#10 夢のまた夢
まさかの、夜栄守家の人間。
そしてとてつもない強さだった。
あの來魅の全力の戦いに負けないくらいだった。
それより驚いたのは、風紀委員やってて真面目なタイプかと思ったら裏では学校の怪奇物を退治してたという。
裏風紀なる事をやっていたという事。
これはもしかして生徒会の活動の一環?
などと考えていた。
寧音に聞くとそれは独断で勝手にやってるだけとの事。
生徒会の中の術者はそれなりに動いてはいるが、まとまりがあまりなく危ないと思ったら自由に行動してるという。
「ほへぇ。そうなんか」
「はい。そうです」
「って、なんで風紀係がいるのー?!」
護が声を荒げる。
「いーじゃん。風紀係としてじゃなく、ふかしぎ部員として今いるんだから」
「はい。よろしくお願いします」
深々とお辞儀。
「うひょー、新入部員ですね!私港咲みゆッス!」
「あの、御神楽です。どうも…」
「眼鏡っ子だ眼鏡っ子~」
楽しくはしゃぐみゆ。
護はちょっと嫌そうにしている。
服装を注意した本人なのだから。
「ねえ、寧音。ちょっといい?」
「なんですか?」
「なんで僕の隣にいるの?」
「琉嬉さんが可愛いからです」
「……う…」
なんか拒否出来ない。
急に態度が変わる面倒な性格だというのが分かってるからだ。
拒否したらいきなり泣くかも知れない。
どうしてこんな子が風紀係なんぞやってるのかも謎だ。
「さてと、これで部員が増えた。あとは正式にあとの二人も入れなければ」
「二人?」
「生徒会の加賀龍翔ってやつと、叉羅沙。実は入部届けは用意してある。あとは本人に承諾を貰えば問題ない」
「いつの間に…」
用意周到なのは琉嬉の得意技。
「寧音って二年生なんだね。知らなかったよ。僕は転校してきたばっかりだから同学年でも知らない人多くってさ」
琉嬉と同じで寧音は二年生。
つまり同年齢。
「いや、転校してなくても知らない人多いよ?」
と言うのは護。
護が最近知ったのは服装の乱れを注意されたからだ。
「いやいや、護先輩は留年してるんだから当然ですよね?」
「じゃああんたらはどうなのさ」
「まだ一年生だし入学してから一ヶ月しか経ってないから…」
結局、話の結果ふかしぎ部のメンバーは同学年でも知らない顔が多すぎるという結果となった。
「でも一日で有名人になった琉嬉先輩は凄いよね~」
「うるさいなぁ…みゆこそ有名だよ?金持ちのお嬢様がいるって」
「金持ちだけが取り柄みたいな言い方じゃないですかそれ…」
金目の話には少しかじりつく琉嬉。
「いや…みゆも大概だよ?変な言動で面白くて可愛い子だって」
「いやはははは~そうですか~?嬉しいなぁ」
またクネクネ変な動きをする。
(お嬢様っぽくねぇ…)
全員思った。
琉嬉は夢を見た。
夢なんて珍しくはない。
しかしこれは…夢のようで夢じゃない。
でも…。
――――これは夢。
―そう、琉嬉は既に夢だと気づいていた。
黒い、大きな影。
影のような物。
いや、影に見えるものは……人影。
影じゃない。
大きな大きな…骸骨。
(十月の一の日…)
と、声が聞こえる。
男の声…女の声。
「どういう意味なんだ。十月…?なんなんだ」
黒い影が言う十月と一の日。
そうはっきり聞こえた…。
「………嫌な夢」
目が覚め、先ほどのは夢だと確信する。
妙にリアリティあふれる夢…。
夢と言っていいのか?
