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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
第8章 覚醒するエースの風格
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第88話 闘志のVFマスク戦隊 Ⅰ

 サクラがアズールたちを呼んでいる。あと数分もあれば、駆け付けてくれることだろう。

 それまでにルベールたちがやるべきことは、ただ一つ。少しでもディメテルの植物群を減らすこと。

 狙い目は、マカリフォン及びバロメッツの大樹。しかし、人海戦術に押されて身動きもままならない状況。


「皆、ここは下がってくれ! 姐さん、みんなを回復させてくれ」

「分かったで。で、レイジはんとルベールはんは、何をしはるつもりなん?」


 アザミがサクラやギュトーの回復のために戦線を離脱。

 レイジとルベールは、互いに少し距離を取って前線に立っている。二人の目には、二本の大樹とディメテルが遠くに映っている。


「ルベール、コレを!」

 レイジは、赤いVフォンをルベールに投げ渡した。


「サンキュー! こんな状況でもなけりゃ、すぐにでも変身して敵をぶっ飛ばせるのによ……」

 今は、大軍の目の前と状況が悪すぎる。レイジがせっかく考えた作戦も、実行に移せるかどうか判断に困る所。


「……アンタと一緒にアレをやろうと思ったけど、少し厳しいな」

「アレか。やりたいことは分かるが……」

「難点が二つ。大軍の目の前に二人も無防備になる事、アンタが変身していることが前提って事」

「俺なら、平気だぜ。問題は、ただでさえ少ねぇ戦力を二人も使うことだな」


 レイジたちの狙いは、二人の熱気によって大樹を引火させること。

 しかし、大軍に混じって特攻ヤローがいる状況。バハラやカトルーアの持つ戦力を足しても、せいぜい40いるかどうか。そのうちのエース格二人を欠いて、さらには守りながら戦う。

