恋模様は複雑
マジ色々あって翌日、俺はギルドの受付でシシリーたんとお茶しながら愚痴を聞いてもらってる。
昨日カトリたんと本音でぶつかってみたのが原因だ。
カトリたんはあの後「大好きに決まってんじゃん」とかほざいた。
「で、俺はハンス君と同じ好きでしょって言ったわけ」
「ふんふん」
シシリーたんが熱心に聞いてくれている。
普段は茶化すのに真面目な時はしっかり聞いてくれるんだ。
「で?」
「黙っちゃった」
シシリーたんが頭を抱えちゃった。
変態の親友だもんね。
「リリウス君的な予想はなんだったのかな?」
「ひどいッ、なんでそんな事言うの!? だと思ってた。普段のカトリたんなら絶対そう言って抱き着いてくるんだ」
「たまにああいう時があるんだ。予想が外れるというか打ったのに響かないというか、いじっても応えてくれないの。あれってやっぱり計算してるのかな?」
シシリーは変態の親友だ。
つまり変態に一番詳しい人だ。二番かもしれない。心当たりはもう一人いるけどそっちは裏社会のボスとかいうやべー奴なので関わりたくない。
「計算だよ」
「やっぱり……」
俺は頭を抱えてしまった。
薄々気づいてたけどカトリたんには妙なところがある。頭の回転が異常に早いのに俺のヘタクソな嘘を真に受けたりボケたのに乗らなかったり、色々変だ。
シシリーたんとの歴戦のお笑い芸人コンビ感を見てる限り俺のボケに気づいてないわけがないし。
つまりは色々チグハグだったんだ。で、今親友の口から露見したんだ。
「あの変態けっこうナルシストだから……」
「わかる……」
「可愛そうな自分に酔いしれるのが大好きでさ……」
「超わかる……」
「単純で馬鹿な女だって騙されてる少年が調子に乗り始めると変態は可哀想な自分で気持ちよくなっちゃうの……」
「最高に面倒くさいね……」
軽んじられると泣き出すくせに身震いしてたもんね。
あれ性的に興奮してたんだね……
「飽きると少年の鼻を折る方向に遊び出すの……」
「経験あるわー……」
俺が調子に乗ってきた途端に別の女の存在指摘して、二人の関係に微妙なバランス強いたの確実にコントロールしようとしてたよね。
ハンス君いなかったら絶対カトリたんにのめり込んでたわ。
あんな身綺麗な女子アナ系美人からいつか別れの日が来るとか言われたら、なんとしても惚れさせたいって頑張っちゃうもん。
急に優しくしたりプレゼント送ったり夜の生活をしつこくしたり……
カトリたんそれが狙いだったよね……
そういえばあの時からだわ、カトリたん魔性の女疑惑。
俺やっぱり手のひらでコロコロされてたのね。納得。
これはあれだな、少年のお腹に興奮する設定もレッドだな。真っ赤な嘘だな。恋愛経験値の低い少年の方が遊びやすいだけだわ。
「カトリたんといいシシリーたんといい悪女しかいないのこの町?」
「お姉さんは大天使だよ? おうちに泊めてご飯あげたでしょ?」
「う~~~~ん、悪女」
今みたいに自然に肩抱いてくるとか悪女認定待ったなし。
俺がその気になると的確なタイミングで梯子外しに来るし、男を翻弄する手管が神がかってやがるんだ。
いったい何人の男を転がしてきたのやら……
「もしかして嫌だった?」
「へへっ、年上の悪女にコロコロされるのも好きぃ」
ユイちゃんみたいな神殿育ちの純真無垢な乙女も好きだけど、騙し騙され男と女のゼロサムゲームも大好き。
男とは困難な山ほど登りたがるロマン溢れるアルピニストなのだ。
今はユイちゃん一筋だけど。
シシリーたんみたいな格上の悪女を何としてでも落として俺の物にしたいみたいな想いはある。
「リリウス君もそーとーな変態だよね」
「否定はしないよ」
「カトリとヨリを戻す気はあるの?」
それはない。
カトリたんには親愛もある。少しの間だけど共同生活してたし人間的にも嫌いではない。普通のお友達としてなら長く付き合えると思ってる。カトリたん側もそうかは知らんけど。
でも俺はもうユイちゃんといい感じだ。まだ交際するとか付き合おうとかそーゆー話はしてないけど、空気だけはそんなふうになっている。
空気だけで終わっちゃうのってよくあるけどね!
