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王都地下迷宮

 バトラと仲間達のダンジョン攻略を特等席で見物したいわたくしリリウス・マクローエンには一つだけ大きな問題があった。


 ダンジョンの場所知らねえ……


 その辺の冒険者掴まえて場所を聞き出すもさっぱりわからん。初めての町で七ヵ所以上曲がる道とか迷わないはずがねえし、聞いてもそれどこの通りだか知らんし!


「これで案内して! 入口まででいいから!」


 冒険者に銀貨二枚握らせて案内してもらう。くそー、とんだタイムロスだぜ。


 王都地下迷宮は下層街の中心にある。暗い裏通りから階段を延々と下り、小川沿いのトンネルが入り口のようだ。


 迷宮の入り口を目にし、さあ飛び込もうという瞬間、背後から殺気!


 飛び込み前転で背後からの白刃をかわすが、けっこうやばかったな。

 攻撃してきたのは案内させた冒険者だ。


「へへ、ただの案内で銀貨二枚とは金のにおいのする小僧だぜ。有り金全部出すなら半殺しで済ませてやるぜぇ?」


「いまそーゆー面白いイベントいらないから!」


 躊躇なく背後から首を落としにきておいて半殺しとは笑わせる。


 ステルスコートからの―――ケツ穴ミスリルソード!


「ぐあああああ!」


 けっこう深く突き刺してやったぜ。その罪、トイレを見る度に思い出せ!

 ついでに悪党冒険者の財布をチョロまかして……


 いまそんなことやってる場合じゃねえ!

 ダッシュでダンジョンを駆け抜ける。二時間のロスは痛い、あまりに痛すぎる。


 一層はコボルトやローパーのような弱い魔物の巣窟だったが邪魔なやつだけ切り倒していく。

 少々迷ったが小一時間で二層に到着。あぁもうこんなことなら事前にギルドでダンジョンの地図見せてもらえばよかった! 有料だけど!


 二層もけっこう迷って二時間近く費やした。


 次だ次! ちゃっちゃか行くゾ!


 そして五層にたどり着く頃には午前四時になっていた……


 魔物の強さはラタトナに比べれば格段に落ちるんだけど広さも複雑さも相当なものなんだよね、さすがは世界屈指の高難度ダンジョンと呼ばれるだけある。

 こいつを五十何層まで攻略するとかステルスコート使っても二週間やそこいらはかかるぞ。

 騎士団も毎年毎年大変だな。


 つかそろそろ諦めた方がいいかもしれない……

 急いできたから道順の簡易マップもつけてねえし帰りも同じかそれ以上かかる。


 帝国では吸血コウモリと呼ばれる魔物の大型亜種を切り倒しながら二時間掛けて五層を抜けると……


「……は?」


 五層を抜けるとそこは大平原だった。


 見渡す限りが草原。吹きつける爽やかな風が草花を揺らし、吸い込んだ空気には香しい柑橘系のにおいも混じっている。


「ここ本当にダンジョンなんですかね……?」


 とてもではないが地下という感じではない。

 降りてきた階段と天井の高さが合ってないまである。確実に王都市街地まで到達していなければおかしい。それ以前に地下迷宮の中なのに青空って……


 遠く彼方の空に巨大な尖塔が浮かんでいる。ダンジョン内に遺跡ってことはあるまい。

 まさかと思って振り返ればいま降りてきたはずの階段が地面に埋まった下り階段になっている。では彼方の柱は次の階層への階段なのだろうか。どうして天地が逆転しているのか。


「オラちょっとワクワクしてきたぞ……」


 こういう摩訶不思議空間もファンタジーの醍醐味かもしれないね、予備知識なしで見るとビビっちゃうけど。


 ワクワクどころかハラハラドキドキだぜ……

 ちゃんと帰れるよね?


