第二話 『殺し合い』
二人は格納庫にある訓練生用のフレームを装着し、トウイチの指示通りの武装をする。
ハルは以前サツキが使用していたのと同じ自動小銃を装備した。
リオは対機動兵器用ライフルとスコープを装備し、脚部とバックパックにフレーム用の推進装置を取り付ける。この装備ならビルの屋上まで駆け上ることができ、そこから敵を確実に狙撃できる。
二人が格納庫から出た時、すでに戦闘は始まっていた。
巨大な重機が暴れまわるような騒々しい音が響き、散発的に発砲音が聞こえてくる。
ハルとリオはヘッドギアのディスプレイをおろし、暗視モードに切り替える。
互いに顔を見合わせうなずきあうと、ハルは敵を目指して走り、リオはフレームの推進装置を最大限に稼働させ、近くにあったビルの壁を駆け上った。
ハルは援軍が来たことを敵に示すように、走りながら銃を空に向けて発砲する。
すると敵機の機動音は止まり、彼のもとへ近づいてくる足音が聞こえてきた。
やがて建物の影から、トウイチが姿を現した。
「リオはどうしている」
「隊長の指示通り、狙撃するためビルの屋上に向かっています」
「そうか。ちょうどいい。今回の敵は、狙撃にうってつけのでかぶつだ」
敵が動き出したらしく、地鳴りのような機動音が鳴り響く。
ハルが顔を向けた時、敵機が姿を現した。
それは土木作業用の大型フレームを戦闘用に改造した機体だった。その大きさは周辺のビルの二、三階ほどはある。クレーンのように巨大な腕の先端には資材を運搬するためのアームが装着されていて、そこには旧式の機銃が装着されていた。しかしここへ来るまでの戦闘で破壊されたのか、銃身は大きく曲がっていた。下半身はクモのように何本もの脚が装着されていて、ギシギシと音を立てながら動いている。
フレームの胴体部分にはカプセルのような透明の球体が見え、その内側には操縦者らしき人物が手足を大の字に広げて固定されていた。その手足には操り人形のごとくコードやケーブルが何本も接続されていて、頭部にはヘルメットのようなヘッドギアが装着されている。
その姿から、ハルは異様なものを感じないわけにはいかなかった。
国防軍が採用している軍用のフレームは機械の鎧とでもいうべきもので、あくまでも人間が主体となって活用されている。しかし目の前に現れた機体は、人間をパーツの一部として取り込んでいる巨大な機械にしか見えなかった。人間を機能中枢の一部にしているロボット、というかんじだ。
フレームを装着しているハルを警戒するように、敵機は後退する。
「ハル、この先にある交差点まで奴を追いこむぞ」
トウイチは自動小銃を構え、ハルは了解と答えた。
その時、敵機の動きは止まった。同時に、操縦者と思われる老人の声が聞こえる。
「バカにしやがってぇ……。どいつも、こいつもよぉ、俺を、俺をぉ、俺をっ!」
敵機がその巨体を激しく震わせ、怨念に満ちた叫び声が轟いた。
「ああああああああああああっ! 殺してやる、殺してやるぞぉ! この畜生共がぁあ!」
ハルに向かって敵機の腕が振り下ろされる。ハルは側面へ飛び込むようにかわし、巨大な機械の腕はアスファルトを砕いた。
敵はもう片方の腕を薙ぎ払うように横へ振り抜く。ハルは攻撃が当たる寸前に跳躍し、回避した。
その間にトウイチは敵の背後に回り込みつつ発砲する。敵はトウイチに狙いを定め、腕を力任せに叩きつけた。しかしトウイチは難なくかわし、そのすきにハルは交差点を目指して走りながら敵に発砲した。
ハルとトウイチは連携しながら敵を交差点へと順調に誘い出していくった。