話が逸れたか。つまりは二股なんてする気ゼロ。
求めるは倫理的に清く正しいお付き合い。一点集中愛のレーザービームでユイちゃんを狙い撃つぜ。
「俺は過去を振り返らない男なのさ」
「ハードボイルドだね。お姉さんの事は現在にしてもいいのよ?」
乗ったら突き放すでしょー?
「ま、それはそれとして」
さすがお高い女だぜ、脈無しと判断するや瞬時に切り替えやがった。
もう少し粘ってくれてもいいのよ?
「お仕事の話をしましょ。リリウス君に指名の依頼あるけどやる?」
「最低ランクの冒険者指名するとか勇気あるな。誰から?」
「カトリのパパから」
殺しの依頼かな?
「暗殺ならもう受けないよ」
「……受けた事あるの?」
シシリーたんが緊張に顔を強張らせた。
カトリたんから聞いてるかと思ってたが黙っていてくれたらしい。確かに貴族を暗殺したなんて吹聴していい話ではない。
冒険者同士の諍いはギルド管轄のお話で済む、というかギルドは冒険者同士の揉め事に他の組織の介入を許さない独立志向だが、貴族が関われば騎士団が動き出す。
騎士の本場サン・イルスローゼの六色騎士団なんて恐ろしい連中とはやり合いたくない。
「聞かなかった事にするわ。口は災いの素、これからは気をつけてね」
「うん、気をつける」
「素直な子は好きよ、それが口だけじゃない事を祈るわ。……そういう後ろ暗い依頼じゃないけど、アルにはもう関わらせない方がいいわね」
「依頼内容は?」
「アンセリウムの警備」
闇オークションの警備が後ろ暗くないってマジ?
「アンセリウムの警備は本来アルのクラン『トライデント』が専属してるの。つまりギルドを通さず自分で依頼を出して自分で引き受けてるようなものね。アンセリウムは秘密の塊、外部の人間に関わらせるなんて百害あって一利もないのにリリウス君を指名してるの」
おやおやお高い女なのに説明過剰ですね。もしかしてアルが誰かって聞いて欲しいの? アルトリウス・ルーデットのアルだってわかってるよ? 家族ぐるみで交友があるのは知ってるよ?
意図が読めない! 仕方ねえ、素直にコントロールされてやんよ!
「ずいぶん親しげだね?」
「カトリのご家族とは長い付き合いだからね。だから私から言ってやる事もできるの。次厄介な頼まれごとをされたらお姉さんに言いなさい、猛抗議してあげるから」
マジで親切心じゃん。
「俺もしかして好感度高いの?」
「……リリウス君変態ってだけじゃなくて鈍いのね。好きじゃなきゃおうちに入れたりこうして一緒にお茶しないわよ」
それもそうだな。
ギルドのカウンター内でお茶ごちそうになってる冒険者見た事ないもん。
相変わらず混雑してるギルドでは安い職員が駆け回り、ルーがいつもの悲鳴をあげている。
お高い女シシリーたんは本当に働かねえぜ。
「ちなみに報酬額は?」
「金貨120枚だね」
ギルドの取り分は報酬の四割。つまり俺が承諾するだけでシシリーたんはギルドに金貨80枚の利益をもたらすのか。
汗水垂らして走り回ってるルーよりいい仕事してそう。
俺と小一時間お茶してただけで金貨80枚稼ぐとか……
この後めちゃくちゃいいお返事で承諾した。
空中都市の貴族街にある一番大きなお屋敷の門を叩くと、あっと言う間に屈強な冒険者に囲まれてしまった……
全員がカトリたん並みの猛者だ。早くも帰りたくなってきた……
「お嬢の新しい恋人というのは君か! ハハッ、いい面構えしてるじゃないか」
「いい目つきだ、さては相当殺し慣れてるな?」
頭わしゃわしゃされたり肩を叩かれたり、温かな雰囲気で歓迎されてる。
今更帰るとは言い出せない。
「覇気があるねえ、大将が気に入るわけだ」