 三~四キロはあるだろうか? 彼方の柱に向けて歩いているとバトラたちグランナイツを発見した。見晴らしの良い丘に陣取ってご休憩という様子。へへ、ちょうどいいからお茶でも分けてもらうか。


「トキムネさんお茶をどうぞ」

「……空じゃん」

「え、ええ!? おかしいなあ、おかしいなあ、今淹れたばっかりなのにぃ!」


 うまかったんやで、ほんまかんにんやで。

 神官ちゃんいいお嫁さんになるで。


 当のバトラは見張りをメガネ男子に押し付けて、丘の縁でエルフ美少女と隣り合って座っていた。


「綺麗、ここが危険なダンジョンなんて思えないわ……」

「そうだな」

「ねえバトラの生まれた場所ってどんなところ?」

「冬は厳しく領民には辛い暮らしを強いねばならない過酷な土地だが、降雪を被った山林は世界中のどこよりも美しい土地だ」

「そっ…か。いつかあなたの故郷を見てみたいわ」


「その希望には沿えない。俺は故郷を追われた身だ……」


 なぁ~に悲劇の戦士気取ってるんですかねこいつは。

 ストーカー殺害未遂に、接近禁止を破っての不法侵入未遂で逮捕された変質者のくせに。


「だが、いつかこの身の潔白が証明され故郷に帰るその時には……君に故郷(マクローエン)の美しさを見てもらいたい」

「バトラ……」


 エルフ美少女とバトラの恋愛とか俺はいったいどんな幻覚を見せられているんですかね……

 とりあえずキスしそうな距離で見つめ合うのやめてもらえます?


 バトラらはたっぷり一時間休息して、再び歩き出した。


 行き先はやはり彼方の尖塔だった。見上げるほどに近づけばそれが天へと届くかのような螺旋階段だと発覚した。高尾山より高そうですね……


 神官のお姉さんからスタミナポーションを拝借。マラソンの後のこの一杯がやめられねえ、もう一個チョロまかしておくか。代金はちゃんと置いておくぜ。紳士たれ!


 螺旋階段を十歩かそこいらのぼった時だった。


 バチン!


 電撃でも浴びたみたいステルスコートが帯電したと思えばバトラの姿だけが消えていた。今度はいったい何なんですかね……


 振り返ればグランナイツのお仲間さんが階段の十段目か十一段目を踏んだ瞬間に姿が光の粒子に変わり、螺旋階段の上へと飛んでいく。転送魔法ですかね。え、これステルスコート使ってると弾かれる感じですかね?


 そういえばいつかも鑑定屋のエロいお姉さんの鑑定スキル弾いてたよねこいつ。


「ええぇ……これ俺だけ歩かにゃならんやつですかね?」


 試しに透明化を解除して十段目か十一段目を踏んでみるか。


 バチン!


 極彩色に帯電するの超怖い。ステルスコートが壊れたらどうしよう……


 今度は脱いでから踏んでみると―――一瞬で景色が変わった。


 眼下を見下ろせば果てのない地平線の光景が広がる螺旋階段のだいぶ上の方だった。今までダンジョンを魔物狩りする場所だと認識してたけどダンジョンっていったい何なの?


 とりあえず小脇に抱えたステルスコートは無事だったのでよかった。こいつだけ置いて転送されてたら戻るしかないところだったぜ。


 再び透明化して螺旋階段を抜けると、そこは見慣れたダンジョンの狭い通路でした。

 ちょっとホッとしたぜ。


 もしかして六層はご休憩用のスポットだったんですかね? ダンジョンさんの心遣いが憎いところだが、マジなんなのダンジョンさん攻略されたいツンデレさんなの?


 七層を攻略するバトラらグランナイツ一行はバランスの取れたチームだ。

 前衛を担当するバトラとサムライのトキムネが魔物とかち合い、神官のユイと魔法使いのクラウが状況を見つつ援護。エルフのラトファが背後を監視しつつ、前衛の援護をしている。

 でも背後の心配はご無用だぜ、後方から来るやつは俺が密かに排除しているからね。


「七層は魔物が随分と少ないわね……」

「挟み撃ちにされないだけでこんなに楽になるなんて、私達きっと運がいいんですね!」


 いえ俺のおかげです。


「バトラは幸運のアシェラに愛されているんだな!」


 いえ俺のおかげです。


「これは何かの偶然でしょうが、魔法力の温存ができるのはありがたい。これなら本当に十層まで到達できるかもしれません」


 だから俺のおかげです。


「おいメガネ、俺のバトラにケチつける気かよ?」

「加護を持たぬなら愛されているとはならぬでしょう。ですがバトラの力量についてはこれ以上ない信頼を置いていますよ」


 このサムライ君バトラ好きすぎるだろ。やんちゃな若武者なのにホモなの? 二人の絡むスチル絵とか見たくないよ?