何かが訴えるような内容だった。
琉嬉の隣に寝ていた來魅も目を覚ます。
「んあー……おはやーう。琉嬉~」
寝ぼけ來魅。
相変わらず平和そうにしている來魅。
「どうした~琉嬉~」
「……久しぶりに嫌な夢見た」
嫌な夢。
普通の嫌な夢なら別に人に言うこともない。
琉嬉の性格ならそうだ。
しかし、どうやら今回はそうじゃないようだ。
何か嫌な予感もする。
そう、何か……嫌な…。
「…どうした?琉嬉。嫌な夢とは?」
「……気になるいや~な感じの夢だった」
「ほう。予知夢ってヤツか?」
「予知夢って柄じゃないけどさ」
「…お前程の能力者がそんな夢見るなんてただ事じゃないのう」
そのまま何も言葉を発せずコクリと頷く。
とはいえ、後にそんな不可解な事起きるという確証もない。
(……まさか、ね)
起きてすぐ。
琉嬉は早速悠飛と來魅に夢の内容を話していた。
「十の月と一の日ねぇ…」
「どういう意味だと思う?」
「ま、多分そのままの意味だろうね。十の月は十個の月ていう意味じゃなくて10月。
一の日は1日…多分一日。つまり、10月1日って意味じゃないかな?」
「なるほど」
「…それくらい解かるもんだと思うぞ。琉嬉」
「……そうだけどさー…」
珍しく弱気。
なんせ、自分の推理に自信がないからだ。
知識合戦なら悠飛の方が得意だし、信頼がある。
悠飛は推理物が好きらしく、暗号めいたものなら解けるだろうと考える。
自分の考えよりまずは、悠飛に聞いてみる。
そう思っている姉心だ。
「でも、10月1日の後が気になるよね。続きを言う前に目覚めたんでしょ?」
「そうなんだよね」
「今は…まだ6月だよ?半年くらい先だよ?きっと近くなったら新たな展開あるんじゃない?」
カレンダーの暦を見ながら悠飛は言う。
まだまだ先の話。
とはいえ、10月1日と確定したわけじゃない。
「新たな展開って…」
そこで、重要な事に気づく。
「この日って…」
ドタドタ歩き回りながら、台所に貼ってあった学校の年間行事予定表を剥がして持ってくる琉嬉。
驚愕の事実を知る。
いや、驚愕なのかどうかは知らないが。
――そう。
つまり、10月1日。
この日は学校の文化祭の日である。
偶然とは思えない。
夢の内容と一致する日。
何かがありそうだ。
「…ちょっとだけ見えてきた気がするけど…。これは生徒会に直接聞くしかないかな」
生徒会なら何か知ってるかもしれない…と思った。
「なんで生徒会?」
単純な疑問を抱く悠飛が言う。
「え、だって生徒会ってなんか知ってそうじゃん。学校の事」
「…はー…。ゲームのやりすぎで安直な答えになっちゃったか…」
やれやれと思う悠飛。
勝手にそう思い、後日突撃する事に決めた琉嬉だった。
「とゆーわけで、アンタら何か知ってるんでしょ?」
「いきなりやなぁ…琉嬉ちゃん」
早速琉嬉が生徒会室へ殴りこみのように乗り込んでいた。
「何か知ってるって…何がです?」
「この学校のコト。何か知ってるでしょ?」
ジッと生徒会長のまどかの目を見つめる琉嬉。
真剣な表情だ。
まどかはずっとほんわか笑顔。
「調べはついてるんだよ。会長さんも…。アンタらは霊術名家の家系だって事をね…」
まどかの名家の出身。
琉嬉独自の調べでたどり着いた答えだった。
それを聞いてもまどかは笑顔を崩さない。
叉羅沙と龍翔もこの場にいる。
寧音の姿はない。
風紀係委員として何か仕事をしてるようだ。
「敵いませんね。彼方さんには。さすが、叉羅沙さんの見込んだ人ですね」
「ほんまやなぁ」
「話してもらうよ」
「…ふぅ」
一息ついて、まどかが語りだす。
「この学校に限らず…この街にはあらゆる霊的なものや妖怪がいます。というより、本来どこの街にも国にもいます」
「ま、そうだね。お父さんの実家の所も妖怪多いし」
「ただ、この地域がどこの世界よりも多いんです」
「だろうね」
「この学校はその中心なんです」
中心。
「……そんなもんだろうと思ったよ」
琉嬉は疑問がひとつ思い浮かべる。
なぜ学校が中心に?
