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魔王の呪具

リリウス・マクローエン

 本編の主人公。ケツにスプーンをねじ込む悪魔と呼ばれる変態。


フェイ・リン

 世界一の武術家を目指して西方に流れてきた修行中の少年。


カトリーエイル・ルーデット

 戦闘能力特化のダメな子。深刻な性癖を抱えていたが真人間宣言。リリウスの相棒。


コパ教授

 通称コッパゲ先生。アシェラ神殿の大司祭だったが紆余曲折を経てサン・イルスローゼで教鞭を取る。


ルル・ルーシェ・ユーゲン・クライシェ

 ラサイラ魔導学院一年生。ロマン武器職人とかいう変態。殲滅力特化の破壊型大魔法使い。


コンラッド・アルステルム

 ラサイラ魔導学院一年生次席。祖父が王国元老院議長のエリートなのに執事フェチの変態。

 コッパゲ先生ことコパ先生のはなしではスキルには三種類あるらしい。先天性才能、後天性才能、技能スキルで三種類。


 先生は後天性才能の発芽した人物からいきさつを聞き、どういう経験を経るとその才能に目覚めるのかを調査しているらしい。THE学究って人物ですね。世の中はこういう地道な努力の積み重ねで便利で豊かになっているんだ。


 魔法大国の最高学府で教鞭を取る先生とかいう最高に頭の良さそうな人物なので、せっかくだから色々尋ねてみる。


「これステルスコートっていうんですけど……」


 消えたり現れたりを実演しながら効果を説明し、レザードとかいうやべー魔法使いの魔法具の記録について質問する。おそらくは他にもあるだろうし、現存はしなくても記録のような形で知る事もできるだろうと思ったからだ。


 反応は期待した物より相当やべー感じだったぜ……


「頭は大丈夫かね?」

「ひどい!」


 いきなり頭の心配された!


「これはひどい。着用者の重度精神汚染にレジスト成長型へのパラメータの強制誘導……ここまで危険な魔法具は初めて見た……」


 重度精神汚染て……

 ステルスコートさん色に染められちゃったの俺?


「重度精神汚染って俺どうにかなってるんです?」

「自覚症状はなしか」


 あのあの質問を無視して診断書書くのやめてもらえませんかね?


 診断書をしばらくカキカキしていた先生が診断書を差し出してきた。


 Name: リリウス・マクローエン

 Age: 13

 Appearance: 誰もが想像の内に思い描く暗殺者そのままの目つきをした子供

 Height: 143

 Weight: 48

 Weapon: ミスリル銀の短剣(品質C) ミスリル銀の大戦斧(A)

 Talent Skill: 剣術D 商売D ティトSS 魅了D

 Battle Skill: ソードスマッシュ(熟練度A) チャージド・ストライク(H)

 Passive Skill: 機眼S 危機察知B 人間不信B


 LV: 28

 ATK: 240(同職・同レベル帯における平均値540)

 DEF: 68(450)

 AGL: 1650(520)

 MATK: 0(0 or 880)

 RST: 6770(320)


 すげえ、ゲームみたい! 鑑定スキルってここまでわかるんだ!


 でも容姿の書き込み俺に対して失礼すぎませんか?


「ここの魔法抵抗力の値が異常に高いね?」

「ふんふん」


 レジストと敏捷性が異常に高い代わりに他が低いぜ。まだ成長期の途中で体つきができあがってないから仕方ないけど、数字で見るとちょいへこむぜ。


「その呪具を使い続けている限り君の肉体は脆弱なままだ」


 はい?


「呪具が君の成長する方向を捻じ曲げているのだ。年齢のわりに伸長が低いのもそれが原因かもしれん」


 こんなもんソッコーで捨て―――られるか!

 ステルスコート先生なしでこんな過酷な世界生きていけないよ!


「早い内に封印処理するのを勧める」


 終末期医療(ターミナルケア)を提示するトーンだぜ……

 もう手遅れだけど一応抗がん剤治療もあるよって本気のトーンだぜ。魔王の作った魔法具がやばいのはわかってたけど、これは相当やばいな。なんかいい方法ないかな?


「あのぅ、所持したまま便利に使いつつ悪い効果だけどうにかする方法ないです?」

「……君はなんというか社交的な子だね」


 先生は会話のキャッチボール苦手みたいですね!


「人間不信スキル所持者の多くは内向的だ。誰も信じられないから自分で解決したがる傾向が強い。君のように他者に解決方法を求めたり、こうやって会話することさえ難しいんだ」


 コミュ症かな?


「よほど強固な自我があるのか、じつに興味深い」

「内側に閉じこもっても可愛い彼女とラブラブにはなれませんからね」


 今年の目標はカトリたんを本気でメロメロにすることだからね。

 コミュ症なんて発症してる場合じゃねえんだ。


「恋人がいるのかね?」

「ええ、王都でも一番って美女ですよ」


 変態だけど。


 アレコレ聞かれて答えてるとコパ先生がめっちゃ笑い出した。


「なるほど得心がいった。スケベ心が人間不信Bを覆しているのだな」

「外聞が悪すぎる、エロのちからで正気を保ってるみたい言い方はやめてください!」

「色欲(エロス)を否定する気はないよ、あればこその人族の繁栄だ」


 何もまちがってないと思いますよ?