「はいはい、バトラで喧嘩しない。バトラが困ってるでしょ」

「好意は素直に嬉しいが不和を招いては困るな。ここから先はモンスターも強くなる、気を引き締めていくぞ」


 気を引き締めていく、その言葉通り攻略の意思を再燃させたグランナイツは危なげなく七層八層を短時間で攻略していった。やはりギルドから地図の写しを手に入れていると早いね。


 九階層もまた少し様子の違う場所だった。

 アリの巣穴のような細い通路と大部屋の繰り返しで、出てくる魔物もアリを巨大化させ武器を持たせた姿だ。

 飾りけのない金属棒を振り回して襲い掛かるジャイアントアリさんマークはけっこう強い。ファーストアタックが確定で取れる俺でさえ多少苦労するやつだ。何しろ首を落としてもしばらく生きていてむやみやたらに金属棒を振り回しやがる。


「せいやぁああああああああああああ!」


 バトラの振り下ろしたオリハルコン製の魔剣が金属棒ごとジャイアントアントを真っ二つに両断する。


「キシャー!」

「キシャー」


 ジャイアントアントがバケツ一杯はある大量の毒液を吐くが―――


「風よ、逆巻け!」


 魔剣から生まれた風が毒液を吸い上げ、逆にジャイアントアントにぶっかけていく。


 毒液に目をやられて悶え苦しむジャイアントアントに矢が突き立ち、サムライがその首を跳ね飛ばす。魔法使いの使う地系束縛によって動きを封じ込められた三体もバトラが―――


「吼えろ風の魔剣ラタトゥーザよ、インパクトスマッシャー!」


 一薙ぎで滅殺する。


 すげえ威力だ。中級攻撃スキル『インパクトスマッシャー』に風の魔剣のちからをプラスしているのか。


 つかラタトゥーザって親父殿の愛剣じゃねーか!

 あれか、追放される可哀想な息子に家宝あげちゃった系か!?


 マクローエンは代々風の魔剣を伝え守る一族だ。一族の男児は必ず風の系統魔法に特化し、騎士として帝国に奉仕している。俺は野良犬だからか風魔法の素養もないんだけどね。


「さすがだぜバトラ!」

「お前とじゃなければこうはいかないさ!」


 爽やかな汗を流しながら拳を打ち合わせる二人は青春まっ盛り。


 王都地下迷宮は温いダンジョンではない。魔物の出現頻度も多く、魔物の接敵を簡単に許す地形の悪さも悪質と呼ぶ他にないが、グランナイツは危なげもなく攻略していく。


 こいつらの実力は本物だ、特にバトラとメガネ君がやばい。


 がちがちに防御を固めた重装甲騎士として壁役を務めながら攻撃力も敏捷性も軽騎兵並みのバトラ。

 後衛として全体の戦況を見ながらメンバーを適切に運用するサブ指揮官であり、バトラ以上の攻撃力を有するウィザードのメガネ君。

 明らかにこの二人だけ実力が飛びぬけている。


 九層も終わりに近づくと土状の何かが通路の真ん中で盛り上がる光景が続いた。最高に嫌な予感がするぜロマ〇ガ的に。


「これは何だ?」


 全員から視線を集めたメガネ君が知らないと首を振る。


 アリです。


「他の冒険者から聞いたところ、こういったものを九層で見かけたら逃げ帰れと言われました。二部屋なら対処はできるとも」

「どういう意味だよ?」


 だからアリです。


 この土の中全部にアリさんの幼生が入ってます。


「さて、そこまでは。冒険者というのはあまり親切な方々でもないですからね」

「見てわからないものは考えてもわかるものではない。だが決めるならここだろう、九層に満足し引き返すか、十層に到達し名を挙げるか」


 バトラさん恰好いいっすね。帝国での馬鹿キャラどこに置いてきたの?

