第44話:リーネの文化祭。お兄様、その指でチョコバナナを作って!
「お兄様! 今年の聖王立女子学院の文化祭、私、模擬店の責任者になりましたの! 出し物は『チョコバナナ』ですわ!」
リーネのキラキラした瞳に抗えるはずもなく、ヴォルガッシュ一行は天空の島にある名門女子校へとやってきた。だが、模擬店は大ピンチ。チョコを溶かす魔法コンロが故障し、バナナの皮を剥く担当の生徒たちが全員「指の運動不足」で腱鞘炎になっていたのだ。
「お兄様、お願いですわ! その『黄金の指』で、バナナを救って!」
「……妹の頼みじゃ、やるしかないか。おい、キレイ卿! 衛生管理を徹底しろ! ミレーヌ、お前は絶対脱ぐなよ、ここは女子校だぞ!」
「わかってるって! 雲のブラジャー、今日は二重にしてるから大丈夫!」
(※逆に危ない)
ヴォルガッシュは模擬店の厨房に立つと、千本のバナナを前にして右指を構えた。
「行くぞ……。スキル発動――『超高速・皮剥き旋風』!!」
ズババババババババババババッ!!!!!
指先が空気を切り裂き、バナナの皮だけを一瞬で、かつ芸術的な「剥き跡」を残して脱ぎ去っていく。その速度はもはやバナナが「自分が剥かれたことに気づいていない」レベル。
続けて、ヴォルガッシュは溶けたチョコの樽に指を突っ込んだ。
「仕上げだ! 遠心力と摩擦熱で究極のコーティングを施す! 『全自動・土下座』――超高速攪拌!!」
厨房の中でヴォルガッシュが土下座の姿勢で独楽のように回転し、指先からチョコを均一に噴射。空中に放り投げられたバナナたちが、一糸乱れぬ美しさでチョコを纏い、リーネの前に整列した。
「すごいですわお兄様! チョコが……チョコの表面が、高級車の塗装みたいに鏡面仕上げになってますわ!」
瞬く間に「不名誉な騎士のチョコバナナ」は学院中で大評判となった。しかし、問題はその「形状」だった。
ヴォルガッシュが癖で指先を「あの角度(鼻に突っ込む時のフック状)」に曲げながらコーティングしたため、すべてのバナナが**絶妙に反り上がり、先端がわずかに膨らんだ「不名誉極まりないフォルム」**になっていたのだ。
「……ちょっと、リーネさん。このチョコバナナ、食べる時にどうしても『鼻に入りそう』な形をしているのだけれど……」
通りかかった学院長が、顔を真っ赤にして絶句している。
「あら、学院長。これは『レガシー流・機能美』ですわ! 非常に持ちやすく、かつ鼻の通りも良くなりそうな(?)デザインですのよ!」
「ダメよ! こんな卑猥……いえ、不衛生に見える食べ物を学院内で売るなんて! 中止、即刻中止なさい!」
学院長が没収しようとしたその時、ヴォルガッシュが学院長の前に進み出た。
「……学院長。あんた、ストレスで『詰まって』るな。このバナナを食ってみろ。これはただの菓子じゃない。俺の指が込めた『解放の祈り』だ」
無理やり口に運ばれたバナナ。一口食べた瞬間、学院長の表情が激変した。
「……っ!? な、何この食感……! チョコの隙間に潜んでいた微細な気泡が、私の心の澱みを根こそぎ掻き出していく……! 懐かしい……私がまだ若く、鼻をほじって笑っていたあの頃の自由な感覚……!!」
学院長は涙を流しながら、チョコバナナを両手に持って踊りだした。
「許可します! 全校生徒、いえ、天空の全住民にこの『不名誉バナナ』を配りなさい!」
「……また一人、被害者が増えたな」
アイリスが遠い目で、チョコバナナを抱えて踊る学院長を見つめていた。
こうしてリーネの文化祭は、学院史に残る「伝説の不名誉事件」として幕を閉じた。
だが、その騒ぎの裏で、天空の島を影から監視する「隙間のない目」が、ヴォルガッシュの指先を冷たく見つめていた。




