第六章‐4
彼らの軽巡洋艦ディートガルトに向かって、マリクレール=アントワーヌの通路を駆け戻りながら、アッシュはハンナに説明する。
ラングランからの念話、彼の仕組んだ今回の件の絡繰り。当然、ラングランとの関係も問われたが、『彼女』のことは伏せて、ちょっとした因縁がある、とだけ言っておいた。
走りながら休みなく話をしていたので、息が切れる。しかし、隣を走るハンナは呼吸一つ乱していない。それどころか、もっと速く走れんのか、と何度も尻を叩かれた。
「ふむ。とりあえず貴様の話は信じておいてやる。だが、貴様が『緑風』の手の者だという疑いが残っていることは、肝に銘じておけ」
「……あいつの手下だったら、わざわざこんな話はしねぇだろうよ」
「どうだかな」
しかし、その言葉とは裏腹に、本気でアッシュを疑っているような雰囲気は感じられない。
「まぁ、よかろう。情報の真偽を吟味するのは後回しだ。今は、あのハイエナ共の首に縄を掛けるのを優先する」
そう言い残すとハンナは、ぐんとスピードを上げて先へ駆けていってしまった。その後を、セラフィーナがつき従っていく。ドレスにハイヒールという姿なのに、アッシュよりも速い。
(うわ……、俺、あのお姉さんより体力ねぇ……)
ああ見えてもさすが軍人、などと感心してしまった。息を切らして走る。そこへ、エリカとジゼル、それに第七と第八小隊の面々が追いついてきた。単刀直入にエリカが確認してくる。
「アッシュ、先ほどの念話というのは、『緑風』のラングランからだったのですね?」
「ああ。ご丁寧に、今回の件の絡繰りを説明してくれたよ。なにからなにまで、あのヤロウの計画通りだったらしい」
エリカは、そのアッシュの説明だけで、おおよそのところは察したようだ。一方、ジゼルには、さっぱり状況が飲み込めていない。
「なに? なんで、あの『緑風』のラングランからダーリンに念話が掛かってくるの?」
「まぁ、ちょっとした因縁があってな。あと、ダーリンは止めろ」
そんなことを言っている間に、ディートガルトに到着した。乗艦すると、艦内には警報とアナウンスが鳴り響いている。
「総員、戦闘配置! 総員、戦闘配置!」
第七、第八小隊の面々も、自分の所定の配置に向かって狭い通路を駆けていった。アッシュは、エリカとジゼルの後を追い掛けながら尋ねる。
「エリカとジゼルの配置はどこなんだ?」
「私たち小隊長は艦橋で操艦を――、え? アッシュ、こちらへ来てしまったんですか!?」
返事をしかけて、エリカは驚いたように振り向いた。その彼女に対して、アッシュは言う。
「だって、俺、戦闘配置とか聞いてねぇもん」
「あ……、申し訳ありません。上には確認を取ってあったのですが、お伝えするのを失念していました。今からご説明しても……、お一人では辿り着けませんよね?」
エリカが確認というより、ほぼ断定の口調で言ってきた。昨日のこのディートガルトと今日のマリクレール=アントワーヌ、二回の迷子のことがあるからだろう。情けないが、アッシュには彼女の言葉を否定出来る材料がなかった。気まずげに沈黙して目を逸らすアッシュに、エリカが溜め息を漏らすようにしながら言う。
「仕方ありません。一緒に来て下さい」
「いいじゃない。夫婦はいつでも一緒よ」
相変わらず、ジゼルの台詞は甘ったるい。
艦橋に飛び込むと、ハンナが怒鳴り散らしていた。
「発進準備急げ! 主魔力炉の出力を上げろ!」
艦橋は広く、十ほどの座席が並んでいる。一段高くなったところに艦長席があったが、ハンナはそこには座らず、その脇に仁王立ちして指示を飛ばしていた。周囲はガラス張りの窓で、直接目視で外の様子が確認出来る。勿論、乗ったことはないが、実際の海を航行する大型艦船の艦橋と同様に見えた。エリカとジゼルが、自分の担当する操作卓の前の席に着く。
