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《第四章 二節》 外界




 「えっ?あっ、闇夜(やよ)、さんも一緒に行くんですか?!」


 彼女の名前が言い慣れないために少し噛みそうになった。一応は噛まなかったが間抜けな声を出してしまった時点でアウトな気がするのは何故(なぜ)だろう。


 「ええ、あなたと一緒に行こうと思うわ。あなたの不安を拭えるし、(わたくし)ここ数年外に出てなかったから良い気分転換になるもの。誰も不幸を被ることはないですし一石二鳥だとは思わなくて?」


 ここ数年ってどういうことなのだろう。これまで彼女が買ってきていたと思っていたのだがその事実を知り、あの食料の期限がずっと先であることが不思議になってきた。―――いや、不思議なのは今に始まったことではなかった。


 「では、早速行きましょうか。ノルマは達成したのでしょう?早く準備をしてしまいなさい。」

 「え!今行くんですか!確かに終わりましたけど闇夜(やよ)さんの貴重な時間が・・・」

 「(うるさ)いわね。(わたくし)あなたも決して暇人ではないでしょう?出来るうちにやるべきなのよ。食料問題はいずれの生物にも当てはまることなのだから。」



 * * *



 彼女は真っ黒なフード付きロングコートを着て門の前で立っていた。俺は着替えとして持ってきたものの中からマシなものを選んで着ているつもりだったが・・・これで良かったのか不明だ。


 「あら、現代の女子並みの準備の遅さじゃない」

 「遅くなってすみません。でも一つ訂正させてもらいますと、今の女子は十分以上かかる人が殆どらしいですよ。因みに俺は七分五秒で集合したのでそれよりは良いと思いますが。」

 「そうなのね。随分と口が回るようで。ならもう少し早くしてもらえたらその貴重な時間が失われなかったと思うけれど?」

 「このくらいの時間は誤差の範囲だと思います。ここで追求すべきことではないように思えます。」


 そんな事を言いながらも俺らは森の中に足を進めた。ザクザクという足音が二人分鼓膜に響く。


 「あなたが来たのはあちらの方。門の反対側ね。そしてこれから私たちが向かうのは正門からまっすぐ進んだ方の街ね。」


 そう言われても来た道に関してはよくわからない。あの時の俺は疲弊しすぎて記憶することなど吹っ飛んでいたのだから。


 「これから行くのは“オータンリーフタウン”というのだけれどあなたは知っているのかしら?」

 「いいえ、俺自身日本の地形に疎くて。ただでさえ俺の守備範囲は家の中だったんで」


 本当のところは学校と家、あとは週一でスーパーとの行き来だったからそれ以外自分の街のことを知らない。知らない、というよりあの親が意図的にバレないようにしていた可能性のほうが高い。


 「ああ、・・・確かにそういうこともあるわね。」


 そんなことを話していると木々の間から光が見えた。


 「着いたみたいね。ここが“オータンリーフタウン”よ。」


 彼女の声とともに目の前が(ひら)けた。




 


       

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