 バトラが仲間の顔を一人一人確認していく。みんなやる気満々だ。


「ふ、わざわざ確認するまでもなかったか」


 グランナイツの歩みが再開する。


 不気味に胎動する大きな畝のようなものは次の部屋にも次の部屋にもそのまた次の部屋までも続いていた……


「五部屋か」


 胎動する大きな畝は次の階層の階段からやってきているようだ……


 暗く冷たい風のやってくる十層まで降りると、そこはワンフロアぶちぬきの巨大な大部屋だった。


 大部屋の奥には緑に発光する大きな扉と、その前に鎮座する巨大な影。

 ぬめぬめとした光沢のそいつはよく目を凝らせば巨大なアリのようにも見える。胎動する畝はそいつから生えていた。


「眠っているのか……?」

「なに、こいつが階層主?」

「見た感じそう判断するしかねえな」

「……こんなにも禍々しい魔法力は初めてです」

「ファーストアタックが取れるなら好都合だ」


 グランナイツの面々が頷いた瞬間、畝の数ヵ所がぼこっと盛り上がった。


「キシャー」


 畝から現れたのはジャイアントアントの幼体だった。

 幼体でも成人男性程度の大きさがあるとかどんだけ。


 大部屋のあちこちから赤い瞳が灯る。それらすべてが目覚めたジャイアントアントの戦士だとしたら百や二百ではきかない。最後に目覚めたジャイアントアントの女王ともいうべき別格の巨大個体が咆哮する。


 それまるで子供を守れと命じるような叫びだった。


「来るぞ! 出口を背にし、守備陣形を取れ!」


 さすがに騎士学院いってただけあるね。正しい判断だ。


 でもこのダンジョンの形から推測して階層境界が機能してない、九層十層混合階層だよねここ。絶対九層からも増援が来るからそっちは俺が対処するぜ。


「ソードスマッシュ!」


 下級攻撃スキルを発動して畝にミスリルソードを叩き込む。


 あれれ、お前攻撃スキル使えたのって思ったそこのあなた、実は何回も使ってましたぜ。ハゲ人狼のハゲ頭に叩き込んで先代ミスリルソードが折れちまったあの時とかね。


 畝の中で孵化する時を待っていた幼体がキシャーと悲鳴をあげながら絶命する。五匹を潰したところで上階から地鳴りのような足音。


 やってやんよオラぁぁああああああああああああ!


 轢殺される前にジャイアントアントの首に腕に飛び乗りスマッシュ! ぴょーんと飛び上がって後ろからやってくるアリさんマークの頭部にスマッシュ!


 ったくキリがねえぜこいつは!


 スタミナポーションを一口煽ってさらにやってくるアリさん軍団にもスマッシュの雨あられ。へへ、この雨は頭蓋を割るぜえ!


 計二十七匹のアリをぶっ殺したところで九層に到着。


 素早く畝を潰し回っている間に、成体が二十四匹きたが開けた場所ならやりやすいぜ。


 第二陣を始末してから懐中時計で時間を確認すると戦闘開始から十五分が経過。そろそろあっちの様子も見てくるか。


「怯えよ、失落する鳥のように、凍りついた町のように 恐慌(フィアー)

「風の魔剣よ―――トルネードスラッシュ!」

「お願い、精霊よ私にちからを貸して! ニードルスピアード!」


 けっこう善戦してますね。

 メガネ君が状態異常で戦列を乱し、アタッカーが間断なき攻撃スキルの連発でアリの死体を積み上げている。


 グランナイツの周囲は無数に積み重なったアリの死体で防壁みたいになっているぜ、やるじゃんバトラ。


 こうなれば防壁を乗り越えてきた個体を順番に殺せばいいだけだが、体力は持つのか? さすがに千匹はいないと思うが……


「ひかりよ、慈悲深きアルテナの御手よ、わたしの大切な仲間たちの疲れをお癒しくださいまし―――リジェネ―ション・ヒーリング!」


 あれれ俺まで回復してますね? 脈動回復の対象は範囲内にいる人間なのかな? だが好都合だ、防壁の外に出て遊撃してくるぜ!


 五十匹くらい仕留めたところで背後から悲鳴。神官ちゃんか!?


 素早く戻ると九層階段から溢れ出してきたアリが後衛職を襲っているシーンだった。

 バトラら前衛は防壁を這い上がってくるアリへの対処で後ろに戻れてない。油断したが俺は悪くねえ……はいはい俺のせいですぅぅ!


