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後編

 どうも皆様ごきげんよう。

 立てば妖精、座れば天使、歩く姿は女神様、とか言われ始めたフィーリア=ヴァシル=ズィ=デュナスティ十四歳です。

 本当に誰ですか、コレ最初に言い出したの。ちょっとここ来て正座して下さい。

 お願いだから無茶振りな夢を見すぎないで。せめて人類として扱って。過剰な期待が重すぎます。早く人間になりたぁーい!!


 ――コホン。取り乱しました、失礼。

 さて、十四歳と申し上げた通り、私が絶望の未来(推定)を退けるべく奮起してから、あっという間に九年もの月日が流れました。

 時間すっ飛ばしすぎだろうって? いや、でも、これといって特に何も起きなかったんですよね。こう、フラグになりそうなイベント的な事が。


 しかし、私個人にはこれといった変化は無かったものの、周囲というか家族には色々と変化がありましたので、まずはそちらをご報告しておきます!




 成長するにつれて、ますますお父様に良く似てきたアレク兄様ですが、甘く優し気な顔立ちにクールビューティーなお母様のキリッとした雰囲気も漂わせており、まさしく正統派の王子様。軽く微笑んだだけで女性達がバタバタ倒れていくと専らの噂です。


 実は二年前にうちの国の筆頭公爵家の御令嬢と結婚してるんですけどね。それでも各国から第二妃希望として、お見合いの絵姿や書状が未だに送られ続けてるんですから、本当に凄いと思います。アレク兄様の人気も、諦めないお嬢様方のガッツも。

 まぁアレク兄様もお父様と同じく側室は持たない主義を公言してますので、諦めた方が良いですよ……? と肩ポンしたくなっちゃうんですが。


 お父様から幾つか政務を引き継ぎ始めており、そのどれもが決して社交辞令などではなく高評価で、皆口を揃えて「王国は次代も安心だ」と頷いてます。



 ヴェラ姉様はアレク兄様とは逆に、お母様ととても良く似た顔立ちで、けれどお父様の醸し出すけしからん色気も受け継いだようです。つまり妖艶な美女です。

 溜息一つ吐けば殿方がこぞって憂いを晴らそうと取り囲みますし、流し目一つしようものなら同性までドキドキと顔を赤らめてしまいます。


 お母様の母国の第三王子が昨年に婿入りしてきたんですが、婚約者時代からヴェラ姉様の信奉者(男女問わず)とは熱いバトルを繰り広げてましたね。というか、結婚した今でも割と頻繁に繰り広げてますね。人気者のお嫁さんを持つって大変です。

 でも何だかんだでヴェラ姉様はお義兄様とラブラブですので、そんなに心配はしてません。ヴェラ姉様のツンデレにお義兄様はデレデレですし。お互いの身分もあって政略結婚と思われがちですけど、実際はお義兄様の猛アピールによる粘り勝ちだったからなぁ。色んな意味でつよい。



 ディー兄様は、見た目も雰囲気もお母様似。とはいえ男性ですし、鍛え上げているので精悍な印象です。

 あと表情があまり変わらないので、キャアキャア囲まれる感じではありませんが、遠くからそっと憧れの眼差しを送るガチ勢のファンが多いと私は知ってますよ、ふふふ……!


 尚、お嬢様方には囲まれなくても、騎士団のガチムチ男子達には良く囲まれてます。男が惚れる男、っていうんでしょうか。いえ、ボーイズがラブ的な、薔薇の花が咲き乱れちゃう感じではなくて、熱い少年漫画系のやつですので御安心を。年配には疎まれていた髪と目の色も、同世代では忌避感が薄いみたいで何よりです。

 双剣の使い手として名を上げ、騎士団では若くして一個師団を任されていますが、あと数年もすれば副団長の一人に最年少で抜擢されるのではと評判になってます。


 お父様の腹違いの妹殿下が他国に嫁いで生んだ姫君、つまり私達にとっての従姉妹と婚約してるんですけど、信仰心が物凄く強い方なせいか、お会いする度に涙目で拝まれそうになるので、むしろこっちが涙目です。

 普通の姉妹らしくしましょう? ね? ね?



 お母様は相変わらず麗しの美魔女ですし、お父様も相変わらずのイケオジっぷりです。しかし同時に、家族の中では最も変化のあった二人でもあります。


 何と! お母様が! 懐妊しました!!


 その上更に、生まれた赤ちゃんは、まさかの双子でした。ふわふわの銀髪とエメラルドの瞳が、それこそ天使のように可愛い、一卵性の男の子と女の子です。新たな王子と姫の誕生に、城中どころか国を挙げて祝賀モードになりましたとも。勿論、大喜びっぷりでは私も一二を争えると思いますけどね!