「申し訳ありませんが、アッシュの座れる場所はありません。座席の背に掴まって立っていて下さい。戦闘中の操艦は激しく揺れますから、お気を付けて」
「おう」
エリカの言葉に頷く。予定外の人員なので仕方がないだろう。
「あたしの席に座ってもいいわよ」
ジゼルがそんなことを言ってきた。アッシュは聞き返す。
「それじゃ、おまえはどうするんだよ?」
「あたしは、ダーリンの膝の上に座るから」
「……遠慮しておく」
アッシュは、エリカの座席の背に掴まって立った。気付けば、足元にチッピィがいる。
「あー、おまえも来ちまったのか……」
しかし、主人に忠実なバフスクのこと、別の命令がなければついてきて当然だろう。
「アッシュ。くれぐれも余計なところに触ったり、余計なことを言ったりしないように」
「う……、はい」
厳しい声で釘を刺すエリカに、これまで散々余計なことを言ってきているアッシュは、おとなしく頷くしかなかった。
ハンナの怒声が飛んでくる。
「タビー・トリスはどうしている!?」
「本艦及びマリクレール=アントワーヌから距離五千、こちらに向けて回頭しつつあります」
「回頭だと? 何故、逃げん?」
観測機器を確認したエリカの報告に、ハンナが独り言とは思えない声量で呟いた。
さっさと安全距離を取って、転移航法で離脱すればいいはずだ。そうでなければ、例の機械的隠密機構で姿を消して、こっそり逃げ出せばいい。それをしないのは、捕縛された人員が予想外に多くて乗員の人手が足りず、十分な航行能力を発揮出来ないか、なにか機関トラブルでもあったか、そうでなければ――。
「タビー・トリス、魔力反応増大! 魔力砲のチャージだと思われます! ――解析結果出ました! なに!? ドレイク型三二式魔力砲――重巡洋艦の主砲級です!」
情報解析担当のドミトリーが叫ぶ。
「重巡クラスの主魔力砲だと!? 何故、改造駆逐艦如きにそんなものが載っている!?」
ハンナが怒鳴るが、それに答えられる者がこの場にいるはずもない。
「いつでも防御魔法陣を展開出来るように準備しておけ! それでも、本艦の防御魔法陣では防ぎきれるかわからんが……」
「アイアイ・マム! 主魔力炉を、待機出力からチェックを省略して戦闘出力へ移行します」
ジゼルが防御魔法陣の準備の為、緊急手順で主魔力炉の出力を上げに掛かった。ハンナが矢継ぎ早に次の指示を下す。
「マリクレール=アントワーヌとの連結を解除、発進する! 距離を取れ! 微速上昇!」
「アイアイ・マム! マリクレール=アントワーヌとの連結を解除します。微速上昇」
操舵手のフランツ=ロイター少尉が復唱して、艦体の上方向に艦を発進させた。艦橋の窓から見えるマリクレール=アントワーヌが、少しずつ離れていく。ドミトリーが声を上げた。
「タビー・トリス、主魔力砲のチャージ完了まで、推定、あと十秒!」
「前進一杯! 機関への負荷は無視して構わん! 回避! 併せて防御魔法陣を全力展開!」
「アイアイ・マム! 前進一杯! 回避運動を取ります!」
「アイアイ・マム! 防御魔法陣を最大強度で展開します!」
ハンナの指示を、フランツとジゼルが復唱した。ドミトリーがカウントする。
「――四、三、二、来ます!」
音は聞こえなかった。ドミトリーのカウントに合わせるようにやってきた光の奔流が目を焼き、激しい振動が艦橋内を揺さぶる。アッシュは立っていられず、転倒した。
「……痛ぅ」
身体を起こす。全身を軽く打った程度で、怪我はない。アッシュは周りを見回した。
