第六話 『信じるしかない』
日付が変わってからしばらくした頃に、ハル達は第七観測所に到着した。
すでに戦闘は終わっており、緊急に灯された街灯の明かりの中、近隣の観測所から救援に駆けつけた隊員達によって救護活動や復旧作業が行われていた。
観測所として用いられていた小学校の校舎は半壊していたが、かろうじて利用できるらしく校舎の一部は救護室として使われていた。
トウイチは二〇九の隊長として現場の指揮にあたり、ハルとリオは救護室へ向かった。
二人はそこにいた隊員達から、ヒカル達のことを聞いた。彼らの話によると、敵襲があってからほどなくしてサツキ達が現れ、次々と敵を倒していったらしい。そのため敵は総崩れとなり、何人かの敵兵は逃走した。
ハル達が戦ったのは、そのうちの一人なのだろう。
サツキはヒカルやフタバと共に逃走した敵兵の追撃にあたっているという。
話を聞いた後、ハルは救護室の片隅でひざを抱えてうずくまっているシュウを見つけた。
特に目立った外傷はなく、身に着けている制服も汚れてはいなかったが、彼を中心にして重くよどんだ空気が漂っているのをハルは感じた。
こういう時に話しかけるとろくなことにならないとわかっていたので、ハルは黙って救護室から出た。
ハルとリオはトウイチから第七観測所周辺の哨戒を命じられた。
いつ敵襲があっても対処できるよう二人はフレームを装備し、自動小銃を携行する。
波の音が静かに聞こえる突堤の近くを歩きながら、ハルはリオに言った。
「リオだけでも休ませてもらったら? いろいろあって、大変だったでしょ」
「大丈夫。全然眠くない。ハルこそ初めて敵と戦って、もうくたくたなんじゃないの?」
「体はずいぶん疲れてるんだけどね。でも不思議と眠くはないんだ」
初めての戦いを終えたからこそ、眠気を感じる余裕はないのかもしれない。
「ねえ、ハル。あの人なんだけど……。これからどうなっちゃうのかな」
「あの人って、さっきの捕虜のこと?」
そう、とリオはうなずく。
「たぶんだけど、東日本や連合について知っていることを全部吐かされた後に処刑されるんじゃないかな」
「やっぱり、そうなるんだね」
「仕方ないよ。あの人は戦争をしに来たんだから」
「……それじゃあ私達も、敵に捕まったら同じ目にあうのかな」
そうだろうね、とハルは答える。
しかしハルはリオに言われるまで、そのことを意識してはいなかった。
二人は突堤から離れ、集合住宅が立ち並ぶ大通りに出る。
「なんかさ、私達ってとんでもないところに来ちゃったよね。まさか実際に戦いが起こるなんて、思わなかった。正直、現実を甘く見てたっていうか、楽観視してたっていうか」
「僕も。だけど僕達は、自分の意思でここへ来ると決めたんだから」
「そう、だよね」
「ならさ、自分がここにいるのは正しいことだって、信じるしかないよ」
うん、とリオはうなずく。
そうだ、信じるしかないんだ。
ハルは自分自身に言い聞かせた。