それを解けば学校が落ち着くのか?と。
「教師のみなさんほとんどこの事は知りません。ただ、幽霊の目撃談が多いなあくらいとしか思ってないと思います」
「…へぇ~」
教員達はその程度の認識くらいしかないようだ。
「私たち生徒会は特にそういうのに対抗する組織ではありません」
「あ、そうなの?」
「たまたま、生徒会に入ってるだけです。ですが、生徒会やっていた方が情報入りやすいので」
「なるほど」
「元々名家が多く存在している地域。私達が生徒会にいるのは本当に「偶然」なだけです」
「………らしいね。寧音も言ってたよ」
生徒会メンバーに霊術名家が集まってるのは偶然。
ただそれだけだと言う。
寧音は人知れずこの学校に怪奇めいたものを近づけないように対処をしていたようだった。
「もうお気づきだと思いますが、私達は人知れず「勝手」に、行動してるだけです」
「まじか」
「それは親の世代…その親の親からの世代から受け継がれてます。この地域の秩序を崩さないために。
組織…と言っても、日本霊術会の動きですね」
「…へぇ~……。霊術会ねぇ……」
何度も出てくる、日本霊術会。
大きな力を持った物達が力を合わせて組織化させ、運営し連携を強めた怪奇事件に対抗する組織。
各地にいる大きな力を持つ人間が、行動しやすいように。
鞍光市も裏では霊術会のおかげで秩序を保っている…まどかは言う。
「とはいっても私達はまだまだ子供。そんな堅苦しい事はしてませんし、出来ませんけどね」
「そりゃそうだよね」
「きままに、きまぐれに。そういった能力持った方が多いのも昔からの受け継いで、今日までに至ってるからです」
「それはなんとなく分かる。お祖父ちゃんも言ってた。
昔術者がこの地に住み着いたから霊感持った人間が他の地域より多いって」
なんとなく、話が見えてきた気がする琉嬉。
だから名家の人間がこの学校に集まっていてもおかしくない。
琉嬉はまだまだ自分の世間の知らなさを痛感した。
「てか、そんな組織めいたものがあったのか」
「組織って言っても私達能力者達が勝手にやってるだけですからね。それが昔から受け継いでるだけで、今は私達の代って事なだけです」
「なるほどね……。だからこんな頻繁に霊出てもそんな混乱もなくおさまってるんだ」
どこか納得する。
そして琉嬉らのお寺や耿助の神社など、昔からある、地域特有の霊力者達。
そういう人間らが集まってるから能力者が多いのだ。
護やみゆ、御琴達もその昔からの恩恵を受けていた訳である。
この学校に能力者が多いのも納得がいく。
「でもまぁ~、我々は、たまたま生徒会に身を置いてるだけだったからな」
龍翔が念を押すかのように言う。
「そやそや。ウチらはたまたま生徒会に入っただけやし。漫画とかみたいに変な権限なんてないんや」
「そうですね。あとは至って「普通」の生徒です。私達も力以外は普通のつもりですけどね」
「……十分普通じゃないと思う」
そう言いながら叉羅沙の方を見る。
「な、なんでウチみるんや!」
普通とはかけ離れてる叉羅沙。
その理由は高身長。
普通じゃないその背…とでも言いたげだった。
「10月1日ですか…。文化祭の日ですね」
「何か心当たりある?」
「心当たり…ですか」
皆して黙ってしまう。
「知らないの?」
「……私も詳しくは分かりません」
「ふぅん…」
怪しげな態度に琉嬉はジト目でまどか達をみつめる。
「あー、そうだ。ふかしぎ部…入部届け、叉羅沙の分と龍翔君の分用意しといたから。あとは…まどか会長。考えておいてね?」
「…考慮しときます」
首を横にかしげて笑顔で答える。
(…ちぇ、腹の底が見えないほんわか女子だな……)
琉嬉の挑発とも捉えれる言い方。
それをなんなくかわすようにするまどか。
叉羅沙と龍翔はヒヤヒヤしながら見ていた。
「ふふ、面白いですね…本当に彼方琉嬉さんって方は」
「ウチらは内心びびってたんけどな」
「え?」
「なんでもない」
生徒会の仕事に戻る。
一番良く一緒にいる叉羅沙ですら読めない腹の内。
まどかはずっと笑顔のままだ。
「あー、そういやあの子はまだなのか?」
「一週間以上経ちますね」
「そろそろお見舞いでも行こか?」
「そうですねぇ…」
夜中。
琉嬉の夢の中にまたあの声が聞こえる。
――十の月。
――――一の日。
―――……く………ろ……る…。
(…誰なんだ?訴えてるのは…誰?)
琉嬉が問いかけても何も答えない。
黒い人影は何も答えない。
(その十の月と一の日に…何が起きるんだって言うんだ…?)
