第七話 『彼女の理由』
ここにいることの正しさを確認するように、ハルはリオに言う。
「リオはさ、たしか技術士官になるために国防軍に入隊したんだよね」
「そうだよ」
「聞いてもいいかな。どうしてリオは、戦争に参加してまで、その道を目指しているの?」
「えっとね…………、あれ? 言ってなかったっけ?」
「うん。聞くのはこれが初めてだと思う。話したくないなら、無理にとは言わないけど」
「話したくないわけじゃないよ。その、私のおじいさんとおばあさんに関係することなんだ」
リオは歩調を少しゆるめる。
ハルも彼女の歩調にあわせる。
「私のおじいさんとおばあさんはね、二人とも研究者だったの。二人はね、ロボットを作ることが子供の頃からの夢だったんだって。それでそういう勉強ができる大学に入って、そこで出会ったの。同じ夢を目指して研究に没頭して、いつの間にか仲良くなって、ごく自然に結婚して、夫婦仲良く研究者としての道を進んでいた。幸せな生活だったらしいよ。研究者生活は充実していたし、子どもにも恵まれたし。そんな中で、二人はいろんな技術を開発したの。今私達が使っているフレームの基礎理論をつくったのも、おじいさんとおばあさんなんだって」
「それって、かなりすごいことじゃないか」
「でも二人は、開発した技術を公表せずに、自分達の手元にとどめておこうとしたの」
「どうして?」
「軍事利用されることを避けるためだよ。自分達が開発した技術を悪用されるかもしれないって考えたみたい。……まあ、結果は今の通りなんだけどね」
「じゃあ、なんでこんなことに」
「おじいさんとおばあさんの子ども達、つまり私の親や親戚が商品化したの。開発された技術のデータを盗んで、特許をとって、大企業や国防軍に売ったんだって。しかも十代の頃にそれをやったみたい。技術者としての才能は無くても商売人としての才能はあったってこと。フレームの開発や普及は急速に進み、たくさんのお金が手に入った。もちろん、おじいさんとおばあさんはものすごく怒って、親子の縁を切ったんだけど」
リオはため息をつく。
「私の一族は、この戦いを悪化させるのに一役買ったんだよ。だから私は実際に戦場に立ってみて、この技術がどう使われているのかを知りたいと思った。そうすることで、今度こそこの技術を正しく使える方法が見つかるような気がしたし、それを見つけることが私の果たすべき責任というか、償いというか、まあそんなものだと思ったんだよ」
「そうだったんだ。でも、リオがそこまで考える必要はないんじゃないかな」
「そう言われると、そうかもしれないけどね。まあ、なんていうのかな。親に対するあてつけみたいなところもあるんだよ。私はあなた達とはちがうって、そういう態度を示して、自分を正当化しようとしているのかもしれない……。自分で言っててなんだけどさ、ものすごく自分勝手な理由や考えで、私はここにいるんだよ」
「そんなことないよ」
ハルは夜空を見上げる。
さっきまでとくらべて、星の光がくすんでいるように見えた。
「僕も、両親に対するあてつけみたいな理由でここにいるんだから」




