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トラウマとスケッチ  作者: 黒羽 百色
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ビルや建物が乱立した景色を飛ばし、だんだんと建物が少なくなり、やがて窓の外は都会には無い景色が続くようになった。

8月の熱い日中。電車に乗り始めた時は座れず立っていたが、やがて乗客は減り、今では普通に座れるほどの人数になっていた。

5月の連休はバイトの休みがとれず1日だけ休んだくらいだ。その1日は一馬達と集まった。みんな進学したため、普段も当時のように集まっては遊んでいた。俺には故郷が2つある、そんな話もよく一馬達にしていた。8月は連休がとれ、もう1つの故郷に帰ると宣言していた。その故郷には間も無く到着する。


高校卒業後、ゴッチはそのまま就職。いずれは家に入るため、別の会社で修行のような感覚だ。父の会社とも付き合いがあるそうで、ゴッチの活躍が期待されている。

駿は惜しくもスカウトの注目はあったがプロ指名は無く、大学進学で野球を続けて再び夢を目指すそうだ。4年後にはプロの世界で活躍する姿が見れるかもしれない。同じ群馬だが丘之城から離れた大学に通うため、普段は寮生活だ。

登は県内の専門学校へ進学。とりあえず資格が欲しいのと、やりたい事を見つけたいとの事で、その道を選んだ。毎朝電車で通っているため、ゴッチ同様に地元に残っている。

美久は隣の埼玉県の大学に進学した。都心部なので賑やかさがあるが、丘之城の落ち着きが1番良いとよく言っている割りに、美久らしく楽しんでいた。アルバイトをしながら一人暮らしをしている。


優里はあの後、コンテストの作品が最優秀賞に輝き、その道を迷わず進むために東京の美大へ進学した。今まで描いていた風景から急に都会になった驚きはあったそうだが、その中にある小さな自然を描いた絵がいきなり学内で優秀賞に選ばれるなど、変わらず活躍している。

俺はと言うと、卒業後に東京の大学へ進学する道を選んだ。あの後、群馬に残る事は父も許してくれて、前田先生にも驚かれたが、残って欲しかったと言ってもらえて肩の荷が下りた。

東京では一馬も同じ大学であり、以前のように良、三夏、咲、亜美も一緒とはいかないが、全員進学しているため時間が合い、割と頻繁に集まる事ができている。年末にはゴッチ達とも会わせるという話が出ていて、ゴッチ達も快諾してくれた。俺にとっては両方が故郷のようなもの。年末が楽しみになっていた。


「着いたよー。」

隣で白いワンピースに少しだけ茶色くなった髪、相変わらず荷物の中にスケッチブックを入れている優里が嬉しそうにしている。

電車はやがてホームに入り、東京とは違う静かな駅に着いた。

あの日、12年ぶりに群馬に来た時とは違う気持ちで改札をくぐる。夏の日差しが俺と優里を出迎えている。蝉の鳴き声がどこか懐かしい。


「暑いねーやっぱり!」と優里が顔を扇ぎながら青空を見上げる。


「よーし、行くか。」

「うん!」

俺は優里の手を握り、優里も優しく握り返した。丘之城の夏は今年も暑そうだ。



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