また肝心なところで目が覚める。
また同じ夢…。
いや、これは夢というより…念だろう。
夢という媒介を通じての念。
誰かが琉嬉に送っている。
とでも思えるくらい訴えてるような内容だった。
琉嬉だけにダイレクトに送ってるのだろうか?そんな風に思う。
(ったく…気分の悪い目覚めだ…)
今日は來魅が部屋にいない。
おそらく悠飛の部屋で寝てるだろう。
日毎に違う部屋で寝ている。
時々導と嶺珠の部屋でも寝ているようだ。
まるで猫か何かのように気まぐれで、しかもいろんな場所でよく寝る。
見た目は子供だけに、中身も子供のようだ。
枕元にあった携帯にメール着信を知らせる画面になっていた。
(誰かのメールかな)
メールはみゆからだった。
『琉嬉センパイ~、変な夢見ました~。部活で言ってたような内容です』
「みゆか…これは何かありそうだ」
実は夢の内容をふかしぎ部のメンバーに話していた。
しかしなんの手がかりもなし。
夢は琉嬉だけ見ていたようである。
だが似たようなのをみゆが見たというメールだった。
「……ふぅん…」
気になりすぎて気持ち悪い。
毎晩同じような夢を見せられたらたまったもんじゃない。
「って事で、念を送ってる人物を探し出すのが、我々ふかしぎ部の活動だ!」
「なんで?」
「でも気になるだろ?」
「気になりマース」
手をピシッと上げ叫ぶみゆ。
みゆだけじゃない。
この妙な夢は護や御琴らも見たという。
突然起きたこの変な状況は不気味である。
もしかしたら…霊感のある者ならみんな見てるかもしれない。
「寧音は何か知ってる?」
「わ、私ですか?よく分からないんですよね…。一応生徒会所属ではありますが、詳しい事情は……」
寧音も偶然生徒会に所属してるだけに深い事情は知らないらしい。
「まどかと仲悪そうだもんねー?」
「え?そうなの?」
護が変な顔して寧音を見る。
「な、なんでそんな話になってるんですか!?」
「え?違うの?」
「違います!仲は悪いわけじゃありません!……ただ意見が食い違う事もあるだけで…」
「琉嬉先輩、風紀係委員は学校行事の運営を受け持つので、生徒会とは対等な存在らしいですよ。
委員長ともなれば生徒会長と同じくらいの意見が出せるようです」
御琴の調べた話。
そんな噂があるのだ。
「そうなの?寧音?」
「まあそうとも言えますけど…。それはこの学校独自のシステムでしょうから。風紀係は実行委員とは別ですよ?
実行委員のもと、校内風紀を乱さないため、行事には行事スタッフの役割をして校内を巡回して…」
話が長くなりそうだ。
そこで琉嬉が強引に、
「そうなの?」
「そうです」
あっさり会話を断ち切った。
「学校の委員会の話じゃなくってさ…。夢の調査だよ」
「そうそう。調査~」
楽しそうなみゆ。
不満そうな護。
それぞれの思惑がある。
「ええ、と…夢……というより念?ってやつを飛ばしてるのを捜せばいいんだよね?」
乗り気じゃないが仕方ないという感じで護も重い腰を上げる。
「でも、何の情報もないので捜すのも無理に近い気が…」
懸念する御琴。
「学校内で出来る話じゃないですよね?それって…」
「そうだなぁ…」
「あ、そう言えば……」
寧音が何かに気づく。
「寧音クン。何か心当たりあるのかね?」
なんかのキャラクターのような言い方する琉嬉。
どうも変なノリを出す。
たまに茶目っ気だすようだ。
「霊術名家…の出身の子がもう一人…生徒会にいたハズですね」
「え?そうなの?てかなんで寧音は曖昧なの?」
「いや、新学年度始まって数回しか会ってないんですよ。その子はなんかいろいろ忙しそうで。しかも今大怪我されて
入院してるとか……。よく知らないんですよ」
「…へぇ」
「やっぱ寧音…生徒会と仲悪そうだね。あんまり知らなさそうだから」
護のきつい一言。
「し、失礼な!私はこれでも風紀係として…」
「ハイハイ、生徒会とはまた別なんでしょ?さっき聞いたよ」
「護先輩…それは実行委員会とかじゃなかったでしたっけ?」
「金髪銀髪少女でケンカするな。まったく…」
「金髪言うな!」
「銀髪言うな!」
と、同時に怒られる琉嬉だった。
琉嬉と護、みゆと御琴、そして寧音の5人は鞍光市内の大きな病院へとやってきてた。
「ここだったような…」
鞍光総合病院。
市内で一番大きい病院だ。
内科外科など一通り揃っている大型の病院。
そこに生徒会の一人で名家出身だという生徒が入院してるらしい。
寧音の言葉を頼りにやってきた。
