表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強暗殺者、聖女に詰められ短足猫になる  作者:
第2部-焔牙騎士滅亡
16/155

再会-震える虎と丸い狼

 

 平和そのものの午後。公園の芝生の上で、僕は自分の置かれた境遇を呪うことも忘れ、日差しの温かさに微睡んでいた。

 今の僕は、銀髪の死神ではない。アイリス姉さんに「ルウくん」と呼ばれ、鈴のついた赤いリボンを首に巻かれた、体重わずか数キロのマンチカンだ。


 だが、その平穏は、聞き覚えのある「音」によって破られた。


 ――カツ、カツ、カツ。


 規則正しく、一切の迷いがない鋭いヒールの音。その足音が近づくにつれ、公園の騒がしさが潮が引くように静まり返っていく。本能が、かつての「最悪の終焉」としてのセンサーが、最大級の警戒を告げた。


「にゃ……?(この威圧感……アイリス姉さんに匹敵する、氷のような『理』の気配……!)」


 その人物が引くリードの先には……。


 真っ赤なリボンを首に巻き、自身のアイデンティティであるはずの「虎のような咆哮」を出そうとして、「キャン! キャンキャン!」と、震える甲高い声を上げる、茶褐色の小さなチワワの姿があった。


 白地に赤の斑点。クリクリとした大きな瞳。そして、生まれたての子鹿のようにプルプルと小刻みに震える、小さな小さな、あまりに小さな茶褐色の塊。


「キャン……! キャンキャン!!(おい、相変わらずだな、銀髪の便利屋! てめえ、その短い足は何だ! 笑わせるんじゃねえぞ!)」


「(……ティル、いつまで無様に震えているんだ。そっちこそ笑わせるなよ、猛虎が聞いて呆れるぞ。)」


 ……間違いない。

 声は高いが、その傲慢なまでの口の利き方、魂の波長。

 かつて三日三晩、僕と死闘を繰り広げた「轟く赤雷」こと、ティルその人だ。


「あら、ルン! 今日も散歩?」


 アイリス姉さんが、ふわりと花が咲くような微笑みを浮かべて手を振る。するとルンさんは、眼鏡のブリッジをクイと押し上げ、事務的な、しかしどこか慈しむような視線をバッグの中へ落とした。


「ええ、アイリス。ティルはいつも通りよ。今日だけは少しばかり『破壊衝動』が強すぎたので、今は私のバッグの中で、社会の規律というものを骨身に刻ませているところよ。……先ほども、鳩を追いかけようとして公道での速度超過ダッシュを試みたので、厳重注意をしたところです」


「まあ、元気な子ね。うちのルウくんは、すっかりおとなしくなっちゃって。ほら、ルウくん、お友達よ。ご挨拶して?」


 アイリス姉さんの「聖母のおっとりとした情けに訴える狂気」と、ルンさんの「冷めた鉄のように感じる狂気」。


 二人の「最強の飼い主」が並び立った瞬間、公園の空間密度が跳ね上がり、近くの噴水の水が圧力で一瞬止まったように見えた。僕とティルは、その絶対的な支配者たちの足元で、ただの「可愛い愛玩動物」として振る舞うことしか許されなかった。


 だが、僕は脳内でとある計画をしていたが、これは別の話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