 ちなみに生まれたのは三年前なんですが、いやー、アレク兄様やヴェラ姉様あたりから甥っ子か姪っ子が出来た報告をされるより先に、弟と妹が出来ちゃうとは思ってませんでした。医療が発達した現代日本ですら危険な高齢出産でしたから、産まない方が良いのではと心配する声も相当多かったんですが、母子共に無事乗り越えてくれて本当に良かったです。

 公の場ではビシッと決めてますが、プライベートな時間ではお父様もお母様も、今やすっかりおしどり夫婦&子煩悩となりましたよ。




 ――こうして家族が増えて、ますます楽しく賑やかに皆と過ごしていると、ふと懐かしい面影が脳裏を掠める事があります。


 優しく、けれど時には厳しく、家族全員を見守ってくれたお爺ちゃんとお婆ちゃん。

 共働きでどんなに忙しくても、一杯の愛情で包んでくれたお父さんとお母さん。

 喧嘩をした事もあったけど、悩み事や相談はいつでも聞いてくれたお兄ちゃん、お姉ちゃん達。

 甘え上手でちゃっかりしてて、少し生意気で、うんと可愛かった弟と妹。


 幼い頃にしっかりと思い出した筈だった、前世での家族の記憶は、更に成長するに従って、今度は少しずつ薄れていきました。今では随分とおぼろげで、ただ慕わしさだけが、ほんのりと残っています。

 思うに、小さかった時の私は家族の愛情に飢えていて、かつてのそれに縋っていたのでしょう。でも、今の家族がどんどん大切になっていくにつれて、やっと手放す事が出来たんじゃないでしょうか。


 前世の家族と同じくらい大好きになった、今世の家族。そんな皆と一緒に、このまま平和で心穏やかな日々を送って…………いけるんじゃないかな、と最近は密かに期待してたんですが、九年目にして大事件が起きてしまいました。

 そう、十四歳になったここに来て、私は今、戦々恐々と震えております。というのもですね、実はこれから顔合わせなんですよ。



 婚約者、候補との。



 先程、兄姉の結婚及び婚約事情についても近況説明で触れましたが、当の私自身はといえば、今まで婚約者がいませんでした。王族に限らず高位貴族なら、普通は年齢一桁の頃から宛がわれてもおかしくありません。現に兄様達や姉様も、その位で婚約者が選別されていました。

 しかし、私だけ婚約者がこの年になるまでいなかったのは、余程の問題人物として敬遠された――というような理由では無く。


 「「「「「フィーリアは、生半可な相手には嫁がせない」」」」」


 と、家族が満場一致で声を揃えて言い切ったからです。親馬鹿、兄馬鹿、姉馬鹿ここに極まれりです。余談ですが、周りに居た執事やメイドや騎士達までウンウンと頷いていたので、使用人馬鹿も極まってます。

 皆ちょっと落ち着いて欲しい。悪役ルート回避してたら嫁き遅れエンドに直結するとか、私の二度目の人生がイージーモードなのかハードモードなのか分からない。


 やめてえええええ無駄にハードル上げないでえええええ!

 見た目は有難いことに極上だけど、中身は普通の女の子でしかないのおおおおおお!!


 私はアレク兄様のように十ヶ国語を流暢に話したり、国政について大臣達と対等に議論を交わせるような頭脳も持っていません。

 ディー兄様のように剣も槍も弓も扱えなければ、素手で十数人を相手に戦って勝ち抜けるような戦闘能力も持っていません。

 ヴェラ姉様のように感極まった聴衆を号泣させてしまう音楽の才能もありませんし、淑女の鑑と讃えられるような気品溢れる所作も程遠いです。

 つまり、残念な張りぼて美少女なんですよ。美少女というだけで価値観が底上げされているだけなんですよ! 外見しか取り柄の無いヘッポコ妹でごめんなさい!


 いや、一応自分でも出来るだけ精一杯、勉強だって運動だって礼儀作法だって頑張ったんですけどね? 頭や体の作りも安定のご都合主義よろしくハイスペック仕様にして貰えたのか、前世とは比較にならないくらい格段に飲み込みも早かったですし、少なくとも平均以上には出来てると思うんですけどね?

