第十四話 『訓練』
翌日の午前中から研修生達の本格的な訓練が始まった。
彼らは基礎体力をつくるための運動や、白兵戦を想定した実戦訓練、兵器の実技演習などを守備部隊の隊員達と共同しておこなった。大抵の訓練は防衛学校時代に授業でやったのと同じだったため、ハルとヒカルは一通りこなすことができ、フタバにいたってはキョウカが驚くほどの耐久力を見せた。
一方で、技術士官候補であるリオは立っているのがやっとという状態になるほど消耗していた。
シュウに至っては早々に脱落し、運び込まれた医務室でぶつぶつとうわ言のように悪態をついていた。
訓練は午前中で一段落し、午後からは自由行動の時間となった。
ハル達は食堂で昼食をとりながら、午後の時間をどう過ごすか話し合う。
この頃になるとシュウも回復していて、彼は本部とその周辺にある関連施設の見学をしようと提案した。
ヒカルやフタバ、リオは彼の提案に賛成したが、ハルは断った。
「ごめん。僕は別行動をとらせてもらうよ」
それを聞いて、フタバは意外そうに目をまばたかせる。
「ハルがそんなこと言うなんて珍しいね。何をするつもりなのさ」
「サツキさんに実戦訓練の相手をしてもらうんだよ。さっき哨戒から戻ってきた時に頼んで了承してもらったんだ。だから僕は、一緒には行けない」
「おお、マジかよ! よっし、わかった。私もハルにつきあう。あんたの勇姿を拝ませてもらうよ」
「なら俺もつきあおう。教官殿の操縦技術をもっとよく見てみたい」
ヒカルが言う。それに続き、リオも言った。
「なら私も行く。訓練生用のフレームもハルに合わせて調整しておきたいし」
「シュウはどうする。俺達と一緒にハルの応援へ行くか?」
ヒカルに聞かれ、シュウは首を振った。
「いいよ、俺は最初に言った通り、施設の見学をしてくるから……」
「おいおいなんだよ。あんたってば、あいかわらず協調性がないんだから」
「よせよフタバ。そもそも意見を変えたのは俺達のほうなんだから」
それもそっか、とフタバは笑う。ヒカルはため息をつき、リオはおかしそうに小さく笑った。
そんな中で、ハルはシュウから舌打ちのような音を聞いた。
食事を終え、食堂から出ようとした時、キョウカが息を切らしながら入ってきた。
「みんな、ここにいたのね……」
キョウカはハル達のほうをみる。その顔には、いつになく険しい表情が浮かんでいた。
「全員、今すぐ私と一緒に正門前まで来なさい」
何かよくないことがあったのだとその場にいた全員が感じとり、黙ってキョウカの指示に従った。
正門の手前には物々しい雰囲気の護送車が止まっていた。そのそばには仕立の良い背広を着た五十歳くらいの男性が立っていて、彼の両隣にはフレームを装備した国防軍の若い兵士が立っている。
彼らの手前には、灰色の囚人服を着た人物がひざまずかされていた。その頭には布袋を被せられ、両手両足には拘束具がはめられている。
キョウカはすでに整列してたトウイチとサツキの隣に並ぶ。
異様な空気のなか、ハル達も続いて彼らの隣に並んだ。




