第三話 『一世一代の大勝負』
明かりが灯ってから間もなく、甲高い響きの老人の声が聞こえてきた。
「ようこそお越しくださいました、国防軍の皆様」
見ると、駅のホームの上にフレームを装備した老人が立っていた。
昼間に戦った老人達が装備していたものと同じ、黒いフレームだ。
老人の頭頂部は見事にはげていたが、側頭部の髪は異様に長く伸びている。ほほはこけているが目は大きく、異様な輝きを宿していた。
「初めまして。私は昭和・平成連合解放軍特務隊所属、ミッドナイトと申します。皆様のご来訪を、心よりお待ちしておりました」
ミッドナイトは芝居がかった仕草で恭しくお辞儀をする。
キョウカは相手の出方を探るため、先に攻撃をしかけないようハル達を片手で制した。
「さて、皆様がどのようなご用件でいらしたのかは私共も存じております。私共が入手した戦術核を破壊し、西日本への核攻撃を防ぎたいのでしょう。そうです、その通りです。私共はすでに核攻撃の準備を整え、明朝、日の出前に核攻撃を決行します。西日本で暮らす多くの人々は、明日の太陽を見ることなく、この世界から消滅することになるでしょう」
「すでに準備ができているのなら、なぜ今すぐ攻撃しない」
キョウカはそう言って、ミッドナイトに銃口を向ける。
「それはですね、私共のあなた方に対する、せめてもの慈悲なのですよ」
「慈悲?」
「そうです。私共はあなた方にチャンスを与えているのです。明朝までにあなた方が戦術核を発見できれば核攻撃を阻止できる。発見できなければ西日本が焦土となる。つまり、西日本の運命は、この場にいる私共やあなた方にかかっているのですよ。ひひゃっ! あひゃははははは! こんなに面白いことは、そうそうありませんよぉ、きひははははは!」
リオは笑い続けるミッドナイトに銃を向け、発砲した。
しかしミッドナイトは奇怪な笑い声を上げながら、曲芸師のような身のこなしで攻撃を回避する。
「いいです、いいですよぉ。若いとは、元気があって、単純で、考えが足りなくて……。ははは、あっははははは! いいでしょう。それでは盛大に始めようじゃありませんか。私共とあなた方の、運命をかけた、最後の戦いを!」
ミッドナイトはホームの屋根の上に立ち、両手を広げ空を仰ぐ。
次の瞬間、二つのタワーマンションから爆発音が轟き、線路を押し潰すように倒壊し始めた。
「各自、散開! 全力を挙げて作戦を遂行せよ!」
キョウカの声が響く。
それに奮い立たされるようにハルは動き、線路から飛び降りた。
なんとか地面に着地し、シュウがついてきているかを振り返って確かめる。しかしその瞬間にタワーマンションが線路と激突し、地鳴りのような轟音が空気を震わせ、猛烈な衝撃波が発生し、土煙や細かな瓦礫と共にハルに襲いかかった。
ハルはそれらに圧倒されるように倒れ、地面にうずくまる。
倒壊の衝撃がある程度おさまったところでハルは立ち上がり、ホームのほうに目を向けた。
周辺の街灯は明かりを灯していたが、その程度の光では様子が把握できないほど土煙が巻き起こっていて、人の姿はまったく見えない。
ハルはヘッドギアのディスプレイを使ってそれぞれのフレームの現在地を確認する。
リオとキョウカの識別信号はすぐ近くにあったが、シュウの識別信号は消えていた。
おそらく、今の倒壊に巻き込まれたのだろう。
――たとえ一人でも、行くしかない。
ハルは自動小銃を持ち、作戦を遂行するため走り出した。




