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第7話「侯爵領に着きました」

 海に沿った港町はほぼ交易が独占されています。

 うちの領地なんかも場所によっては公爵家以外お断り、みたいな港がありますからね。

 カルラ領の港は相当に開放されてますけれど。

 それでも。

 誰でも参入できるわけじゃなし。

 海洋交易の門戸というのはとてつもなく狭いのが普通です。


 むかーし社交界でカーラさんとシェアの融通とかもやりましたが。

 あれは港の貿易総額で1%程度のものでして。

 基本的には新参お断り。

 朱印状みたいな特別許可証を持たない人は、交易に参加すること自体ができないというのが基本の状態になります。


 しかし。

 問題ありません。

 我々にはカカオがあります。

 みんな大好きチョコレート。

 これをどうしても食べたいと、各地の富裕層や権力者なんかは必至で売主を探しているのです。


 カカオやコーヒーや香辛料だけ取引したい、なんて舐めたことぬかす領主もいるのですけれど。

 そんなことは許しません。

 商館開設の許可をもらって輸入制限を解除してもらって関税を下げさせて。

 ブロッコリー公爵領の特産品をガンガン運び込みますね。

 自由競争であれば。

 安くて質のいいものが勝ちます。

 特に自国産業が優れている国にとって、自由貿易を推進することは国益にかなっていると言えるでしょう。


「カルラ様。どうかご容赦ください」

「どうしてもですか?」


 応接室に通された私は領主の部下さんと顔を突き合わせて条件のすり合わせを行います。

 ううむ。

 これでも平等な条約案のはずなのですが。

 ハッタリが足りなかったですかね。

 もっと調整期間を多く取って、無理な条件を突き付けてから落としどころを探した方がいい相手だったのかもしれません。


「この条件では我々の領地は持ちませぬ」

「うーん……これ、一応部下に上げさせた譲歩済みの条約案なんですけど、さらなる譲歩がいりますか?」

「恥ずかしながら、領内が不安定で」

「わかりました。骨董市場のほうの開放を諦めます。代わりに金属製の農機具にかける関税を下げてほしいのですけれど」

「い、いえ。そういう話ではなく」

「ううん? 条件を変えてほしいという話ではないのですか?」


 何が言いたいのかしら?

