はるばる来たぜ伝説の都ベルサーク!
昔々偉い人がこう言ったそうな。
道がわからぬなら、わかるやつの後をつけちまえホトトギス。
うっそでーす! 言ってませーん! エルフ美少女を騙くらかしてベルサークまで道案内させるぜ。途中から思った以上の大事になって内心アワアワしてたけどベルサークに行けそうだぜ……
エリオ君にはマジどれだけ謝罪しても足りない……
すまん、後でめっちゃ謝るから……
「悪知恵の働く奴だなぁ……」
「こんなアホな手が通じるとは本気で思ってなかったんだけどね」
「じゃあ何でやったんだ?」
「悪ふざけ」
おい、その邪悪な悪魔を見る目つきはやめろ!
おばばさまとレテのストーキングから半日ほどが経つと森の様子が変わり始めた。
樹齢何千という大樹ひしめく森に霧がかかる。
ミルクのように濃密な霧のせいで視界はひどく不明瞭。足元さえも満足に見えやしない。
迷子になるのは嫌なのでエルフ二人と距離を詰める。
はぁはぁ……お尻はぁはぁ……エルフってなんでホットパンツ並みのスカート丈なの? こんな襲われても文句言えないよ!
なでなで……
「キャッ!」
「どうしたんだい?」
「いま誰かがお尻を……」
「あははは、妖精にでも悪戯されたんだね。ここいらは境界に近いからそういう連中もいるのさ」
妖精に間違われるほど愛らしいなんてさすが俺。さす俺。
「悪魔の間違いだろうな」
「馬鹿野郎、悪魔ならケツにスプーンねじ込んでるところだ!」
「そいつは悪魔じゃない、変態だ」
知ってる? 妖精で悪魔のリリウスっていう変態。
やがて森から緑豊かな渓谷に入った。緩やかに傾斜する谷底への道は暗く、地の底まで続くかのように深い……
日も届かぬ濃霧の渓谷では時間の感覚も薄い。もう何時間と歩き、後何時間の旅が待っているのか……
おばばさまとレテは下り坂の途中で断崖に沿う狭い山道に逸れ、今度は上り坂をひたすらに歩く。
「エルフはこんな小娘まで健脚なのか……」
小娘て俺より一つ二つ年上くらいのお前が言います?
フェイが珍しくぼやいたのを不審に思い、懐中時計を取り出して確認するとムーンフェイズが二つ数字を重ねていた。丸々二日歩き通しとは気づかなかった。
「遅れるなよ、あのお尻を見失うと遭難する」
「つまりあの尻が僕らの命綱か」
そう生命の源泉。俺らは皆あそこから誕生した。
生命の神秘に想いを馳せていると霧がスゥっと晴れていった。
今まであれほど深かった霧が一瞬で晴れ渡る。
そして現れたのは古代の神殿とも呼ぶべき壮麗な渓谷の都だった。
くり抜いた岸壁の中に無数の支柱が並び立ち、耳の長いエルフ達が静かに暮らしている渓谷の古都……
俺は思わず息を呑んでその美しさに見惚れる……
この世にこれほど素晴らしい芸術品があるなど想像さえしたことがなった。
細い天蓋に巻き付いた蔦が絡まり合って天を覆い、不思議な色合いの木漏れ日が照らす苔生した地面に咲き誇る輝く花々。
暗い影の落ちる都だというの自然と発光する床とそこを往く、永遠に美しいままの人々。
大地から噴き出した清廉なる水が織りなす虹が百も二百も都に満たす様は地上に降りた極光の様子。
延々と続く回廊の壁にびっしりと描かれた精緻な神代の絵歴史書は俺は我知らず高ぶらせていく……
どれほどの言葉を重ねればこの都の美を伝えられるだろうか。どれほど時間が必要になるだろうか。ほんの一端を今見えているだけでさえ伝えきれないというのに……
「こ…これが古の都ベルサーク……」
「本当にベルサークまで来ちまったのか、なんだかお前がすごいやつに見えてきた」
俺らの感動は置いといて目の前では二人のエルフが別れを惜しんで抱き合っている。眼福である。片方ババアだけど、まだ三十代後半くらいの容姿だから全然抱けるけど。
「さ、あたしが連れて来られるのはここまでだよ。後はあんた一人でお行き」
「おばばさま、ありがとう。本当にお世話になりました」
「幸せにおなり」
感動の別れもそこそこに涙を振り払ったレテが都を進む。でもあの子誰に呼ばれたわけでもないからすぐ里に引き返すことになると思うんだよね。レゴラスなるLORに出てくるエルフに呼ばれた的な話は俺プレゼンツだし。
「レテ、帰り道覚えてるかな……?」
「遭難したらお前のせいだぞ」
遠ざかっていくレテの背中を不安げに見つめる俺達だった。
くっ、己の無力が憎い。
「さて、ここにいるのは本物のハイエルフ、つまり古き神々の末裔である精霊種だ。この先は今までのようにはいかないぞ、細心の注意を払って行動する必要がある」
「俺が泣きながら逃げ帰るのを見物しに来たんじゃなかったか?」
「……よく考えたら僕まで逃げ帰るはめになるじゃないか」
やはりアホの子なの?