「うちの娘の婿にほしいくらいだ。ま、俺に娘はいねえがな!」
「さ、入れ入れ。大将なら地下だ」
「私が案内しよう、ついてきな」
超ハイレベル冒険者らしき妙齢の女性に案内されて屋敷の地下劇場の舞台へ行くと、年の頃四十前半の伊達男が飾りつけの指示を出してる。
劇場の飾りつけはオシャレの一言。
贅沢なのはもちろん、下品に落ちないセンスがある。この種のバランス感覚は審美眼だけではなく、経験が物を言うから難しい。単体で気に入った服でも組み合わせると微妙になるのってよくあるよね。あれと一緒。
振り返った伊達男卿はどんな男でも憧れてしまうほどの渋い微笑してる。
いい年齢の重ね方の見本みたいな男だ。
「よく来てくれたね」
この後めちゃくちゃ歓迎された。
特別な客のために用意されたであろう特別な応接室に招かれ、素晴らしいミルクティーをごちそうになる。落ち着かねえ……
「高額依頼すぎて怪しかったけど、とりあえず来てみました」
率直に言ってみると苦笑される。だろうねって顔だ。
「君の刃はあまりに鋭すぎる、必殺の刃など軽々に使おうとは思わん。今夜は少し難しい客が来るのでね、私の護衛を頼みたい」
「お言葉ですが卿を害するような敵に俺で役に立てますかね?」
「敵ではないよ。今夜の内はまだね」
戦闘の可能性が低いなら俺必要ですかね?
見た目だけは優しげで優雅に微笑む伊達男卿の意図が読めない。
シシリーたんとカトリたんにさえコロコロされてるのに、裏社会のボスに対抗できるわけがねえ。
「率直に言ってくださると嬉しいんですけど?」
「君にはアンセリウムの大まかな仕組みを学んでほしい。ルキア……あぁ息子には将来的にトライデントの武力を任せるつもりだ。カトリには資金源であるアンセリウムを任せたいと考えている。君にはカトリを支えてほしい」
率直すぎぃ!
軽々しく裏事情ぜんぶぶちまけましたね!?
全ての疑念が一瞬で吹き飛びましたよ!? コミュ力高すぎ君かよ!
「あのぅ、一つだけ問題が」
「ふむ、言い給え」
「カトリたんと破局したんですけど?」
伊達男卿の優雅な顔面にヒビが入る。
これ知らなかった奴だね。昨日の事だしね。
俺はめっちゃ早口で説明する。ハンス君が来た日から今日までの色々を無駄を省いて五分で説明したぜ。
「…………あれにも困ったものだ」
全部聞き終えた伊達男卿が眉間に皺を寄せて苦悩してるな。
変態の父親とかハゲそう。
「長い話になるが、どうか心して聞いてほしい」
そうしてルーデット卿が語り出したのは彼と二人の子が祖国から亡命した時の話だ。
フェスタ帝国は代々五つの選帝公爵が票を投じて次代の皇帝を決めてきた。ルーデット家もその一つで、慣習通りなら次代皇帝はルーデット家から排出されるはずだったらしい。
カトリたんのお兄さん世が世なら西方五大国の皇帝だったとか……
変態が皇女とか……
でも次代の皇帝位を欲したバーネット公爵ストレリアが他家と結託してクーデターを起こし、クライスラー家の皇帝ラジールを殺害して皇帝位を簒奪したらしい。
あの槍完全に国宝じゃねーか……
変態が国宝持ってるとか……
皇弟にしてクライスラー家当主ジャン・クライスラー近衛禁軍大将を始めとする国内の抵抗活動家は狩り尽くされ、国外に出た者は唯一の旗頭であるルーデット卿を頼ったらしい。
つまりクラン『トライデント』の構成員は皇室直属の禁軍と海軍の最精鋭で構成されているらしい。クランっつーか軍団じゃねーか……
他国への間諜に出してる構成員もいればフェスタ国内で亡命者の手引きをしている地下協力員もいるらしく、ギルドには三百名と届け出を出してるトライデントだが実際には二千人いるらしい。
その裏事情俺に教える必要あったぁ!?
