑んだらいいんじゃないの?」


 「どうしたんだ、リジ。お前さっきから変だぞ」


 頑なに拒み反抗する姿勢を崩さないリジにギガウは口をはさんだ。


 「リジさんのおっしゃることはわかります。しかし私たちは既に150年あいつに挑んでいるのです。だが、結果は敗北。そして今、このような状態です。私は私のルーツを失いたくはない。どうしても秘宝を取り戻しゼルド国に力を呼び戻したい。国の再建をしたいのです」


――


 「結局さ、ライスとギガウが返事しちゃったんだけどさ。白い魔獣人ってゼルドの戦士を殺してはいないんだよね.. 本当に退治するべき悪い奴なのかな」


 「だから秘宝を宝庫から持ち去るまでの足止めをするって事になったんじゃない」


 「うん、そうだけどさ」


 「それに、ギガウだけで闘わせるのは心配だから、リジとアシリアも付いていくことになったじゃん」


 「そうなのよ。『共闘してもいい』ってあっさり認めちゃってさ。『何人で立ち向かっても結局同じこと』ってルヴァーが漏らした言葉も気になるんだよなぁ..」


 「やっぱり私も一緒に行こうかな? 心配になって来た」


 「だめだよ、ライスは。私、ライスに何かあったら嫌だもん。ライスはここで私たちの帰りを待ってて。絶対、何とかするからさ」


 「ほんとに? リジがやっとやる気になった」


 リジの顔を覗き込んだライスの目はいたずらに笑っていた。


 「も=っ! だましたな!」


 「あはははは」


――

 ゼルド国の氷壁外では白い魔獣人討伐の準備が行われていた。複数のソリには資材の入った荷物が積み込まれた。


 その様子を流氷の隙間から伺い見る黒い影があった。

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