普通最初に気づくよね?
俺達はとりあえず休息を求めた。そこら辺を歩いていたお尻のナイスな美少女をストーキングして突撃お昼の晩ごはん。葉野菜ばかりのサラダをもりもり盗み食いしてベッドでゴロゴロする。
「本当に誰にも気づかれないのな……」
その恐ろしい化け物でも見る目やめてくれます?
「完全なる潜伏魔法か、お前みたいな変態に与えてはいけないものなのに……」
その恐ろしい変態を見る目やめてくれます?
俺そこまでやべー変態じゃないよ。見えないのをいいことに一緒にお風呂入るだけで指一本触れない善良な変態だよ。触れた瞬間に見つかっちまうからな!
「それでお前の目的はなんだ? ベルサークの秘宝か、それとも封じられし神々の遺産? まさかハイエルフの王を殺しに……」
「嫁探し」
真顔になるな。
耳をほじるな、絶対に聞き間違えでないから。
「……よく聞こえなかった、もう一度言え」
「お嫁さんを探しに来た」
おい、馬鹿を見る目だけはやめろ!
俺はたしかに変態かもしれんが侮られるのは好きじゃないぞ!
「言い方が悪かったな。つまり俺好みのナイスなお尻をした美少女エルフを口説いてラブラブエッチな青春を送るために来たんだ」
俺の壮大な野望にひれ伏せ愚民が。
「けっ、馬鹿が」
「……お前が修行中ってのは知ってるけどさ、本当に金玉付いてるの? 健全な青少年通り越してもはや生物としておかしなレベルだよ?」
「お前が人の基準値なら今頃エルフは狩り尽くされて地上から消えてるからな。いや、子供を作り過ぎてエルフの世界になってるかもしれん」
人類総エルフ計画か、一考に値するな。
だが俺の遺伝子が入ると美しいエルフ族に目つきの悪さがプラスされてしまうのか……姉貴元気かなぁ……?
「ど、どうして泣き出したんだ!?」
「故郷に残してきた姉貴に嫁の貰い手がいるか心配で心配で……」
「どうして姉貴さんの話になった!?」
フェイのツッコミスキルが上がっている気がするぜ。俺のおかげだな!
一時間くらいゴロゴロしてたら元気マックス! へへ、伝説の都を前にしてゴロゴロなんてしてられるかよ、さっそく探索に行きたいぜ。
「おーい磯野ー、美少女探しついでにハイエルフのお宝パクりにいこーぜ!」
「磯野誰だよ、っつか清々しいまでの悪党だな」
と言いつつ付いて来るフェイまじツンデレ。
渓谷の古都ベルサークを超簡単に例えるとグランドキャニオンを緑豊かにしたような渓谷だ。雄大な大自然と豊かな水源に恵まれた壮麗な神殿造りの都は見るに楽しく、盗み回るとさらに楽しい最高のトレジャーハントスポットだ。
差し渡し数キロはありそうな渓谷の両岸から石造りの橋を架けられたハイエルフ城に潜入して宝物庫を荒らしまくる。へへ、こいつは高そうな短剣だな、チョロまかしておくか。
俺も倫理観的にさすがに泥棒はどうかと思うんだ。でも伝説の都まで来て宝探ししないやつってこの世にいると思う? いないね、俺が断言するぜ!
「僕も共犯で盗み食いやら散々やらかしたから何も言う資格はないが、これはもう完全に泥棒だろ」
「城にある物はパクっていいってドラ〇エさんが教えてくれたんだ」
「ド〇クエさん何者だよ……」
深く考えなくていいぜ、ノリで言ってるだけさ。
「お、こいつはアロンダイク製の長刀だな」
その金属聞いたことないやつだな。
「へへへ、でもお高いんでしょ?」
「なぜ売る前提なのか。こいつは僕が貰っておく」
フェイはんも泥棒が板についてきましたな~。
俺もそろそろミスリルの短剣から持ち替えたいんだよね。いっちょ伝説の聖剣的な何かを探してみますか。
「おい! こいつすげえ高そうだぞ!」
「うおっ……また趣味の悪い金ピカのレイピアだな。純金だろこれ、とりあえず貰っておけ」
「フェイはんも壊れてきましたな~」
「路銀は多いに越したことはないからな」
俺達は目を金貨に変えて宝物庫を荒らし回った。
金になりそうな物から強そうな武器まで、片端から頭陀袋に詰めていったぜ!
伝説の都最高です!