 成功すれば、ディメテルの戦力増加を抑えることが出来る。しかし、ディメテルには、それをされても平気なほどにカードを持っている。

 燃えることのない“プーチンムー”及び、倒れた兵を蘇らせる“ゴータミーのケシ”というカード。まさに、薄氷の上を踏むような作戦。


「……考えている時間はないわ。とにかく、やるかどうかだけ早く決めなさい!」

 レイジが悩んでいると、カトルーアは急かしてきた。


「やるっきゃねぇだろ。俺は変身しなくったって、結構やるんだぜ? お前もレイジも散々……」

「はいはい。じゃあ、早く始めなさい」

 カトルーアは、長くなりそうなルベールの自慢話の腰を折った。それでも、凹むヒマは一瞬たりともない。


「行くぜ、ルベール!」

「ああ! とびっきりの炎であの植物女をビビらせてやろうぜ!」


 レイジとルベールは、肩幅ほどに足を開き、拳をグッと握りしめて、脇を閉めた。

 そして、雄たけびとともに全身に力を入れると、二人の身体が激しく燃え始めた。


「はああああああ……!」

「ぅおおおおおお……!」


 まだ、足りない。二人の求める温度は、向かってくる植物兵が発火する程度ではない。

 もっとアツく、もっと激しく。身体と精神をいじめ抜いて、炎の勢いを挙げていく。


「二人とも、何を……」

 黒装束ということもあってか、早くもカトルーアの顔に汗が浮かぶ。

「何をするって、地面融かすんだよ。根付く地面がなきゃ、どんな木だって立たねぇだろ?」

「だから、賭けに近いと思って悩んでいたんだ」


 火に弱いという常識は、“プーチンムー”を持つディメテルの前では通用しない。

 そもそもの木の弱点からアプローチをかけようという作戦。カトルーアは、すぐに理解を示してくれた。


「皆、話は聞いての通りよ。全員、レイジとルベールを守るように!」

 カトルーアは、援護の号令を出した。すると、遠くから魔法を連射していた部隊が一気に前線に躍り出た。


「レイジ氏とルベール氏を守るとあらば、某の秘密兵器の出番ですな!」

 ジャンク・ダルク号内のバハラは、ドヤ顔でマル秘マークのボタンを拳で押した。

 すると、これまたマル秘マークが描かれたシャッターが開いた。そこから現れたのは、高さ250センチ程度のブリキのおもちゃたち。

 昔懐かしの昭和ロボたち。レイジのお父さんの世代なら、まず間違いなく懐かしさを覚えるだろう。そんなロボット集団が、バハラの号令を待っている。


「いっけえええええ! “超合金クルセイダース”!」

 バハラが、拳を高く振り上げると、超合金たちの目が一斉に光った。一気に発進すると、ライフルだの剣だのドリルだの、各々の得意な武器で植物兵を屠っていく。

 この男、ただの魔法少女愛好家ではない。ロボットアニメにも明るい。そして、一からこの小隊を作り上げたのだ。

 これほど精巧に作られた超合金の騎士を見たレイジは、「才能を買って良かった」と確信した。


「そんなに強いモノ、まだ隠してたの? どうして最初から……!」

「カトルーアたそでしたかな? 秘密兵器というのは、ここぞで使うからこそ秘密兵器なのですぞ!」

「た、“たそ”って……! まぁ、いいわ。早くその秘密兵器でルベールたちを助けなさい」


 このバハラという男、アニメや漫画の見過ぎである。カトルーアは、そう思った。

 バハラが目を輝かせながら言っていることが想像できたが、彼女には秘密兵器のロマンが全く理解できなかった。

 モノホンほどのスペックもサイズもない。それでも、超合金集団は押せ押せムードで果敢に攻め立てる。


「おい、レイジ! 甘いぞ、まだまだンなモンじゃねぇだろ!」

「そっちだって、変身できなきゃ弱いんじゃないか!」

「言いやがったな!」


 互いに甘いだのなんだのと叱咤しながら、レイジたちは気合を入れ続ける。少しずつではあるが、レイジたちの足元が赤く光り始めた。

 レイジやルベールの全身に、滝のような汗。顔は紅潮し、腕の青い血管が浮き出てはドクドクと脈打つ。そのパルスに合わせてか、炎が少しずつ大きくなっていく。

 隣には、アツさで絶対に負けたくない相手がいる。レイジの火力が上がれば、ルベールの勢いも増す。その逆もしかり。


「アンタら、何を張り合うてんの?」

「アザミさん、意地の張り合いはライバルの華ですよ。彼もいつの間にか競争相手に恵まれたものですね」


「この熱気……まさか、マカリフォン達をあの距離から燃やすつもり? 甘いわね“プーチンムー”!」


 ディメテルが指を鳴らすと、“マカリフォン”たちの周りに、燃えない木が生い茂った。

 しかし、狙いは引火させることではない。どれだけ燃えない木に阻まれようと、レイジたちはお構いなし。

 さらに、剣やドリルを持った超合金たちが、木を斬って穿つ。だが、たった二本の大樹の硬さは鉄以上。そう簡単に倒せるようなものでもなかった。


「もう少し、もう少しだぞ! レイジ!」

 互いに互いを高め合う熱気は、地を這って二本の大樹の根元にたどり着いた。

 岩さえも融ける温度ではあるものの、兵を呼ぶ大樹たちが引火する気配はない。


「死神女、今だ! 風だ、風を起こせ!」