「チッピィ、無事か?」
(チッピィ、転んだ)
チッピィがエリカの着く操作卓の下から這い出してくる。彼も、特に怪我はないようだ。
「セラ! 損害報告!」
ハンナはその揺れにも関わらず、軍刀型の魔装剣を床に突いたまま立っていた。副長席のセラフィーナが報告する。
「展開した防御魔法陣は砲撃を支えきれず破壊されました。艦体下部後方に被弾。主推進機関が損傷。魔力の過負荷による逆流で主魔力炉にも影響が出た模様です」
「むぅ!」
予想以上に深刻な損害に、ハンナは唸り声を漏らした。
「主魔力炉、出力低下していきます!」
ジゼルが悲鳴を上げる。ハンナが即座に対応を指示した。
「予備の二号魔力炉を全開にして併用しろ!」
「やってますが……、ダメです! 戦闘出力を維持出来ません! 防御魔法陣の強度は全魔力を防御にまわしても五十パーセント程度、主魔力砲も魔力供給不足で使用不可能です!」
防御も攻撃も出来ない。軍艦としては死んだも同然だ。機銃や魚雷、小口径の連装魔力砲等での戦闘程度は可能だが、相手も防御魔法陣を持っている。それだけで駆逐艦を沈めるのは難しい。それに、姿勢制御用の推進機関でかろうじて移動することは出来るが、たいした速度は出ないだろう。攻撃されたら、回避もままならない。
「タビー・トリスはどうした!? 逃げたか!?」
「タビー・トリス、発砲前と位置、艦体の向き、共に変わっていません」
「なんだと? まさか……!」
エリカの報告に、ハンナは焦りをにじませた声を上げる。すぐに、その憂慮は現実に変わった。ドミトリーからの報告が入る。
「タビー・トリス、再び魔力反応増大中! 主魔力砲のチャージです!」
「むぅ! 止めを刺そうというのか!?」
邪魔をされた腹いせなのか、マリクレール=アントワーヌ内で捕縛されている仲間を助ける為か、それとも船の乗っ取り自体をまだ諦めていないのか。タビー・トリスは、攻撃も防御も出来ない、足も潰されて鈍重にしか移動出来ない軍艦を沈めておくことに決めたらしい。
「主魔力砲のチャージ完了まで、推定――、なんだ、この長さは? 推定、四分三十六秒!」
ドミトリーが疑わしげに、魔力反応の推移から算出されたチャージの残り時間を告げた。その異様なまでに長いチャージ時間は、改造しているとはいえ駆逐艦級の主魔力炉で、重巡洋艦級の主魔力砲を撃とう、という無茶による弊害と考えて、まず間違いない。実戦ではとても使用に耐え得るチャージ時間ではないが、機械的隠密機構を装備するタビー・トリスは、姿を隠したままでチャージを行うことが出来る。これまでは、そうして運用してきたのだろう。現在の状況では、ディートガルトは逃げることも攻撃も防御すらも出来ないので、時間が掛かっても構わない、と判断したようだ。
「総員、退艦しましょう。四分半あれば、おそらく全乗員が脱出出来ます」
副長席のセラフィーナが進言した。ハンナが歯噛みする。
「海賊如きに背を見せろというのか!? 冗談ではない!」
「しかし、現実問題として打つ手がありません」
セラフィーナの正論に一瞬黙ったが、ハンナはすぐに獰猛な笑みを浮かべた。
「いや、あるぞ。攻撃手段ならな。 ――ブラウスパーダ少尉にシャンティエ少尉! 念話でフィアリス軍曹とグェン軍曹を艦橋に呼び出せ! 大至急だ!」
「え? アイアイ・マム!」
エリカは慌てて返事をすると、アリーセに念話を繋いだ。
(アリーセ!)
(あ、エリカぁ、そっちは大丈夫ぅ? あたし、頭ぶつけたよぉ)
アリーセからの暢気な返答がくるが、構っている暇はない。
(急いで艦橋に来なさい。大隊長殿より直々のご命令があります)
(は、はわ! いえす、まぁむ!)
