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山荷葉せんぱいと凡人くん  作者: 成浅 シナ
9/18

らぶらぶカップル?

 次の日の昼休み。

 俺は昼飯を買いに行くこともなく授業が終わってからずっと机に突っ伏していた。

 今日の部活は休み。

普通なら平日の唯一の休みの日であるこの日を喜ぶべきであるのだろうけど俺の心は曇っていた。

「せっかく先輩との距離も縮まりかけていたのに……」

 一日会わないだけで関係がリセットされてしまったら……

 そんな根拠もない漠然とした不安に駆られる。

 無意識に溜息が漏れる。

 なんでこのタイミングで休みなんだ…

 しかも今朝がた葉音先輩から届いたメールには部活も休みだから桜ヶ岡先輩の特訓も休みにするという旨の内容が書かれていた。なんでも『心の休息も必要だよ!』ということらしい。

 一週間ぶりの何もない休み。

 部活がなくても葉音先輩なら特訓をすると言うだろうと考えてたため放課後の予定を空けていた。だから、急にないと言われても……

 今日のために積読していた本もゲームも片づけた。

 本当に今日はどうしよう。アニメショップにでも行こうかな…

 それとも今まで読んだ本を再読しようか…

「はぁ……」

 無気力を感じ、再びため息が漏れる。


「なーに、昼飯も食べないでため息ついてんだ?早くしないと昼休み終わるぞ?」

 顔を上げてその声の主を確認しなくても誰だかは分かった。

 隣のクラスにいるはずの幼馴染はそのまま俺の一つ前の席に座り、パンか何かの袋を空けた。

「ほっといてくれ。俺は今日の暇な放課後の過ごし方について考えてんだから。お前みたいな忙しいやつに俺の気持ちが分かってたまるか。」

「また意味の分からんことを……っていうか今日お前暇なの?だったら久しぶりに遊びに行かね?」

 はぁ?なんでサッカー部の一年エース様が今日の放課後に暇してんだよ。

「…サボりか?」

「ちげーよ!!サボったら先輩に殺されるって!今日は休みなの!今日二年生は職業体験学習で顧問も引率でついて行ってるから自主練。」

「自主練=休みってこと?」

 頭をあげてジト目を向ける。

 すると達也はコロッケパンを口にくわえながら『うっ』っと身じろぎした。

「ちゃんと練習するって!でもたまには休息も必要だろ!な?暇ならあそぼーぜ!」

「まあ、お前がそう言うならいいけど。俺はサッカー部の事情には関係ないし。」

「お前たまに俺に冷たくない!?」

「で?どこ行く?」

 机に置かれたパンの袋を空けかぶりつく。

「無視かよ!?」

違う、無視ではない。このままこの話と続けても終点が付かなくなると判断しただけだ。

達也の文句を聞き流しながらパンをもぐもぐと咀嚼する。

さすが購買の数量限定メニュー。

初めて食べたがこれが人気な理由も分かる気がする。

「なあ…」

 そこで達也が俺を見つめる。その表情は真剣そのものだ。

 少しふわっとした短髪、部活のときはコンタクトだが今は淵の太い黒の眼鏡を掛けている。

 そんな俺とは対照的な見た目のイケメンに見つめられると男同士だというのに心臓がドキリとする。

「なっ…なんだ…」

 まるで告白されるかのような雰囲気。

 ま…まさか…達也は俺のこと……

「お前なにしれっと俺のパン食べてるんだ!?しかもそれ!限定メニュー!!」

「チッ…バレたか…」

「そりゃ気付くわ!せっかく授業が終わってからすぐに購買までダッシュしたのに!こうなったら意地でも今日の放課後付き合ってもらうからな!!ハンバーガーでもおごってもらわなきゃわりに合わねー!セットでな!!」

「ちょっ!それこのパンの三倍くらいの値段……」

 そこでクラスが騒めいていることに気付いた。


『ちょ…ちょっと、さっき達也君が由真君に付き合ってもらうって言ってなかった!?』

『聞いた聞いた!まさかあの二人出来てんの!?』

『私達也君のこと狙ってたのに―!まさか由真が恋のライバルだったなんて―!』

『は…早くみんなに知らせなくっちゃ!!』

「おい!ちょっと待てーーー!」

 あらぬ噂が広まってしまう!

 そんなクラスメイト達の誤解を解くには昼休みの残りの時間を全て使う必要があった。


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