そもそもなぜやって来たかというと、その生徒が今回の「念」に関係してるのではないのかという話だ。
「いいのかな…勝手にやって来て…」
不安が大きくなる御琴。
学校帰りのためみんな制服だ。
何しにきたのかというと、寧音の話によって浮上した人物。
鳴神柚羽。
一年生にして生徒会の会計を担当している。
しかし、一週間程前から入院してるという話だ。
何やら事故で大怪我を負ったようだ。
幸い意識などははっきりできるレベルでそこまで酷くはないという。
結局あの夢に関してはほとんどの霊力を持つ人間が見たという。
彼方家全員。
來魅ももちろん見たという。
一週間という期間。
丁度その時期から重なる部分がある。
何も手がかりがないよりは何かあるだろう…と、大した期待もせずやってきたのだ。
琉嬉はまず、受付に行きその生徒の名をだし見舞いに来たと半分嘘のようなものだがそう、言う。
「同じ学校の生徒なんで、見舞いに来ました」
案外、簡単に案内してくれる事になった。
面会できるという事は決して重症ではないのだろう。
「いやはや…こんな大きな病院初めてです」
「みこっちゃんは大きな病気とかした事ないの?」
「おかげさまで…そういう所だけは頑丈なんだよね」
「えー、いいなぁ。私は一度大怪我負った事があるんだよね。ここで治療したっけな?」
みゆの意外な事実。
「へー、みゆがな…お前無茶しそうだもん」
「えっへへー。そうかもしれないですね」
少し照れくさそうにするみゆ。
「あたしも来た事あるかな~」
「護は…まあいいや」
「なんでだよ!あたしもこう見えて可憐な少女なんだから…」
「ハイハイ。ソウデスネソウデスネ」
「うきー!」
どこにいてもにぎやか。
「…ここ病院ですよ。元気なのは分かりますが…学校外だからって学校の評判を落とすような真似はやめてくださいね」
ギロッと皆を睨む。
眼鏡が光ってなお、怖い。
さすが風紀係。
「そ、そうだね…おとなしくしよう」
「ここかな…?」
個室の部屋をヒョコっと覗き込む琉嬉。
そして、コンコン、と戸をノックする。
「こんにちは~。鳴神さんいますか~?」
少し間をおいて、
「はい」
想像以上の可愛らしい声で返事が来た。
「あのー、僕ら鞍光高校の生徒で…」
琉嬉を遮るように、寧音が前に出てさらに続ける。
「生徒会風紀係委員長、夜栄守寧音です。お見舞いに来ました。入ってよろしいですか?」
スバッと決める。
(おお、さすが生徒会役員…事を進めるのが上手い)
変に感心する。
ガチャっと戸を開ける。
「こんにちは。私の声が届いたんですね」
そこには痛々しい姿の少女が居た―――。
美少女……とも思える可愛らしい顔した少女。
おとなしい、おっとりしてそうな雰囲気だ。
だが、頭には包帯。頬にも傷ふさぐための湿布。
部屋の中はいかにも、という病院の匂いが立ちこもる。
そこにいる少女はおとなしそうな、着ているパジャマが似合う少女だ。
「ええと…さっきの言葉が意味するのは…あの夢は鳴神さんの力って事でオッケー?」
「はい、オッケーです」
「なるほど……」
妙にノリが良い少女、柚羽。
「しかし……その怪我は…」
「…私もびっくりですね」
「まずはお久しぶりです。鳴神さん」
「はい、夜栄守さん。そして皆さん…初めまして」
「こちらこそどうも」
小柄の女の子だった。
何がどうなってこんな姿になったのかは不明。
「僕は彼方琉嬉…で他のはふかしぎ部のメンバー」
「はい、存じてます。特に彼方さんは有名ですよね?」
「…まぁね…」
あまり触れて欲しくない部分だ。
「まずはお話聞こうと思うんだけど?」
「そうですね…」
柚羽はゆっくりと語りだした。
「え…とですね、私は一応、陰陽師の末裔でして…」
「知ってるよ。霊術名家のひとつ…だろ?鳴神家……。あまり表舞台に出てこない名前らしいけど」
「ご存知でしたか。さすが、五大家の方ですね…」
「そちらもよくご存知で」
「なんの因果か…五大家の4つまで揃ってるんだよ。鞍光高校ってのは」
「そうなんですか…凄いですよね」
五大家の内、4つが学校にいる事になる。
彼方琉嬉。
港咲みゆ。
夜栄守寧音。
そして、ふかしぎ部特別顧問の参堂耿助。
「大体、五大家じゃないのにしろ、有力の家系が集まりすぎだっつーの」
霊術名家も沢山いる。
これだけ集まってるのもおかしい話だという。
「で、まずはその怪我について聞きたいんだけど?」