「そう言うと思って、準備していたわ。“ロン・フェオン”!」

 カトルーアの目の前には、巨大な魔法陣。そこから、龍が吠えているかのような突風が吹き荒れた。

 それは、レイジたちが巻き起こした炎の勢いをも加速させる。黒羊に乗った女騎士たちが、消し炭へと変えられていく。


「その女の魔術なら完封できますわ! “モーリュの薬”」

「そんな事、想定済みだぜ! 何度も同じミスしやがって……」

「ああ。何度だって言い聞かせるぞ! 俺たちの炎は、魔法なんかじゃない!」


 魔封じの薬は、カトルーアの起こそうとする風を防ぐ。しかし、二人の情熱までは、かき消すことは出来ない。

 情熱は、地を這い、じわりじわりとコンクリートの大地を赤く染め、融かしていく。


「俺が巻き起こす風なら……こんな薬にも屈しない! “ウィンド”!」


 レイジの回し蹴りから、強烈な風が飛んできた。その鋭い風が、“プーチンムー”の森ごと二本の大樹を傾けさせた。

 カトルーアの風よりも弱く、効率も悪い一撃。だが、それでも確実にモーリュの薬を突き破って


「力技で風ね……多分、出来る人はたくさんいるけど、アナタのその身体じゃ数発しか持たないわね」


 レイジは、まだ16歳。カルミナに来てから本格的に鍛え始めただけあって、まだ身体が仕上がっていない。

 精神エネルギーを使うというよりは、身体能力に任せた一発。形にはなっているものの、レイジの求める成功には程遠い。


「な、何度だって植えて、兵を呼び起こすまで! “マカリフォン”! “バロメッツ”!」

 二つの球根を植えると、再び大樹が根付いた。あっという間に成長すると、刹那の間に実として羊と女を実らせる。


「“ゴータミーのケシ”!」

 一度は倒れた兵にケシの実をばらまけば、再び立ち上がる。レイジたちの脅威として、何度でも這い上がってくる。

 悪夢、再び。湯水のように湧き出る“黒羊に乗った女騎士”がレイジたちを攻め立てる。

 これだけ死力を尽くして倒しても、またすぐに蘇ってしまう。そんな絶体絶命の状況、ようやく助っ人が現れた。


「“斬鉄剣”!」

 鋭い刀の一撃が、バロメッツの木を斬り倒した。鉄さえも切り裂く剣術の使い手・アズールだ。


「アニキ、みんな……!」

「大丈夫か、レイジ!」

「なんとか……って感じだよ。まさか、こんな強敵に出会うなんて」

 レイジは、先ほどの炎を出した反動で、息も絶え絶えの状態。

 このディメテルという女、まかり間違ってもレイジが一騎打ちを仕掛けて勝てるような相手ではない。仲間の力を借り、最大限の兵力及び本気の本気があって、初めて対抗できる相手。


「げっ……デズモンド社の最高幹部じゃん! 本気で勝てる相手じゃなくね?」

 メレは、ディメテルを一目見るなり、顔が青ざめた。


「でも、やるしかないようだ。一騎当千の敵が相手でも、リーダーがその気ならば」

「ああ! 俺は今、最高に燃えているぜ! でもよ……こいつらの前じゃ、変身の隙なんてありゃしねぇ!」

 ルベールは、Vフォンを握りしめ、歯ぎしりした。何度も阻まれ、歯がゆい思いをしてきたのだ。


「だったら、下がってな……!」

 フォードの背後に、鬼神の幻。その圧倒的な気迫の前に、黒羊の大軍が、その動きを止めた。

 ルベールは、ただただその気迫に驚いた。「自分もいつかあの境地に……」そう呟き、目標をしたためる。


「“バロメッツ”も“マカリフォン”も! 皆、ひるまずに立ち上がるのよ!」

 ディメテルも、負けじと怒号で対抗した。

 産みの母という存在は、時に厳しいものだ。それが植物でも分かるらしく、ディメテル兵は再び奮起した。

 フォードの気迫に真っ向から対抗して、打ち勝ったのは彼女が初めてだ。フォードも余裕の表情を変え、一気に警戒心をむき出しにした。

 それでも、5人が変身する隙は十分与えた。フォードは、ルベールに目配せする。


「行くぞ、お前ら!」

 ルベールの掛け声とともに、5人は一斉にVフォンを構えた。

 5人の「VFチェンジ」の掛け声が、夜空にこだました。緑、黄、赤、青、桃の5人が集う。

 VとFを掛け合わせたようなマークを仮面にあしらい、白いスカーフに胸のV。これこそがVFマスク戦隊。

 ルベールは、全員が揃って変身できるチャンスをずっと待っていた。心強い仲間が横にいることで、彼のボルテージも上がる。


「ハートが燃え、ソウルがたぎる! 真紅の炎の王者、マスクドレッド!」

「揺蕩う流れを刀で切り裂く。紺碧の水面の王者、マスクドブルー!」

「想いを貫く一本の矢が天を穿つ! 朽葉の雷の王者、マスクドイエロー」

「父なる大地の怒りをこの斧に籠める。新緑の大地の王者、マスクドグリーン!」

「風より速く、嵐より激しく! 桃色の弾丸の王者、マスクドピンク!」



「俺たち5人、闘志の……VFマスク戦隊! 一丁、ここは……ドハデに暴れてやるぜ!」

 前口上が決まり、彼らの後ろで5色の爆発が起こる。

 VFマスク戦隊、本格始動……!

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