 でも先生その考え方女子の大半からキモがられますよ?


「君の巨大なエロスが正気に寄与していると仮定しても、人間不信スキルがランクアップしてまで無事とは思わない方がいい。早急に手を打つべきだろう」

「手があるんですか?」


「毒をもって毒を制する。夜の魔王の呪具を抑え込むなら同じ魔王の呪具を集めるのだ!」


「毒の過剰摂取で早死にしそう」


 …………

 ………………

 俺とコパ先生はしばらく見つめ合った。この世界のハゲに良い思い出ないってのもあるけど、コパ先生もやっぱり使えない人なの?


「良い思いつきだと思ったのだがね……」

「思いつきで俺の人生弄ばないで!」

「呪具を手放して恋人と一緒にどこか空気のよいところで余生を……」

「ターミナルケアもやめて!」


 リリウス君はまだ若いんだよ!


「我儘を言われても困るよ。最善は呪具を手放す、次善は呪具を集め効果を打ち消し合う。二つに一つを選びたまえ」


 これは大きな選択肢だな。人生を左右すると言っても過言じゃない。


 1 所在不明の呪具を求めて旅する孤独ライフ。

 2 カトリたんとのんびりスローライフ余生。


 パッと見は断然後者だわ。

 血なまぐさい世界から離れてカトリたんと晴耕雨読は断然あり。でもこの場合問題はカトリたんが大人しく俺についてきてくれるかって大問題が発生するね。オシャレと都会大好きなカトリたんが……無理ぽ。


「う~~~~ん、呪具見つけてきたら先生が鑑定してくれる?」

「その程度なら承るよ。君だって私の生徒だからね」


 良薬口に苦しとはいうが有能先生は優しいけど手厳しいぜ。


「アシェラの本殿を訪ねたまえ」

「本殿っつーとフェニキアにある?」

「うむ、アシェラ神殿の大本山、黄金神殿だ」


 うわー、名前ダセー。

 こっちの人すぐ黄金つけちゃうよね……


「本殿では魔王の呪具が一つ封印されていたはずだ。他の呪具についての資料もあるだろう」


 さすコパ!

 コッパゲ先生マジの有能じゃん!


「我々も同行しよう!」


 なんだぁ、ルルが教授室に突入してきやがったぞ!

 しかも何だかよくわからない魔法具をリュックいっぱいに背負って完全武装してやがる。完全に教授室を出たところを襲撃するスタイルじゃねえか。


「夜の魔王の呪具と聞いては黙ってられないな! 少年よ大船に乗ったつもりで任せるがよい!」

「帰れ」


 ヴァイキング密航させてる大船なんか乗れるかボケ。


「ルル君には補習があるでは……どうして泣き出したのかね?」

「お嬢様は出席日数の計算を間違えていて、先ほど留年が確定したのです」


 ひでえ……

 留年確定したショック覚めやらぬ間にステルスコート殺奪(ころうば)しに来るとか……


「ルル」

「何だね?」

「フェニキアとなると船旅だけどお前金あんの?」

「無い!」


 何でも勢いだけで誤魔化せると思っているちから強いサムズアップだぜ。


「お前ら愉快な馬鹿どもと付き合うのも楽しいけどさ、俺には相棒がいるんだ!」


 教授室を飛び出す。

 正門からラサイラ魔導学院を出て、俺は俺の居場所に戻った。

 カトリたんのいるところ、それが俺の居場所なんだ!


「いやだああああああああああ! 帰せぇぇ、僕を帰してくれええええええ!」


 なーんでフェイがカトリたんにボコされているんですかね?

 とりあえずカトリたんに事情を聴くぜ。


「だってリリウス君構ってくれないんだもん!」

「憂さ晴らし?」

「そ。今日はありがと、リリウス君いない時にまた遊んでね?」


 フェイの扱いがひでえ。


 あとフェイの表情に違和感。こいつ密かにカトリたんの事好きだったりすんの?


「おい、この女はやらないぞ」

「いらねえ……」


 ちげーわ、散々ボロクソにされた挙句あっさり捨てられたから悔しいだけだわ。

 とりあえずフェイは置いておこう。


「カトリたん、俺ちょいとフェニキア行こうと思うんだけど……付いてきてくれる?」

「相棒なら当然よね?」


 二つ返事でオーケーなこの感じ、相棒だからだね。


 目的は魔王の呪具、さあ海を越えて大冒険の始まりだ!





 と思ったけどそろそろ夜なので今夜はのんびり旅支度。


 翌朝さっそくの出発だ。でもリスグラ港から船出てるかが心配。まだ三ヶ日だからね。

 あとフェイの野郎はな~んでついてくるんでしょ? 暇なの?