「それはですね…この学校に入って、ただならぬ霊力を感じまして…単独で悪霊退治しようと思いまして…」
「ふむふむ」
「いわゆるボスまで辿り着いたんです」
「そりゃ凄い」
「でも結果、このざまです」
「…ふむ」
淡々と話を聞いている琉嬉達。
「あ、あの、その相手って…どういう悪霊だったんですか?」
「大きな…骸骨の一部…とでも言うのでしょうか。頭部だけでした」
「骸骨……?」
「私が不用意の封印を解いてしまったために…とんでもない事に…。なんとか少し封印できたんですけど…」
「それはそれで凄い」
「おかげで死にかけました」
死にかけた。
柚羽の姿を見ればよく理解出来る。
今まで琉嬉はここまで酷い状態にはなってないのも奇跡かもしれない。
琉嬉はちょっとそう思った。
柚羽は左腕の骨、肋骨2本、その他もろもろ負傷したという。
だが能力者のおかげか、異常な回復力であと一週間もあれば退院は出来そうだという。
壮絶な状態になりながらも封印をしたそうだが、完全ではなく、いずれまた解けるという。
「骸骨…たしか夢の中では…骸骨が見えたな」
「夢ですか…。もしかして…」
何か思い当たる節でもあるかのようだ。
「そうそう、私達、変な夢見たの!なんだっけ…」
「十月の一の日……ですね」
寧音が冷静に答える。
「そうそう、とおつきのいちのひ」
琉嬉は柚羽の目を強く見る。
「もしかしたら…ですが、私の封印したものと関係あるのかもしれません…」
「え?」
全員一斉に反応する。
「その昔、10月1日にとある妖怪を封じたんです。私の…鳴神家の人間が」
「なるほどね。五大家と同じように來魅を封じたのと一緒か。………ん?」
「そうです。ただ、それは來魅以降の話です」
「來魅の後にもヤバそうな妖怪を倒せずに封印したっての?」
「おそらく…」
「そんとき他の五大家や名家は何やってたんだよ?」
単純な疑問だ。
「その時はもう離散してたようです。そもそも封印したのはほんの、「10年前」です」
「……は?」
來魅とはまた違う、封じなければいけない妖怪が居た。
だがそれはたった10年前の話だという。
「10年前だったら…でもさすがに今と大分状況違うか…」
ブツブツ琉嬉は思考を自分なりにまとめる。
「あの、10年前にそんな大掛かりな事あれば、何かしら話が伝わってるはずでは…?」
「みこっちゃんナイス質問だねー。それだったらさすがに私ら五大家の耳にも入ってるよ?ね?寧音先輩?」
「…一理ない事もないですね。ですが私は知りません…が」
「ひょっとして…封印が解ける?來魅の時みたいに…」
琉嬉なりの考えのまとめ。
「ええ。そうですね」
柚羽はキッパリ言う。
「ですが私はこの有様…、でも大丈夫です。もう少しで退院出来ますから」
「それは良かったですね」
「おー、鳴神さん、勉強の遅れとか大変だろうから何かあれば力を貸すよ!」
同じ一年生同士、助け合いの精神のようだ。
盛り上がりがある。
対する二年生達は若干の壁を感じていた。
「ん?鳴神家は名家のひとつじゃないの?」
「…霊術名家ですか?そう呼ばれた時代もあったみたいですけどね」
「……?ってコトは今は名家と呼ばれるものでもないと?」
琉嬉は腕を組み直す。
かつて呼ばれた。
今は名家のひとつではないかのような言い方だ。
「妙な話だな…なんでこんな近くの地域に來魅といい、その妖怪といい…この地域おかしくない?」
「だから私達がいるんですよ、琉嬉さん」
「!!」
琉嬉達は凄い勢いで振り返った。
生徒会メンバーがそこには居た。
「どうも。ふかしぎ部のみなさん。そしてお久しぶりですね。柚羽さん」
「か、会長…どうしてここに」
「お見舞いに来たんですよ。すみませんね。テスト期間でしたので…なかなか行けなくって」
「いえ…」
妙な空気になる。
寧音も一応は生徒会側の人間。
ふかしぎ部に入った事となるとちょっと裏切った感がある。
でも等の本人はあまり気にしてない顔しているが。
「まったく…ここに辿り着くなんてさすがですね」
「いや、寧音がいるから…」
みんな寧音の方を見る。
寧音は静かに舌を出して、
「はてなんのことやら」
その場の全員が凍りつく。
いや、むしろ時が止まったかのように静まり返った。
「やるくらいなら落ち込まないでくださいよ…」
寧音は部屋の端でしゃがみこんで落ち込んでいた。
慰める御琴とみゆ。
「あう…似合わない事はしない似合わないことはしないニアワナイコトハシナイ…」