ジゼルも同様に、クォンを呼び出しているようだ。セラフィーナが早口で問い掛けた。
「ハンナ隊長、なにをなさるおつもりですか!?」
「第一格納庫に、試作品の魔力収束放出型魔力増幅装置を載せた超弩級魔装砲が転がっていたろう。開発部が、軍艦の魔力砲にも匹敵する、とか豪語していたやつだ。あれを使わせる」
「っ!? しかし、あれはテストもまだ――!」
「ちょうどいい実戦テストだろう」
「それに、タビー・トリスの主魔力砲の発射までに間に合わない可能性があります! 本艦はもう、防御は元より回避も出来ないのですよ!?」
ハンナとセラフィーナが言い争っている。珍しい光景だったが、見物しているわけにもいかない。アッシュは、口論する二人の前にずかずかと歩み寄った。
「何故、民間人が許可もなく、この艦橋に入り込んでいる?」
それを見て、ハンナが厳しい声で問う。慌てて、エリカが立ち上がった。
「申し訳ありません、大隊長殿。私の不手際です」
「エリカのせいじゃねぇよ。俺が勝手についてきちまっただけだ」
アッシュは、真っ直ぐにハンナの赤い眼を睨み付ける。だが、彼女はその視線を意に介した様子もなく、問い掛けてきた。
「それで、なんの用だ、民間人? 今は、ひよっこの戯言に付き合っている暇はないぞ」
アッシュもその嫌味には反応せず、問い返す。
「あの主砲さえなんとか出来れば、攻撃手段はあるんだな?」
「そうだ」
突然割り込んできたアッシュを怒鳴りつけるでもなく、ハンナは彼女にしては静かに、彼の問いを肯定した。その返事を聞いて、アッシュは間髪入れずに告げる。
「なら、あの主砲は俺が止めてやる」
その言葉に、艦橋内がどよめいた。
「……アッシュ!」
「ダーリン!?」
「なにを言っているんだ、あの男は!?」
「重巡洋艦級の主魔力砲を止めるなどと――」
そこで、艦橋内に静寂が降りる。その場の全員が、例の報告書を思い出しているのだろう。
ハンナが確認してきた。
「報告にあったあれか……。やれるのか?」
「やれないと思ったら、のこのこ出てこねぇよ。あの程度の魔力砲、ドラスネイルのに比べたら、全然たいしたことねぇだろ」
本当は自信などない。あのときは、身体を喰らうことと引き換えに無尽蔵に魔力を供給してくれる禁断の魔法兵器『魔人血晶』がこの身に寄生していたのだ。しかし、どうやらアリーセがとても危険な任務を命じられるらしい。それに、この艦にはエリカやサーニャ、ジゼルに第七小隊の皆、その他にも名前も知らない乗員がたくさん乗っている。ハンナには、退艦する意思はない。無茶でもなんでも主砲の第二射を防がなければ、この艦の全員の命がないだろう。
「僕は信じますよ。彼を、というよりブラウスパーダ少尉の報告を、ですが。――出過ぎたことを申し上げました。ご容赦下さい」
驚いたことに、フランツがアッシュの主張を擁護してくれた。ハンナが軽く頷く。
「よかろう。やってみせろ」
そうして、彼女にしてはとても落ち着いた声で許可を出した。アッシュも頷き返す。
「ああ、やってやるぜ。よく見てろよ」
そこに、艦橋の扉が開いて、クォンとアリーセが駆け込んできた。
「グェン=ヴァン・クォン軍曹、ご召喚に応じ、出頭致しました」
「アリーセ=フィアリス軍曹でありますぅ。出頭致しましたぁ」
二人がハンナの前に並んで敬礼する。
「なんだ、あのチビっこいのは?」
ひそめられた声が、意外と静かな艦橋に響いた。隣の隊員が発言者に説明する。
