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昨日も更新出来ず、お待ち下さっていた方はすみませんでした。

少し速度が落ちて来まして毎日の更新が難しくなっています。更新出来ない日にお待ち頂くのも申し訳ありませんので、今後は日、火、金を確実に更新する日とさせて頂きます。

それ以外の日でも出来るだけ更新していきたいと思っていますが不定期になりますので、ご了承頂ければと思います。


それでは以外本編です。

俺が三人に通常の[赤赫奇蟲]素材でなく、[真紅赫奇蟲]の上位素材を半ば無理矢理渡したのには訳があった。


ひとつは不本意とは言え、契約を反故にしてしまった事に対する埋め合わせ。

あの状態の彼らでは萎縮してしまって下位素材しか選択しようとしなかった為に押し付ける形で渡したのだ。


もうひとつは恩を売り付ける目的。

本来、彼らの実力では[赤赫奇蟲]の素材ですら入手は困難だっただろう。そんな彼らの依頼に必要な報酬とは別口で、より上位の素材を一人ずつに渡したという事は、思いもよらない収穫だった筈だ。

棚から牡丹餅的に収穫を得た彼らはさぞかし俺に対して恩を感じるだろう。人に好感情を持たれるという事は、結局回り回って自分に返ってくる。

今後、なにかあった時に俺に対して好感を持ってくれている知り合いが居るのと居ないのとでは状況が大きく変わってくるからだ。


最後に宣伝としての目的だ。

俺が渡した[真紅赫の戦闘奇蟲の外骨格]は防具の素材として使用すれば、きっと彼らが着用している装備品よりも強力なものになるだろう。

命を賭ける冒険者だからこそ、自身の命綱となる防具には最高の素材を用いたいと考える筈だ。

彼らが言うには[赤赫奇蟲]でさえ強力な魔物で、[真紅赫奇蟲]に至っては存在自体も知らなかったというほどなので、そんな装備を揃って身に付ける事になれば、それだけ彼らの知名度は上がる。

彼らの知名度が上がれば、[真紅赫奇蟲]から採れた染料で染めた布地やその布を使って作った服のいい宣伝になるだろう。

結果的には彼らに恩も売れて、広告塔としての役割さえも担って貰えるのだから、俺に損は無いと考えていた。



「それでは目的も達しましたし俺たちは村へ帰ろうかと思います。」


「なっ…!ヴィヴィアンお姉さまはもう発たれるのですかっ!?」


「…ラフィア、私達だって依頼を請けて来ているのですから街へ帰らなければ。殆どヴィヴィアン様のお陰ですが、依頼も無事達成しましたし。」


「そんなっ…お姉さまを置いて帰るなんてッ…!!」


「別にラフィアがヴィヴィアンさんに付いて行きてぇってんなら好きにすりゃいいが、お前は冒険者を辞めるのか?チームも解散だぞ?」


「うっ…そうだな……ヴィヴィアンお姉さまっ…お姉さまとお別れするのは身を切られるよりも辛いけど、俺は街へ帰りますっ…それで!…お姉さまの住んでいる村を教えてくれますかっ?…絶対に会いに行きますからっ!!」


俺もこのまま別れてしまうのは本意では無い。せっかく恩を売っているのだし、初めて出来た冒険者の知り合いなのだからこの関係性を維持したいと思った俺は素直に答えた。


「俺は今メイと出会ったシルフィード村に滞在していて、此処から徒歩で東へ三日程の場所にある。来る際はオニバカエデの大樹を目指すといい。」


「わかりましたっ!絶対に行きますからっ!!ヴィヴィアンお姉さまも俺たちの拠点にしている街に来ることがあったら教えてくださいっ!俺たちは此処から北東の方向へ七日ぐらい進んだタフタの街に居ますから!!この辺りでは一番大きな街だからすぐにわかると思います!」