「ありゃりゃ、完全に事故だねこりゃ」
お手上げポーズを取る護。
「寧音は置いといて……あんたら何を隠してるの。とはいっても鳴神さんからある程度は聞いたけど」
「封じた妖怪の事ですか?」
「知ってるじゃん。知ってるなら教えてよ」
「それは……あまり部外者の方を巻き込みたくないからですよ」
「ふぅん…」
ジト目がさらにジト目になってまどかを見る。
その目は完全に疑いだ。
「その件はすみません。ですが……この件は私達で解決したいのです」
「…へぇ。それは…学校の為?それとも…名家としての?それとも…」
「学校の為ですよ」
迅速な答えだった。
それでも眉一つ動かさず、冷静に答える。
腹の底が見えてこない。
琉嬉は今まで会った人物の中で、ここまで据わった肝とでも言うのだろうか、表情変わらずに話す相手は初めてだ。
同じ人間として。
「……ま、夢の正体が何か分かっただけでも大丈夫だよ」
「そうですか…」
「僕らは帰ろう。お大事に、鳴神さん」
あっさり身を引くように病室から出て行く。
「あら、もう行くん?」
「ヒントは得たからね」
そう言って足早に出て行く。
琉嬉に続くように他の部員も続いていく。
「…委員長はそっち側なのかい?」
寧音を足止めするように声かける龍翔。
「まるで敵同士みたいな言い方ですね。別に「そういう訳」ではありませんよ。今日は私はふかしぎ部として来たんですから」
「……なーるほど」
ふかしぎ部として来た。
そう言い残し寧音は最後に出て行く。
「何の話なん?」
「いいや、こっちの話さ。さてさて、我らが後輩はお元気ですかね?」
「…話そらすの得意やな」
みゆと御琴ら一年生チームはちょっと怖かった。
まるで敵対するような態度の琉嬉だったから。
一触即発…でもないが、実際生徒会の人達と戦っているのだから。
「琉嬉先輩…怖かったね」
「そうだね」
二人は琉嬉らとは別々に帰る。
帰りの駅。
「しかし…あの生徒会長さんも譲らない態度というか…不思議な人だよね」
「うん~。変わってる~」
「みゆちゃんも人の事言えないけどね」
「うん~、ってどういう意味なの~ソレ?」
「あはは、ごめん」
とは言うのも、不安が強いのも仕方ない。
「仲良くできないのかな~?」
「部屋も隣同士なのにね?」
「うーん……こればっかりは琉嬉先輩の…ねえ?」
言いたい事は分かる。
でもその答えが出てこない御琴。
「成るようにならないと…僕らではどうしようもないかな?」
「そかもね」
「じゃね」
「あ、琉嬉さん。少し待ってください」
寧音が呼び止める。
「何?」
「…もしかして生徒会の件に首を突っ込む気ですか?」
「首を突っ込むというか……なんていうか、何かを知ってるよね」
「……正直な事言いますと、私も知りません。多分、彼女らも詳しい事は知らないと思います。知ってるのは…」
「柚羽だろうね。だって当の本人の家の人が封じたんだろ?」
「そうです」
「依然興味が湧いてくるよ」
「きょ、興味…?」
発言に困惑する。
「だって、何かが起ころうとしてるんだろ?ならそれを止めるのが我らが「ふかしぎ部!」」
「まあ、そうでしょうけど…」
「お前さんも、人知れず学校の怪奇を対処してたんだろ?」
「……そうですけど」
琉嬉は後ろを振り返り、左手を上げる。
沈む太陽に手を向けている。
「やるんならどうせなら、みんなとやりたい。かと言ってギチギチ縛られてやるのも良くない。
だから部活を作った。せっかく僕と同じくらいの力を持ってるんなら…楽しくやりたい」
ぽかーんとする寧音。
「琉嬉さんがまさかそんな事考えてたなんて…」
「僕はね、小中学生ともに、友達なんていなかったさ」
「……」
「霊が見えるだけで怖がられたり、いろいろあったさ。喧嘩したり」
(さぞかし喧嘩相手は可哀相な目にあったんだろうなぁ…)
「でも最近になって、考えを改めたんだよね。どうせなら仲間を作ろうって。当初はそんな事考えてなかったけど」
「この学校に来たら、似たような人達がいた……と」
無言でグーポーズする琉嬉。
「結局は流れでこうなったのもあるんだけど、さ」
「はぁ……」
琉嬉がずいっと寧音の前に近寄る。
「勘違いしなくていいよ。僕は生徒会と敵対するつもりはない。相手が敵対するなら別だけど」
「手ごわいですよ?会長は」
「寧音がそう言うならそうなんだろね」
なぜか少し微笑む。
「……楽しそうですね」
「…………そう?……充実してるのかもね。学校生活が」