 個別の内容については調整できますけど。

 これ以上の譲歩はちょっとなあ。

 できるだけお互いが対等になるように調整した案のはずなのに。


「なんでもカルラ様の船には、新大陸から持ってきた珍しい商品があるとか」

「ああ。それはもちろん。カカオ、コーヒー、香辛料。なんでも取り揃えますよ」


 どうやらこの場での取引を求めているようですね。

 だったら話は早い。

 いくらか船から蔵出しすれば解決するような問題です。


「なにが欲しいのですか?」

「実は、奴隷などを」

「奴隷? 労働? 愛玩?」

「愛玩のほうで。その、新大陸にはなんでも、エルフなるたいそう容姿端麗な種族が暮らしているとか」

「ああ、いますね。あんまり数を連れてきてないので、せいぜい20人ぐらい……しかもあれはフォルテイル侯爵領への贈呈品なので、販売を予定していなかったのですけれど」

「その、それを、いくらか融通していただくことは?」

「…………そりゃまあ、できますけど」


 このやろう、エルフマニアかっ。

 なんと汚らわしい。

 とまでは言いませんが。

 あーゆー劣等人類を偏愛する人って、ちょっと趣味の恋愛をこじらせすぎなんじゃないかと思います。


 エルフ。

 それは新大陸の原住民。

 現在進行形でガンガン虐殺されて捕獲されまくって、そろそろ絶滅するんじゃないかとうわさされている生き物です。


 いやまあ。

 新大陸の奥地に行けばたくさんいるんですけどね。

 ええ。

 原作でも主人公がお世話になりましたし。

 一大文明を築いてます。

 しかしまあ、玄関口である東部周辺では紅眼族からの攻撃が激しいので。

 土地を追われたり戦争を嫌ったり病気を恐れたり。

 そんな理由で西へ西へと逃げていき、東側の海岸線付近ではすっかり姿を見なくなっているとのこと。


 木製武器しか持っていなかった彼らは人族からすれば雑魚同然。

 ガンガン殺戮して持ち帰り。

 奴隷や娼婦として活用しまくります。

 若かりし頃の父上なんか、率先して新大陸に渡って虐殺に明け暮れてエルフ女をさらいまくっていたらしいです。

 うちの屋敷にも10人以上いますからね。

 エルフ国の王女とかお嬢様とか貴族の娘とか。

 鎖でつないで酒池肉林。

 まったくひどい話です。

 不潔としか言いようがないですね。


 ちなみに、私のお兄様であり公爵家の長男であるところのコウモクさん。

 彼はハーフエルフです。

 しかも由緒正しい王族エルフとの間に生まれたハイエルフ。

 ファンタジー小説的にはハイなんちゃらってのは上級種族という意味になりますが。

 この世界におけるハイエルフは紅眼族とエルフとの混血を意味します。


 ハイオークだと紅眼族とオークの混血。

 ハイゴブリンだと紅眼族とゴブリンの混血。

 そんな感じ。

 ドラゴンの場合だけはなぜかハイドラゴンとは呼ばれません。

 まあ、いかに傲慢な紅眼族であってもねえ。

 あの強力無比なドラゴン一族の上位種族こそがハイドラゴンだ、と言ってしまうほどの頭の悪さはなかったのでしょう。


 ハイなんちゃらってのはほぼすべて、元の種族よりも強くなりますが。

 竜だけは別格というか。

 あれは純竜のほうが圧倒的に強いので。

 紅眼族ハーフのドラゴンだけは、あくまでも単なる竜人です。



 話を戻しましょう。



 エルフは美形です。

 めっちゃ美形。

 むかつくぐらい美形。

 エルフ一族はのきなみ顔がよくて容姿が整っています。

 しかも若い。

 いつまでも年を取らない。

 華奢な体つきとピンと伸びた耳が特徴的。

 この世の贅を極めた金持ちや貴族にとっても、物珍しさという点では一つの価値があるでしょう。


 労働力としてはやや微妙、というか、獣人とかのほうが人気がありますけど。

 愛玩奴隷としての人気はエルフが勝ります。

 ここ50年ぐらいではじめて市場に流れてきた種族なので。

 物珍しさもあり。

 出品されれば各地のオークションにおいて、嘘みたいな価格で落札されて続けているというお話です。


 ただ。

 それでも、ねえ。

 エルフ女なんてものにはいくらでも代替品があるというか、そこまで強烈な需要がある商品ではないと思うのですけれど。

 同程度の美人ということなら山ほどいるわけですし。

 あえてエルフをチョイスする理由がわかりません。


 強いて言えば、エルフマニア向け。