「わかった。行くことがあったら必ず顔を出すよ。」


「本当ですかっ?!ありがとうございます!絶対ですよっ!」

「ヴィヴィアン様。本当に何から何まで御迷惑をお掛けしましたが、ありがとうございました。」

「ヴィヴィアンさん。アナタが居なかったらオレたちのチームは壊滅していた。チームリーダーとして改めて御礼を言わせて頂きたい。本当にありがとうございました。」


三者三様に礼を言った彼らに手を振って、俺たちはその場を後にした。


「なんか半日くらいしか経って無いのに疲れたな…」

「ずっとヴィヴィさまが戦いっぱなしでしたからね!お疲れ様です!!」


メイはそう労ってくれたが、俺の疲労の原因は其処ではない気がした事は黙っておいた。


「…まあ、そうだね。村に帰ろうか…」

「はいっ!」


そうしてまた、野宿を一泊挟み翌日の昼前にはシルフィード村へと帰って来たのだった。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



その後



魔物の素材を抱えて三人はタフタの街へと帰って来ていた。素材の外骨格が大きかったため若干ゆっくりとした足取りになり、帰りは八日程掛かってしまったのだった。


このタフタの街というのは典型的な城下町の様相を呈しており、ラフィアが言った通りこの周辺では最大規模の都市である。

街の中心に見えるのがメルトン伯爵のお屋敷、というより見た目は完全に城で、その周りを取り囲むように貴族の邸宅が建ち並ぶ区画がある。そこから程なくして、高級商館や貴族を相手にした店が軒を連ね、裕福な商人や街人の家屋がある住宅街となる。

その更に外側に拡がった先がようやく一般的な商業エリアや住居地であり、常にお祭りのような活気に満ち溢れていた。

そんな賑わいを見せる一角に三人の目的地はあった。


「ようやく帰って来れたな!ちゃっちゃと報告済ませて飲みに行くぞ!!」

「ええ、そうですね。依頼の完了報告と納品は早い方が良いですから。」

「…」

「なんだラフィア!浮かれねぇツラしてんなー。この納品だけでも相当な稼ぎになるんだゼ!それに加え上位素材も持ってんだ。幾らになるかケントーもつかねぇ!これも全部ヴィヴィアンさんのお陰だろうがよー!」

「あっ!フルグレインの馬鹿っ!ラフィアにその話は禁句ですよ!!」

「しまったっ…!!ら、ラフィア…」


「………ゔぃっ!!ヴィヴィアンお姉さまぁぁああああーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


「あぁーもうっ!フルグレインはもう少し考えてから喋ってくださいよっ!!」

「ワ、ワリィ…だってよー儲けが幾らになるかと思ったらつい…」


ヴィヴィアンたちと別れてからのラフィアは常にこの状態だったのだ。

いくら宥めすかしてもいつヴィヴィアンに会いに行くか、いつヴィヴィアンが会いに来てくれるかと言った事ばかり言うため、ラフィアの前ではヴィヴィアンという単語は禁句になっていた。

そんなラフィアを宥めながら三人は目的の建物【冒険者組合所(ギルド)】へと入って行ったのだった。


組合(ギルド)の一階は組合員同士の情報交換の場という建前で、実質昼夜問わず酒が飲めるパブの様になっていた。

そこに顔馴染みや後輩冒険者がちらほら居るのが見える。

声を掛けようか悩んだ所で此方に気付き、相手が立ち上がった。


「フルグレインじゃねぇか!!無事だったか!今回ばかりは厳しいかと思ったぞ!」

「フルグレインさん!みなさん!ご無事だったのですね!」


「あぁ、なんとかな。」

「それでっ?赤の悪魔は斃せたのか?」


余りにも高価で有名な赤の染料の素となる魔物を狙って、返討ちにされた冒険者は数知れない。

しかし、それは駆け出しや中堅所の冒険者が無謀にも挑み、殺されるからだ。熟練の冒険者や上位の冒険者ならば難なく斃せるチームも少なくはない。尤も、魔物が一匹であり、尚且つ[赤赫奇蟲(・・・・)]で在ればだが。