 でもそれは精々が中の上から上の下、ギリギリ辛うじて上の中に手が届かない事も無きにしもあらず、位が関の山です。それに比べて兄様達ときたら、得意分野は上の上どころか超特上みたいなチートっぷりなんです。

 勿論、努力と研鑽を積み重ねているからこその実力ですし、そういった所も尊敬してるんですが。


 ……そんな兄姉達だけでなく両親からも溺愛されて、些細な事でさえ褒められまくっているとなれば、そりゃあ噂が噂を呼んで期待値もガンガン上がってしまう事でしょう。

 まして、私は相変わらず過保護な家族によって社交の場に出る機会が最低限になっているので、想像が膨らむ事この上無しの状態です。


 という訳で、自国他国問わず殺到したらしい希望者達を、それはそれは厳しく篩にかけ、むしろ候補を残す気あるのかって言われそうな位きびっし~~~く篩にかけまくった結果、どうにか三人が残ったそうな。

 大丈夫? その人達、本当に人間かな? うっかり人類を超越しちゃったりしてない? あとウチの家族が誠に申し訳ありませんでした。

 ていうか候補から落とされた人達もごめんね! こっちの基準が大分おかしかっただけだからね、多分! 強く生きて!!




 かつての人生では、年齢イコール彼氏いない歴、という悲しい状態のまま幕を下ろしてしまった私です。

 いくら勝ち組確定の美少女な姿に生まれ変わったとしても、恋愛スキルが底辺な中身まではそう簡単に変わりません。しかも前述の通り、家族が鉄壁ガードをガッチガチに固めてくれたものですから、年の近い男の子とのエンカウント率なんて、ツチノコの方がよっぽど見つけられるんじゃないかな? ってレベルです。


 要するに、免疫が全く無いんですよ!


 だというのに、これまでの短いようなそうでもないような、とりあえずひたすら濃くはある人生経験から推測するに、候補者はトンデモハイスペックな有望株イケメンが揃ってる気がしてなりません。

 そう。乙女ゲームだったら攻略対象に、小説や漫画だったらヒロインの相手役になれそうなイケメン達が。

 そして――婚約者になる私を、当て馬で噛ませ犬な悪役展開へと導いてしまいそうなイケメン達が。



 どう考えても不吉な予感しかしないじゃないですかヤダー!!



 乙女チックで運命的な出会いや、心ときめく甘酸っぱい青春に憧れは全く無い、といえば嘘になりますが、そこに生死が関わってくるとなれば話は別です。

 そんなスリルとショックとサスペンスがもれなく付いてくるようなお相手では無く、ゆったりほのぼの過ごせそうな、縁側でのんびりお茶しちゃうような平和なお付き合いを私は希望したいんです! まぁ西洋ファンタジーのテンプレな白亜の王城に縁側とか無いですけど!



 迫りくる脅威に怯える心を少しでも癒そうと、双子の弟妹達の所へ行って、魅惑の柔らかほっぺをそっとツンツンしたり、抱っこからの高い高いでキャッキャ笑わせたりと、ひたすら現実逃避タイムに勤しんでいたものの、お父様から遣わされた筆頭執事の爺やに終了のお知らせを告げられました。


 ドナドナ気分で護衛の騎士達と共に廊下を歩く足取りが、我ながら重いです。

 うぅぅ、不安と緊張で胃が痛い。しかし、ここで不用意にお腹を押さえて蹲ったりしようものなら、速攻で宮廷医師の元に運び込まれて大騒ぎの大惨事になってしまうのは目に見えています。

 ドタキャンする度胸もないんですから、耐え忍ぶしかありません。つらい。



 ――悪役回避を目標に掲げてから、早九年。

 我儘横暴やりたい放題な性格にはなっていないつもりです。家族との仲も良すぎる位に良好です。使用人達に怯えられたりもしていない筈ですし、取り巻きを作ったりもしていません。

 バッドエンドになってしまいそうな要素は極力排除してきたと思うんですが、かといって絶対に大丈夫だという保証がある訳でも無く、どこまでも希望的観測です。


 破滅フラグが、とうとう年貢の納め時だとばかりに降臨したのか。

 それとも、心穏やかに過ごせそうな理想のタイプと出会える奇跡が起きるのか。


 (嗚呼、神様……私はただ、平穏無事に長生きして天寿を全うできる人生を送りたいだけなんです……!)




 どうか、どうか――俺様スパダリとか腹黒ヤンデレとか不思議ちゃん系天才とかの、フラグ満載そうな王道お約束ヒーロー達じゃありませんように~~~~~~!!!!!




 微かに震える手を胸の前できゅっと握り締めながら、私は胃をキリキリさせつつ全身全霊全力で祈りを捧げました。


 ……こうやって祈る事がフラグなのでは? という発見には、そっと気付かないフリをして。







 そんな私は、全く知りませんでした。

 この世界のどこか遠く。空の彼方とも、地の果てとも、海の底ともつかぬ、遠い遠い遠い場所で。


 「ふふふっ。面白そうだから~、色んな縁を集めちゃおう~っと」


 ――と、大層楽しげな声が呟かれていた、なんて事を。

フィーリア視点はこれで一旦完結です。

次からは周囲視点になります。


活動報告にフィーリア(14歳時点)のキャラデザを載せてみました。

イメージと違ってたら申し訳ありません´∀`;

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