 エルフという種族に格別の愛を注ぐ変態趣味の持ち主だけに大きな意味があります。

 父なんかは例外だと思っていたのですが。

 そうでもないのですかね。

 エルフ女というのはもしかすると革命的な需要がある新商品なのでしょうか。


 男が美人の女に向ける性欲というやつは、女にはちょっと理解できないところがあるものです。

 女はいっても、男の金や権力に惚れるのですけれど。

 男は外見に惚れるので。

 エルフ女という種族の外見をことさら高く買うという種類の人間も、まあ、一定数いるのかもしれません。


「わかりました。着飾って連れてきます。一日待ってもらえます?」

「ははっ。ありがとうございます! できれば何人かから選べる方が!」

「予算と購入予定人数だけ、伝えてもらっても? その範囲で連れてきますので」

「そ、それは」

「当たり前ですけど、金額が大きくて人数が少ないほど上級の奴隷を連れてこれます。いくら払えますか?」

「その、カルラ様もお人が悪くていらっしゃる。答えようがないですぞ」

「うーん、なら、金貨100000枚ぐらいの上級奴隷を5人ぐらい連れてきます。それでいいですかね?」

「じゅ、10万枚……わ、わかりました。準備しておきます」

「はーい」


 その金を使って庶民の女を買った方が、絶対に安上がりだと思いますが。

 まあいい。

 人の好みはそれぞれです。

 何もいいますまい。

 いちおう恨まれないように、念押しだけしておきましょう。


「重ねて聞きますが、今回連れてきているエルフ奴隷は贈呈用の極上品になります。今回はスルーしてもっと廉価なものが流れてくるまで待つのがおすすめです。それでも買いますか?」

「ぜひとも」

「新大陸での買い付けは金貨100枚から1000枚が相場です。上級奴隷でも1万枚を超えることはありません。今回のものは極上品ですし、海運のための費用で3倍ぐらいの価格はつきますが……それでも10万枚は販売を想定していないからこその異常な高値です。この点だけは説明しておいてください」

「わかりました」


 そこまで言うなら是非もなし。

 よっぽど上から強く言われているのでしょう。

 まさか公金を横領してエルフ女を囲おうという話ではないはずです。


 まあ、そもそも売れると決まったわけでもないですからね。

 品だけ見せておきますか。


「それで……エルフ奴隷との売買が成立した段階で条約に調印、という感じでいいのですかね」

「はい。それはもう」

「できたら同時にしてもらってもいいですか? 話を通しておいてください」

「かしこまりました。承諾を取っておきます」

「ではまた、明日」

「よろしくお願いいたします」


 ということで、話がまとまりました。


 やれやれ。

 公爵令嬢の私が足を運んでいるのに、向こうの当主は顔も見せないとは。

 ひどい話ですよねえ。

 ま、ここの領主さんは無能で有名ということなので。

 無理もないのですけれど。


 てゆーか。

 それは私がやりたいことなんですけどね。

 ええ。

 部下にお任せで自分は酒池肉林。

 いいではないですか。

 一刻も早く裏切らない優秀な部下さんを見つけて全投げしたいものです。




 エルフ女は3名も売れました。


 金貨30万枚。

 私が魔族退治のために使った予算よりも多いです。

 まじめに働くのがあほらしくなりますね。

 いやまあ。

 いくら貴族領主といえども、こんな買い物をえんえんと続けられるわけないので。

 今回はあくまでも例外ではあるでしょうけれど。


 一応領主と直に顔合わせをしていろいろ確認を取ったので、後から条約を反故にされる可能性は低いです。

 あの部下さんの独断ということもないみたい。

 だったら問題ありません。

 今後ともなかよく付き合っていきたいものです。


 これで予定されていた会合はすべておしまい。

 後はフォルテイル侯爵領に行くだけになりましたね。

 ほとんどの取引は合意に至りましたが。

 私が出席したにも関わらず物別れになってしまったケースも、残念ながら1つだけありました。


 あれはほんとーにひどかったというか。

 ただモノではなかったですね。

 ちょっとだけ例を出すと。

 

「よろしいか、カルラ様。商売とは困難なものです。交易をはじめるにあたっては新年の払暁を待って船を大灘に浮かべ、難所を刻々と調べ、調査し、船の5隻10隻は沈むという覚悟で漕ぎ出して帆によって風を受け止め」