そのため報酬に目が眩んで狙う者も勿論居るが、討伐する事により上位の冒険者だと示す為の登竜門として挑戦する冒険者が後を絶たないのだ。そうして敢え無く帰って来れない冒険者が多い事から、冒険者仲間では赤の悪魔と呼称されるようになっていた。


「いや、オレたちだけじゃやられてたな。なんせラフィアの刺突ですら通らない相手だったんだ。甘く見過ぎていたよ」


「なっ!ラフィアさんの刺突でも刺さらないんですかっ?!それでも無事に帰って来れるだなんて…さすがフルグレインさんのチームです!」

「待てお前は先走るな。フルグレインはオレたちだけじゃと言っただろ?誰か他に居たのか…?」


その言葉を聞いた瞬間、フルグレインたち三人は顔を見合わせてニヤっとした笑みを浮かべた。


「そうだ!」

「そうなんですよ!」

「その通りだッ!」


「なっ…なんだよお前ら急に…」

困惑する同期の冒険者と後輩冒険者に対し、起こったあらましを説明したのだった。


「なん…だと…本物の修行僧(モンク)が人間種に存在していたなんて…」

「凄い…本当なんですか…」


初めて会った時のフルグレインたちと同じ様な驚愕する二人に対してラフィアは得意げに語り出した。

先ほど迄の面影は微塵もなく、如何にヴィヴィアンが凄いか話したくてウズウズしていた。


「そうだっ!しかもそれだけじゃあねぇ!ヴィヴィアンお姉さまはほんの数時間の間でコロニーに居た女王や戦闘に特化した蟲を素手のひと殴りで総て殲滅させたんだよ!ひと殴りだぞ!!お姉さまは間違いなく伝説に謳われる武神だ。あれ程美しく強い存在なんて見た事がねぇ!!」

「いや全く!ヴィヴィアン様が伝説のドラゴンの化身だと云われても私は全く驚きませんよ!!」

「本当に!アノ方が居なけりゃオレたちは此処へは帰って来れなかっただろうな!!あの美しさなんだ!人の身に姿を変えた女神に違いねぇゼ!」


「なに言ってやがんだ!あの強さ!美しさ!神々しさ!伝説の武神に決まってる!!」

「いえいえ!かの方はドラゴンの化身ですよ!」

「オマエらあの美しさを見てわかんなかったのか?女神だよ!女神!」


「武神!」

「ドラゴンです!」

「女神だ女神!」


「いや、なんか話が凄すぎて作り話に聴こえるぞ…?なんか証拠になるもんはねぇのか?」


その言葉に黙り込んだ三人は、また顔を見合わせてニヤっと気持ちの悪い笑みを浮かべる。

そして一斉にドンと素材を机に置いた。


「なんですかっ?コレは!初めて見ましたっ!!」


「ーーーーーーーーーーッッッ!!!!!な、なななんなんだこの素材はッ…?おいっ!お前らッ!!なんだコレはッ?こんなもん見た事ねぇぞ!!?」


「さっき言ったコロニー内に居た戦闘特化蟲の素材だよ。ホントは全部合わせて六十匹分くらいの素材があったんだけどな。どうだ?コレで信用したか?」


「……あ、あぁ、あぁ信用した…」



こうしてタフタの街の冒険者中に知れ渡ったヴィヴィアンという名は、様々な尾ひれが付き噂される事となった。


曰く赤の悪魔のコロニーを見つけ、一撃でコロニーごと殲滅させた武神だとか、曰く修行僧(モンク)の技を身に付けた伝説のドラゴンの化身であるとか、曰く絶世の美を持ち、襲われている冒険者を救った慈悲深き女神であるとか。


勿論そんな事を知る由もないヴィヴィアンは、タフタの街を訪れた時に激しく後悔する事になるのだが、それはまだ先の話であった。

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