「リッケルト少尉は今年からこの大隊に着任されたので、まだご存じなかったのですね。あれは我が隊の大砲ですよ。測定魔力値が四百を超える重砲撃型です。なんでもヴェデルザール条約に抵触する為、対人への全力での砲撃の使用を制限されているとか」
「魔力値四百に、生身でヴェデルザール条約に抵触!? なんだ、それは!? 化け物か!?」
その言葉を聞いて、アッシュは一瞬で切れた。手近にある操作卓を思い切り叩く。バァンッという大きな音が鳴り、艦橋内が静まり返った。
「おい! 今、『化け物』って言ったやつ、どいつだ? もういっぺん言ってみやがれ。外の真空に放り出すぞ!」
エリカが小さな微笑を浮かべている。アリーセは、ポカンとした顔でアッシュを見つめていた。一瞬の静寂は、すぐにアッシュに対するひそひそとした反感の言葉に取って代わられる。
「さっきから、なんなんだ、あの男は!?」
「民間人が出しゃばりやがって!」
だが、大事な友人を侮辱されたのだ。アッシュにも引き下がる気はない。それに、大口を叩くだけの実績は上げているつもりでいる。悔しかったら同じことをやってみせろというのだ。
そのとき、パンパンというお馴染みの手を叩く音が艦橋内に鳴り響いた。セラフィーナが一同を窘めるように言う。
「今は時間がありません。お静かに。個人間の諍いは、後ほど解決して下さい」
それで、とりあえずひそひそとした声は止んだ。ハンナは今の騒ぎを特に気にしてもいないような態度で、並んで立っているアリーセとクォンに向き直る。アリーセは先ほどとは一転して、にぱぁっとした笑みをアッシュに向けていた。ハンナが、意外なほどに静かな声で説明を始める。状況が切迫するほど、声のトーンが落ち着くのかもしれない。
「貴様たちには、新開発の巨大魔装砲で敵艦を砲撃してもらう。これには最新型の、これまでとは設計思想が異なる魔力増幅装置が搭載されている。使用法は――」
暫く専門用語だらけのレクチャーが行われ、続いて作戦概要が説明される。
「――砲手はフィアリス軍曹、観測手はグェン軍曹が務めろ。以上だ。質問は?」
「はわ! あ、あのぉ……、大隊長殿ぉ」
少し躊躇ったようだが、珍しいことにアリーセがハンナに対して口を開いた。
「なんだ?」
「僭越ながら、観測手には、自分の隊のストラビニスカヤ伍長を希望致しますぅ」
この怖がりの小さな軍曹が自分の意見を主張してきたことに、ハンナは少し驚きと喜びを感じながら頷いてみせる。
「む。許可する。信頼出来るパートナーと組むのがよかろう」
「いえす、まぁむ。ご高配、感謝致しますぅ」
「だが、そやつにもう一度ゆっくり作戦説明している暇はないぞ。そやつへの説明は、貴様自身が現場で行え」
「あいあい、まぁむ!」
アリーセが敬礼した。ハンナがその背をどやしつける。
「では、さっさと第一格納庫に向かえ。――貴様もだ。なにをぼさっとしている、民間人!」
「俺も!?」
いきなり指名されて、アッシュは戸惑った。ハンナがぎろりと睨むような視線を寄越す。
「例のあれは、ここからでも使えるのか?」
『あの魔法』は最初に組み上げたままを復元している。離れたところに展開するなどという便利な機能は組み込まれていない。
「ああ、わかったよ! ――チッピィ、行くぞ!」
アッシュはチッピィに声を掛けると、一緒に艦橋を飛び出した。
「気を付けてね、ダーリン!」
後ろから、ジゼルの声が聞こえる。アッシュは、閉じた艦橋の扉に向かって呟いた。
「だから、ダーリンは止めろっつのに」
一つ嘆息して、先を駆けるアリーセを見失わないように追う。第一格納庫とやらがどこにあるかわからない。三回目の迷子は、ごめんだった。