 などと、そこから30分以上も宗教書の朗読のような交易講義がはじまってしまったのです。

 取引部屋の中で。

 条約書を前にして。

 これに納得できれば調印、というところまで話が進んでいるのに、意味不明な持論を展開させて恥じるところもありませんでした。


 なぜ新年を待たねば商売がはじめられないのか。

 船を嵐の中に浮かべる意味はなんなのか。

 まったく意味不明。

 だけでなく、関税を倍にしたいとか、そちらの港での受け入れ量を上げなければ調印には応じられないだとか。

 あまりにも一方的な条件を付きつけてきたのです。


 聞いちゃあいられなかったので話を中断してもらったのですが。

 気に障ったらしく。

 大声で叫んだ末に部屋を出て、後はなしのつぶて。

 空しく時間をすごすことになりました。


 うーむ。

 今回の会談が失敗した以上、今後3年ぐらいは交易不可能、みたいな感じになったわけですが。

 それでいいのでしょうか。

 この国、ただでさえ資源不足で困っているはずなのに。

 破談そのものを狙うのであれば、その旨ひとこと伝えれば済むことです。

 わざわざ私を呼び出してまで心証を悪くする理由がわかりません。


「まあ、世の中にはとんでもないバカもいますからね」


 鎖国状態の国なんてあんなものなのかも。

 いやはや。

 あれでは戦略上の必要物資さえ確保できないというか、海賊やら武装船団やらに通商破壊されて開国、みたいな未来しかないと思いますけれど。

 そっとしておきましょう。

 遠い国ですし。

 どうせ近い将来に滅びてしまうでしょう。



 

