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となりの拡ちゃん☆【なろうVer.】  作者: yutaka
☆ 番外編・そのあとのふたり
15/15

結婚しました!

最終話です。

「うぅ~~ドキドキするぅ」


ここは新婚旅行先のホテル……ではなくて、これから2人で暮らしていく新居のリビングだったりする。

普通は式のあと新婚旅行に出かけるんだろうけど、(ひろむ)ちゃんの仕事の関係でどうしてもすぐには行けなくて。

拡ちゃんはどこかホテルに泊まってもいいと言ってくれたんだけど、私は自分たちの部屋が落ち着くからって帰ってきてしまったのだ。


綺麗な夜景のホテルで過ごすというのも魅力的だったけど、色々と思うところがあって。

お母さん達はそれでいいのかって聞いてきたけど、ほら、ねえ?

やっぱり次の日もことを考えると、自分の家のベッドのほうがいいかな~なんて思っちゃったのよね。

考えすぎなのかな?


結局新居に戻ってきたのは日付の替わるころで、拡ちゃんはシャワーを浴びてる。

私は先に入って、今はリビングに置いてあるソファでソワソワと拡ちゃんが出てくるのを待っている。

ソワソワとドキドキと式を挙げたフワフワな気持ちがずっと続いてて落ち着かない。

それにこのあとのことを思うと怖いような期待してるような恥ずかしいような、色々な気持ちもあって余計に落ち着かない。


拡ちゃんは私よりも年上で、きっと経験者だから別にどうということはないのかな。

慣れていない初心者な私に気を遣うくらい余裕なのかもしれない。


「もう! ダメダメ!」


ペシペシと頬っぺたを手の平で叩いてそんな思いを吹き飛ばす。

拡ちゃんとお付き合いをしてもう何年も経つっていうのに、ときどき自分が拡ちゃんの色々な初めてではないことにちょっとだけ胸が痛む。

仕方ないことと割り切っていると思うのに、どれだけ私は独占欲が強いのかと思うときがある。

それだけ拡ちゃんのことが好きで、好きだったけど報われなかった時間が長かったから未だにそんなことを思うのかな。

ちょっと自己嫌悪。


「ううん、きっと大丈夫!」


そうよ! 今日からは名実ともに拡ちゃんと夫婦になったんだから、なにを迷うことがあるっていうの。

きっとこれからはそんなことを思い出すこともないくらいに、楽しくて嬉しいことが待ってるはずなんだから。


「なに気合入れてんだよ」

「!!」


いつの間にか拡ちゃんが戻ってきてて、ソファに座ってた私を真上から見下ろしてた。

お互い逆さで目が合う。

ソファは入り口のドアに背を向けて置いてあるから、拡ちゃんが入ってきたのに気づかなかった。

いや~~恥ずかしい。


「べ、別に気合を入れてたわけじゃないもん。色々と思い出してただけで……」


言い訳をしているうちに拡ちゃんが濡れてる髪を拭きながら私の隣に座った。


「本当に悪かった。本当ならすぐにでも新婚旅行に行きたかっただろう?」

「もう何度も謝ってもらったよ。大丈夫だよ、行けないわけじゃないんだから。ちょっと後回しになっただけじゃない」

「そうだけど、颯子(そうこ)に我慢させてる」

「拡ちゃん……」


拡ちゃんは私に10年という年月を待たせてしまったことを、とっても気にかけてくれてる。

だから私がなにか我慢してると感じると、とっても過剰に反応しちゃうのだ。

気にしなくていいと思う反面、そんな気遣いが嬉しかったりもするのは内緒。


「颯子、今日は疲れただろう」

「そんなことないよ。ずっとワクワクして待ってたことだったから、全然疲れてなんかないよ。拡ちゃんこそ疲れてない? 私以上に参列の人の相手してたでしょ」

「オレの会社絡みの相手だったし、オレのほうが年上なんだから当たり前だろう」

「お母さん達がウチの親戚に、私が子供の頃から拡ちゃんのこと好きだったって話しちゃったから。皆揶揄(からか)い半分に拡ちゃんに話しかけてきてたんだよ。もう……」

「そういえばそんなことも言われたな。でも皆、よかったよかったって喜んでくれてたぞ」

「そうかもしれないけど……ごめんね、拡ちゃん」

「別に颯子が謝ることじゃないだろう」

「だって……」


私が小さい頃から好きだったせいで、拡ちゃんが皆に揶揄われるなんて申し訳ないというか、恥ずかしい思いをしちゃったんじゃないかとか考えちゃうわけで。


「颯子」

「ん?」


チュッっと拡ちゃんが触れるだけのキスをしてくれた。


「今日から一緒に住むわけだけど、これからもよろしくな」

「わ、私のほうこそよ、よろしくお願いします。私、家事とかお料理とか上手くできるかわからないし。お母さんに教えてもらったけど、全然褒められるようなレベルじゃないから。きっと拡ちゃんに迷惑かけると思う」

「しばらくは共働きなんだし、オレも手伝うからそんなに気負わなくていいぞ。颯子は今まで実家暮らしだったんだし、色々わからなくても仕方ないさ。これからゆっくり覚えていけばいいんだから」

「うん……ありがとう、拡ちゃん」

「奥さんを大事にするのは当たり前だろ」

「お、奥さん!?」

「世間ではオレは旦那さんで、颯子は奥さんだろ? 新妻とも言うか」

「に、新妻!!」


いや、なんか響きがエロイというか……ひゃあーー!


「なに真っ赤になってんだ」

「え? べつに深い意味は……あ!」

「颯子」


肩を抱かれて、拡ちゃんのほうに抱き寄せられた。

湯上りの拡ちゃんの顔が近くて、濡れた髪が男っぽくて。

私の心臓は今にもはち切れそうなほどドキンドキンと動いてる。


「拡ちゃん……」


拡ちゃんが、コツンとオデコとオデコをくっ付ける。


「10年待てなくてごめん」

「え?」

「颯子はオレのために10年も待っててくれたのに、オレは3年も待てなかった」

「10年も待たれたら、私が待ちきれなかったよ。だから拡ちゃんは何年も待ってなくてよかったんだよ。これから30年50年って一緒にいてくれればいいんだから」

「そうだな」

「10年待ったかいがあったよ、拡ちゃん。こうやって拡ちゃんのお嫁さんになることができたんだもん。私が待った10年は無駄じゃなかったんだから、もういいんだよ拡ちゃん。もう気にしないで」

「颯子」

「大好き、拡ちゃん。拡ちゃんのお嫁さんになれて、私は幸せだよ」

「颯子」


拡ちゃんが私を抱き上げて、寝室に歩いて行った。


「好きだよ、颯子。愛してる」

「拡ちゃん……」


長い長い片想いで、報われることはないかもしれないとあきらめてしまいそうなときもあったけれど。

それでも……ずっとあきらめずに想い続けていて本当によかったと思えた。


『よかったね』と、自分で自分の想いに言葉をかける。


「私も愛してる。拡ちゃん」



次の日、今日までお休みを取っていてよかったと、目が覚めたらすでにお昼を過ぎていたベッドの中で思った。


もちろん、拡ちゃんの腕の中で目が覚めたんだけどね。





これにて完結です。

ありがとうございました(^-^)/

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