 金属棒の一撃に押しつぶされかけていた神官ちゃんを担いで救出。エルフのお姉さんの隣に置いて、すぐさまスマッシュ三連撃。メガネ男子の腕をかじってるアリさんにもスマッシュ。


 素早く五匹を全滅させて穴からやってくる連中も皆殺しじゃああああああああああ!


「クラウ、いまヒールを!」

「すまない。だがいったい何が起こっているんだ……?」

「ジャイアントアントが勝手に死んでいくなんて……」


「あ、あのっ! いま一瞬ですけど見たことない子がわたしを助けてくれて!」


「「ユイがヒール使いながら混乱してる!?」」

「ほっ、本当なんですぅぅ~~~」


 雑談する暇があったら援護してくれます?


「本当に幸運に愛されているのかもしれませんね」


 愛してないけどリリウス君という妖精で悪魔な変態がついてるよ!


「九層までぶち抜きます! 収束ファイアーランス!」


 メガネ男子が九層への階段に向けて特大の熱線をぶっ放した。いい感じにバタバタ倒れていくぜ。


「背後の守りは私に任せてください。みなさんは陣の保持を!」

「キリがないわよ!」

「キリならば必ずあります。今は耐え凌ぐ時です! 雑魚の全てを打ち倒した時こそ攻勢の時、今は陣の保持に専念なさい!」


 どうやら伊達メガネではないメガネ君みたいだね、さすがに冷静だわ。


 九層からの増援はメガネ男子に任せてよさそうだ。よっしゃ、階層主を始末してくるか!


 ちょっとしたビルくらいある階層主が赤い目を明滅させながら入り口での戦闘を見つめている。

 心配そうにしてるけど母性とかあるんすね。知りたくなかった! 始末しづらくなるから!


「チャージカウント!」


 攻撃補助スキル『チャージカウント』は一時的に体内魔法力を搔き集めて攻撃力を引き上げる。理論上魔法力を集めれば集めただけ強力な一撃が放てるが、大きく集めればその分制御に失敗しやすくなるので三秒分だけ集める。制御ガチャさん俺に厳しいんだ。


 一、二、三、さあ放つぜ大技だ。見たら死ね、お代はそれで十分だ!


「チャージド・ストライク!」


 ガカァン!


 …………マジか。硬くてダメージ与えられない系か。

 無暗に狙うのはいくないね。腕の関節の継ぎ目をしっかり狙おう。三秒待って……


「チャージド・ストライク!」


 ズバッ!


 第二関節からぶった切ってやったぜ。


「キシャァァァァァ!」


 アントクイーンがものすごい勢いで暴れ出した。家一軒分くらいの巨大質量の腕を振り回して暴れるせいで回りのジャイアントアントまで吹っ飛んでる。

 落ち着け、可愛い我が子が押しつぶされてるぞ!


 やはりアリに母性などあるはずもなかったか。だがこれでだいぶ戦いやすくなったぜ。


「チャージド・ストライク!」

「チャージド・ストライク!」

「チャージド・ストライク!」

「チャージド・ストライク!」

「チャージド・ストライク!」

「チャージド・ストライク!」


 俺は手間を惜しまないぜ。手足を切り取り着実に弱らせてやる。


 けっこうな時間をかけてアントクイーンをダルマにしてやると―――


「そこを退けぇぇぇええ!」


 痺れを切らしたサムライのトキムネ君がアリさん包囲網を抜けて、四肢を切られたダルマクイーンまでやってきた。ちょっとだけ防衛の方が心配です。


「こいつを食らえ、食らって死ねぇぇぇ月光牙ァ!」

「チャージド・ストライク!」


 サムライ君の繰り出した遠距離斬撃波がダルマクイーンの首の接続部に当たってカキーンと弾かれ、続いて俺の放ったチャージド・ストライクが首を叩き割る!


 アントクイーンが断末魔の叫び声をあげ、やがて絶命した。


 その瞬間辺り一面に蠢いていたジャイアントアントが土に還り、十層階層主戦はこれにて終了したのである。


 倒すと土に還る魔物とか初めて見ましたがダンジョンへの謎が深まるばかりですぜ。

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