 さて。

 気を取り直して。

 フォルテイル侯爵領の港に入ることになりました。


 友好的な同盟国なので荷卸しがスムーズに進みます。

 確保しておいた倉に次々と商品を運び込んで場合によっては取引所に直行させ、その場での商談を進めてもらいますね。

 このへんのやり取りは部下に全部お任せ。

 放置OKでしょう。

 私はさっさと直属の部下をまとめて馬車を走らせ、フォルテイル侯爵領の主都であるフォルシータの街へと向かいます。


 フォルテイル侯爵領。

 人口3000万。

 メインの産業は鉄鉱石、鉄鋼、合金、食肉、醸造、工業品、非鉄金属、ガラス、麻織物、ウールなど。

 全体的には鍛冶が盛んな工業国家という感じです。

 特に小さな金属部品を加工する技術については大陸北部でも有数のものでして。

 うちの領地では作れない細かくて丈夫なネジやらワイヤーやらビスなんかに関してはフォルテイル侯爵領の独壇場と言えますね。


 主食は小麦。

 パン食が基本になる土地柄です。

 前世日本人の私としてはコメのほうがずっと好きなのですけれど、焼きたてのパンにとろーりバターと甘いジャム、というのも、まあ、嫌いではないわけで。


 文化的にはちょっと雑というか、質実剛健が気風という感じの気難しい土地柄です。

 絵画や彫刻、陶芸、音楽、歌劇、娯楽施設、観光など。

 そういうものについては他の領地よりも2歩ぐらい遅れてる模様。

 カジノは禁止。

 売春も禁止。

 麻薬なんて厳禁です。

 尚武の気質が強すぎるといいますか。

 場所によっては公営の売春施設やら賭博施設があるのですけれど。

 他の領地よりははるかに規制が厳しい。

 そういう文化圏になります。


 まあ、あれです。

 王立魔法学校があるぐらいの土地なので。

 全世界的に武を志す者が集まるメッカとして、剣術道場やら兵学道場なんかはとてつもなく充実しています。

 特に年一で開かれる武術大会は上位入賞者がそのまま王立魔法学校の入学資格を得られるほどの一大イベントでして。

 超絶盛り上がりますね。

 ブックメーカーが乱立するだけでなく公営賭博さえも解禁される上に、上位入賞者には賞金やら住居やら性奴隷やらがあてがわれるというお話です。


 今回連れてきたエルフ奴隷とか。

 その賞品の一部だったりするんですよねえ。

 いやはや。

 まったく。

 人の欲望というのは果てしない。

 よくやるものだと思います。


 とゆーわけで。


「やってきました! 主都フォルシータ!」

「おおー」


 パチパチパチパチパチパチパチパチ。

 満場の拍手。

 馬車から降りた私を近衛一同が笑顔で出迎えてくれました。

 うむうむ。

 最近だんだん教育が進んでますね。

 カルラちゃん楽しませ隊はフォルテイル侯爵領でも平常運転のようです。


「住居のほうは?」

「こちらです」


 向こうの執事さんがうやうやしく礼をしてから案内を務めます。

 ブロッコリー公爵領にある父の屋敷はほぼ完全に住居としてしか使えないタイプなのですが。

 ここは王城一体型。

 ドンと構えた石造りの城の中に居住区やら仕事部屋やらが整然と並んでおりまして。

 その西側付近の尖塔がある一角を、カルラ使節団の住まいとして開放してくれるというお話です。


 大理石の床。

 衛兵。

 廊下に並んだ芸術品。

 謁見ルートを外れてからは華美な装飾こそなくなってしまいましたが。

 それでも清潔で掃除が行き届いていて天井が高いです。

 さすがは侯爵領の拠点というべきか。


「いい城ですね」

「ありがとうございます」


 執事さんが微笑みながらぺこりと頭を下げました。

 おお。

 使用人さんもまともな感じ。

 普段とはえらい違いです。

 なにせ私の出張先ときたら、問題があって滅びかけてるような場所が多かったものですから。


 うふふ。

 いいですね。

 同盟国って素晴らしい。

 気を張らなくても怠惰で快適な日々を過ごせるような気配がぷんぷんします。


 初秋のさわやかな風が窓から吹き込んできました。

 ああ。

 なんていい気分なのかしら。

 祝福されてるなあって感じがして幸せになれますね。

 これこそが公爵令嬢という存在に対して与えられるべき環境というものです。


 荷物を置いたら早速侯爵との面会予定を聞いて。

 城の中を探検とか。

 いいかもしれませんね。

 時間的にも精神的にも余裕があるのはいいことです。


「おかしい」

「どうしました、ラトリさん?」

「平和すぎる。こんなわけない。カルラちゃんの行くところ乱あり。世界の法則が乱れている気がする」


 なんか無茶苦茶言い出しましたよこの人。

 乱ありって。

 私を邪教の魔神か何かと勘違いしてるんですかね?


「今回は本当の意味での親善大使です。任務もないし、目的も特にありません。適当に顔を覚えてもらって仲良くやろうという趣旨のイベントです。社交界みたいなものですね」

「社交界か……私あれ、すごく苦手。何を話していいのかわからないし」

「意味もなくニコニコしていればいいのです。それで求婚されるので、後は好みの男の人とコンタクトを取ってください」

「そーゆーのが苦手なんだよ! なんなの! 出会ってすぐに求婚とか! 意味わかんないんだけど!?」


 ラトリさんが叫んでます。

 もてる女だけが持つ特有の悩みですね。

 贅沢が過ぎるというか。

 私なんか誰からもアプローチされないわけで、親から相手を紹介される以外には選択肢がないというのに。


 ……いやまあ、私はアプローチする側ですから。

 ええ。

 貴族社会では格上の相手に対して求婚するのは禁止されています。

 交渉は上から下へ。

 それが基本。

 いくら美人であっても、自分から動かなければ何も起きないのが公爵令嬢という生き物だということです。


「カルラちゃん的にはどうなの? 今回は誰を倒すの?」

「誰も倒さないです。もしかして私が関わったイベントは必ず誰かが死ぬのだと勘違いしていませんか?」

「今まではそうだったけど」

「世の中とは基本的には平和なものなのです。あえて断言しましょう。今回は一人も死にません」

「ふーん」


 まったく信じていない調子でラトリさんが相槌を打ちました。

 やれやれ。

 すっかりやさぐれちゃって。

 与えられた平和を享受できないというのは戦地に身を置きすぎた者の悲しきサガというべきかもしれませんね。


 ただし。

 結論だけを言えば。

 この時のラトリさんの予想はきっちりと当たっていました。


 私が来たせいかどうかはともかく、この領地においてはトラブルが頻発することになったのです。

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