二千人の亡命者の面倒見るんだから闇オークションくらいの荒稼ぎ必要だよね。地方都市一つ分の労働者養うんだもんね。
でもルーデット卿が本題と言ってから語り出したのは、彼がフェスタに置き去りにしてしまった妻と息子の話だ。
カトリたんには弟もいたらしい。
お気に入りのぬいぐるみみたいにいつも大事に抱えていた十歳の弟だ。レイシスというらしい。
「あれはレイシスの影を求めているのだ」
「少年愛の正体は弟の代わりを求める代償行為だと?」
「あれも昔はまともな子だった。どちらかといえば私よりも年上の男性に憧れていた頃もあったのだ」
あのショタコンが?
信じられない……
「レイシスを抱いていなければ眠れない子だったが、まさかあのような形で心が捻じ曲がるとは想像もつかなかったよ」
少年のお腹さすりながら眠るのそこからきてたのかー。
「そのレイシス君は今どこに?」
「処刑されたと聞く。もう八年になるか……」
一瞬、監獄くらいならステルスコートを使えば連れ出せるのでは?と思ったけど処刑されたんじゃな。
冥界からは連れ出しようもない。
「リリウス君、君の事は少々調べさせてもらったよ」
テーブルに三枚の書類を置かれた。
リリウス・マクローエンの調査結果。
最果てのマクローエンと呼ばれる風の魔剣を守護する地方貴族家の出身。この一族は風魔法に特化した優秀な騎士を代々排出する、帝国創設期から存在する名家である。
紳士名鑑に記載がない事から庶子であると推測される。
幼い頃に現騎士団長ガーランド・バートランドにその才能を見出され、再三にわたって勧誘を受けるも拒絶。理由は不明。
齢七つの頃から領内の治安維持活動に腐心し、マクローエンの悪魔とも呼ばれる。領内における評判は半々。特に女性からは蛇蝎の如く嫌われているが理由は不明。
昨年の夏頃から騎士団の訓練に参加。真面目な態度から騎士団内での評判は良。また同時期に発生したテロ組織青の薔薇によるラタトナリゾート襲撃事件では第一級の戦功を挙げる。
バートランド公爵家ロザリア嬢、イース財団のご令嬢との交友を確認されている。
今年冬に屋敷内にて変死した財務長官フラメル伯爵はマクローエン家の長女リザレアへと求婚していた事実から、暗殺犯ではないかと推測する。
今年春に帝国を出国する。
……だいたい合ってる。
「この調査書書いた人めっちゃ優秀ですね」
「君達帝国民が沿海州と呼ぶ地域に知人がいてね、問い合わせたらすぐに送ってくれたよ。どうやら君は沿海州の暗殺リスト上位に記載されているようだ」
最高に知りたくなかった!
ラタトナの一件クソ恨まれてますね!
「ここの、領内の女性からの評判はひどいようだが何かしたのかね?」
「上に顔の良い兄がおりまして、そいつが人気者なので腹が立って領民の前でつい何度も殴ってしまいまして……」
「理解はできるよ、兄弟など最も近いライバルのようなものだ」
おやおや?
