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「神速の指先」を聞き間違いで授かった僕が実は最強だった件  作者: ギア丸


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第8話:アイリスの無理難題。下水道に潜む巨大ワニを土下座させろ

 妹の訪問から数日後。俺はミレーヌ、ポチと共に、再び地下ギルドの鉄格子前に立っていた。

 アイリスはいつもの無表情で、一枚の依頼書を突きつける。

「ヴォルガッシュ様。次の任務です。下水道の奥深くに、巨大な魔獣『アイアンクロコダイル』が出現しました。その硬い鱗は剣も魔法も弾き、下水道の通路を破壊し続けています。討伐隊は壊滅しました」

「はぁ!? 下水道の掃除から、いきなり魔獣討伐!? しかもアイアンクロコダイルって、討伐隊が壊滅するレベルだぞ!」

「貴方ならできるでしょう? その**『指』**で。……報酬は特上肉二日分です」

「肉二日分だぞ、主よ! 行くのだ!」

 ポチの肉への執着は、もはや信仰レベルだ。

 ミレーヌはため息をついた。

「全く。人の命より肉を優先する神竜と、鼻を優先する騎士……変な二人組だね」

 俺たちは、再びあの悪臭漂う下水道へと潜った。

 奥へ進むと、鈍い光を放つ巨大な鱗を持つワニが、壁を破壊しながら暴れ回っていた。全長五メートルはあろうかという巨体。その口からは、下水道の汚水が噴き出している。

「グルルルルルルルルル……!」

「あれがアイアンクロコダイルか……! 確かに、剣が通る隙がない!」

「どうする、ヴォルガッシュ。私の魔術も、あの鱗には直接攻撃じゃ効かないよ」

 ミレーヌが、もう腰巻き一枚という限界突破スタイルで魔力を高める。

「(クソッ……。俺のスキルで倒せるのか……?)」

 俺は思考を巡らせた。

 『超高速鼻ほじり』は単体攻撃だが、相手が鼻腔を閉じたら意味がない。ワニの鼻の穴は小さすぎるし、何よりあの巨体だ。

 ……待てよ。『土下座』はどうだ?

 ポチを土下座させた時、あいつの巨体が物理法則を無視して地面に叩きつけられた。

「ミレーヌ! お前は後ろに回り込め! ポチは側面を牽制だ!」

「分かった! けど何をするつもりだい?」

「我は肉のことしか考えぬぞ、主よ!」

 アイアンクロコダイルが、俺めがけて突進してきた。

 その巨体が迫る。俺は死を覚悟し、渾身の力を込めて叫んだ。

「レガシー家奥義! スキル発動――『全自動・土下座』!!」

 ズドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 凄まじい轟音と共に、アイアンクロコダイルの巨体が、まるで『見えない巨大な手』に頭を押さえつけられたかのように、地面にめり込んだ。

 硬い鱗も、巨大な顎も、すべてが無理やり「五体投地」の姿勢に固定される。

「ゴ、ゴボォォォォォォォォッ!?」

 あまりの理不尽な強制力に、アイアンクロコダイルの巨体が痙攣する。

 頭は地面に固定され、鱗の隙間から泡を吹いている。

「今だミレーヌ! 腹を狙え!」

「分かった! ……しかし、こんな攻撃方法があるなんてね。これは、まさに**『究極の脳天杭打ち』**だよ!」

 ミレーヌが、もはや全裸の境地で魔力を最大まで練り上げ、アイアンクロコダイルの無防備になった腹部に極大の火炎魔術を叩き込んだ。

 ゴオオオオオオォォォォッ!!

 鱗の硬い魔獣は、一瞬にして絶命した。

 俺たちは泥まみれになりながら、アイアンクロコダイルの死骸を前に息を整えた。

 下水道の汚泥の中に、巨大な魔獣が完璧な土下座ポーズで横たわっている。

「……勝ったな、ヴォルガッシュ」

「うむ。肉、肉の匂いがするぞ、主よ!」

 だが、その勝利は、あまりにも「絵にならない」ものだった。

 俺たちは死骸の一部をギルドに持ち帰った。

「見事です、ヴォルガッシュ様。アイアンクロコダイルの討伐、確認しました」

 アイリスは無表情で、鑑定済みの肉の塊を俺たちに渡した。

「ですが、その魔獣が発見された時の状況が……『完璧な土下座の姿勢で絶命していた』と。衛兵たちが全員、首を傾げています。貴方のスキル、あまりに**『絵面が酷すぎる』**と、また苦情が殺到していますよ」

 俺は、せっかく手に入れた肉を抱きしめて、またしても地下へとトボトボ帰った。

 騎士の誇りと、神授のスキルの狭間で、今日も俺は地獄を見ていた。

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