「あー、レテと喧嘩して帰り辛くてな」


 微笑ましいイベント起こしてんじゃないよ。可愛い奴らだな。


「少し距離を置きたい。同行させろ」

「それは少し時間を置いたらまた寄りを戻すって意味かな?」


 カトリたんがナイスつっこみ入れるとフェイが悩み出した。

 うーうー唸りながら首をグルグル回して結論、


「途中で放り出すほど無責任じゃあない」

「はい、めんどくせー」

「素直じゃないねー」


 フェイをからかいながらリスグラ港まで徒歩る。


 ローゼンパーム南西を雄大に流れる大河リスグラは王都の流通を支える水上の主要幹線道路なんだ。大小無数の商船や個人の客船が行き交う光景は王都でも有数のデートスポット。お金かからないからね。


 リスグラ港の倉庫街では数十もの海運会社が事務所を構えていて、その中には定期便を運営している会社もあるんだが……


「ほとんど閉まってるね……」


 事務所のシャッター街だったぜ。

 まだ新年三日目だもんね。


「ま、こればっかりは仕方ないね」

「陸とちがって海は行き当たりばったりとはいかない。いい勉強になったな」


 お前達あっさり諦めるよね? やっぱりお正月はのんびりしたいの?


 とりあえず開いてる事務所に突撃して定期便の予定表を確認するぜ。

 四軒ほど回った感じバロア海上交通さんが一番早いな、七日にはフェニキア行きの大型客船が出港するらしい。へへ、三名様よろしくな!


「申し訳ございません。七日の便は満席となっております」

「マジすか?」

「この時期はアシェラ神殿への参拝がたいへん多く、三月までの便はすべて満席となります」


 聞けば他社も似たような状況らしい。

 初詣客がわんさかで船に乗れないとは思わんかったぜ。


「う~~ん、隣国までの船に乗ってそっちから陸路とか?」

「砂のジベールの砂漠を横断する気か、死ぬぞ」

「申し訳ございませんが、弊社の船はフェニキアを経由してジベール・フェスタに参りますので当然ジベール行きも満席となります」


 へへ、事務員さんが有能すぎて絶望しかねえな。

 もう諦めてお正月はこたつでのんびり過ごそう。


「そーいえば大市ってまだやってるよね?」

「元日の勝負の続きやる?」

「何の話だ?」

「フリマで最高に笑えるネタアイテム買ってきた奴が勝者なやつ。お前もやる?」

「負けた方はどうなるんだ?」


 俺らはフェイから目を逸らした。


「なんだその反応はッ、負けたらどうなるんだ!? 答えろ!」


 だってこいつの目を見てると笑っちゃう気がするんだもん。


 俺とカトリたんは正直拮抗してると思う。しかしフェイ如きに負けるはずがないから確定でこいつが罰ゲームだわ、そう考えると笑いが堪えられない。どんな罰ゲームにしてやろうかな?


「やれやれ、始める前から負けた時の心配ですかー?」

「おいおいフェイさんよぅ、そんなんじゃ九式竜王流の名が泣くぜ?」

「いいだろう、その勝負受けてやる!」


 俺らは今きっと悪魔みたいな微笑みを浮かべているはずだ。


 生贄スタンバイ!

 キングのデュエルって奴を見せてやんのよ!

 機眼スキル 解説


 では講義を始めよう。

 本日は我らウィザードの天敵とも言える『機眼』についてだ。古来敵を知り己を知れば百戦危うからずというが、機眼持ちの非常識な予感や直感によって圧倒的優位を崩され敗北した例は枚挙に暇がない。恐るべき敵だ。


 機眼は後天性スキルに属する、極めて戦闘寄りのスキルだ。CRT値EVA値へのプラス補正がある。このスキルの根幹は勘働きの鋭敏化なのだ。魔法を打つ瞬間の呼吸を読み回避する、こちらの呼吸を読み隙を突いて斬殺する。これらすべてを直感にて行い、実際に恐ろしい敵なのだから非常識と言わざるを得ない。直感から放たれたたった一振りの刃によって我らが積み上げてきた研鑽が崩れ去るなど不条理な物だな。


 機眼持ちの多くは暗殺者に多い。多くの生命を害してきた者へと与えられる不名誉だが絶大なちからというわけだ。稀に多くの魔物を屠ってきた者にも発芽するが稀も稀だな。機眼の付帯効果には奇襲成功時に300パーセントのATKボーナスが発生する。クリティカルともなれば150パーセントのボーナスだ。


 散々脅してきたが機眼持ちの戦闘においては距離を保てさえすれば問題ない。高いEVA値も範囲魔法の連打なら意味を為さぬし、前衛を並べる事ができれば万が一も起きないだろう。だが一番の対処法は戦わぬ事だと肝に命じておいてほしい。有史以来どんな精強な王も暗殺の刃には抗えなかったのだから。

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