「もしや卿にもご兄弟が?」
「私の方は良好な関係だったよ。兄とは互いに武を競い、切磋琢磨してきた。……もっともここ十年は会えていないがね」
亡命してるからね。気軽に里帰りなんてできるわけないし、お兄さんだって亡命してる弟のところへ顔を出すわけにはいかないだろう。
「この調査書に目を通した時なにを考えたかわかるかね?」
「率直にいきましょうよ。俺まだ子供だから海千山千のおじさまのお相手なんて無理ですよ?」
「いずれは私や私以上のタヌキとやり合ってもらいたい、そう考えている」
「だから破局しましたよ?」
「カトリの一件は長い目で見るとしよう。カトリ抜きで君が欲しい、我がクランに来たまえ」
空気的に断るとやべー感じはしない。
普通に勧誘してるっぽい。
「ま、急ぎはすまい。とりあえずは今回のようにたまに声を掛ける程度にしておくよ。だがこれだけは心に留めておいてくれ、君とは長い付き合いを望んでいるとだけね」
「まいったな……俺のどこが気に入ったんですかね? 以前もどこかの権力者に腹心になれとしつこく迫られていたものでしてね、理由があるなら伺いたいと」
「強い組織足ろうと思えば常に才ある人材を求めるものだ。私のような組織運営者からすれば君はすこぶる魅力的な人材なんだ。これでいいかい?」
「俺にお求めのちからはありませんとだけ断言しておきますが、納得はできました」
「よろしい。では本日の仕事の話をしよう」
呼び出した本題は勧誘であり、どうやらこれはただの美味しい高額依頼らしい。
蜂蜜たっぷりのミルクティーに口をつけながら、仕事の話に備える。
リリウスが去った後、シシリーはどうにも浮かない様子。
カウンターに頬を置き、ゴロゴロしてる。
「せんぱぁ~~い! お仕事してください~~~!」
ルーが泣きながら書類運んでるけどシシリーはゴロゴロ。ゴロゴロゴロゴロ……
どうにも浮かない様子だ。
これはただ事じゃないと気づいたルーが仕事の手を止めて聞き出してみる。
「カトリがさ、黙っちゃったんだってさ」
「何の話ですぅ?」
「あのいいわけ大魔王が二股かけてた恋人から不実を詰られて黙ったって話」
「痛いところ突かれたんですね……」
「そっちならいいんだけどね」
シシリーが深いため息をつく。
深い深いため息だ。呼吸しないと死んじゃうよって思ったくらいだ。
「あいつがさ、痛いトコ突かれたくらいで黙るわけないわけ」
「黙っちゃったんならさ、もう一個しかないじゃん。リリウス君もなんで気づいてやれないかな~~~」
シシリーがゴロゴロゴロゴロ……
お高い女は本当に働かないのだった。
魅了スキル解説
講義の前にまず一言いわせてほしい。
神代の言語でレスタ・シンパティアと書くこのスキルを魅了と翻訳した馬鹿者をどなりつけたい。おそらくはアシェラ神殿の何者かだろうがその者の語彙力と正気を疑うしかない。そして止めなかった周りの馬鹿者どもも同罪だ。
私ならばこれを親和性と書くだろう。無論共感や同調ではない。このスキルを持つ者と相対した四方世界の言葉持つ者は『余所者』ではなく『同郷人』として接するだろう。それがこのスキルの基幹だ。
例を用いよう。魅了を持つ旅人が縁も所縁もない土地で誰かに道を尋ねたとする。
魅了Fならば多少の警戒を帯びながらも知る事を教えてくれるだろう。
Eならば何の違和感もなく道を教えるだろう。
Dならば説明が幾分か丁寧になるだろう。
Cならば用事もなく近い場所なら道案内についてきてくれるかもしれない。
Bならば事情さえ尋ね、話をしたがるだろう。
Aならば食事でもしながらのんびりと旅の話を聞きたがるだろう。
Sに至っては家に招きかねない。
SSともなればもはや娘の婿になどと縁談までやってくるだろう。
もっとも魅了のSSなどアシェラ神殿六千年の歴史において一人のみの確認に留まるが。
無論例を挙げはしたが実際にはこの通りになどいくまい。あくまでこのような効果があるという一例に過ぎぬ。詳しくは我が著書『アシェラ神殿の大いなる誤り』を読み給え、我が英知の一端に触れられるのも学院生である諸君らの特権だ。
諸君らも知っての通りスキルはその土地に根差す神々の恩恵ゆえ地域固有のスキルも多い。最も有名な物でいえば私のようなフェニキアの砂漠の民にのみ発現するアシェラの加護『鑑定』だろう。万人が願おうが鑑定はフェニキアの民のみが独占する既得権益であるわけだ。
だがこの魅了は汎用スキルに分類される。つまりは世界中いずれの土地でも顕現する可能性があるのだな。
結論をまとめると魅了を持つ者は他者とのコミュニケーションにおいて大きな優位を得る。低位のスキルはほとんどが存在しないにも等しいささやかな効力しか持たぬが魅了は低位でも有益な数少ないスキルと言えるだろう。