笑顔が可愛い。
抱きつきたくなるくらい。
小さくても熱い心。
「ふふ、これだから私が認めた琉嬉さん…可愛い!」
また抱きつく。
「おぉい、またかよ」
「うふふふふ、いいじゃないですか?」
「降ろして~」
足がプランとしている。
よほど強い力で抱き上げてるようだ。
「姉ちゃん」
その日の夜。
「ん?」
悠飛が琉嬉の部屋へとやってくる。
「どした?」
「鳴神柚羽って人の事調べたんだけどさ…」
単独で何か調べてたようだ。
「鳴神家っていう小さな陰陽道の家系らしいんだ」
「耿助さんのとこみたいな大々的じゃなく?」
「そうみたいだね。だから今まで私達に知られる事もなく活動してたみたい。ま、それはあくまでも表向きの話」
「なるほど…。來魅も知らない?」
「んほ?」
口に大量にケーキを頬張りながらパソコンをしている。
まるでハムスターのように。
「…お、お前なぁ……」
「鳴神のぅ……私は聞いた事ないな」
「そか」
「この狭い地だけに、昔から妖などから退けるためにこの地域から動かずにいる家系らしいよ」
「…そうなんだって、どうやってその事調べ付いたの?」
「………それはお祖父ちゃんに聞いて」
「あー、そっちか…來魅のコトはともかく続いてる術者の家系なら知ってそうだもんね」
「案の定バッチリ」
お寺の方ならそういうのが詳しいに違いない。
そう思って話を通して調べたようだ。
「しかし…今姉ちゃんが通ってる学校って…まだそんな生徒がいるのかな…?」
「会長が言うには僕ら以外はもうそんなにいないはず…とは言ってたけど」
「まだまだ、未知な部分あるね」
だが、学校の謎を完全に解くチャンスが訪れたのは間違いない。
大量に発生する霊的物質。
なぜ、この地に集まってるのか。
疑問は積もるばっかり。
「で、その念の送り主の正体は分かったのか?」
來魅がネットサーフィンしながら琉嬉の話を聞いている。
「正体…ていうか、大体の目星はついた」
「ほほぅ。さすが私を倒しただけのある霊力の持ち主だな」
「…褒めてくれてありがとう。でもま、明確な正体はさすがに分からないね。
正体と思わしき人物は入院してたし、多分違う」
(…なるほどね。琉嬉ちゃん、また何かに首を突っ込んでるのかな?)
そんな様子を自室の部屋で聞いてる導。
戸が空きっぱなしで会話が聞こえたようだ。
聞いてないふりして自室で仕事を続ける。
「違う?それはまたなんでだ?」
「……それは、分からないけど、半分鳴神柚羽であって半分違う…そんな気がするんだけどね」
「ほむ…よく言ってる事は理解できんが?」
「今の段階では真実には届かないって話さ」
「しかし…來魅ってすっかり姉ちゃんの事認めちゃってるんだな」
他人事のように言う。
とはいえ、実際悠飛は関係ない事なのだろうが。
「今回に限って本当にいろいろ起きるんだね。まったく」
悠飛の言うとおり。
來魅が復活したり、10月1日に予言めいた事があったりと、何かと忙しい年である。
何の因果か、彼方家中心に面倒な事が回って来ているようだ。
元々、こういった世界の物事を扱っているとはいえ過酷な年だ。
「なあ、來魅」
「なんだー?」
バリバリお煎餅を食べながら画面を見つめている。
すっかり引きこもりみたいな生活だ。
「今度、來魅専用のパソコン買ってあげるよ。だから僕のパソコン占領しないでくれる?」
「おお、そうか。そうしてくれるとありがたい」
「そのかわり、「最強の妖怪」の称号の名のとおり、その力で手伝ってもらうよ」
「…ふむ。いいだろう。交渉成立ってやつだな。その時はこの封じの術を解いてくれるんだろうな?」
「……本当にヤバかったらね」
封じの術を解く。
それは危険かもしれないが、万が一真霊気が使えない状況だったら?
他のみんなが戦えない状態だったら?
そこに賭けるしかないのかもしれない。
「……やれやれ」
マイペースなお互いの意見にツッコむ気すら失せる悠飛だった。
学校も終わり部活をも終え、琉嬉は単独で病院へ向かっていた。
もう一度鳴神柚羽に会うために。
先日は生徒会が来てしまい、本格的な内容を聞く前に帰ってしまったからだ。
「こんちはー」
「あ、彼方さん…また来てくれたんですか?」
「ん?お友達ですか?」
「……ん?」
柚羽と一緒にいたのは男性医師のようだ。
「…お邪魔でした?」
琉嬉は表情は変えずにぶっきらぼうに言う。
「いえいえ、こちらの方がお邪魔でしょう。何かあれば言ってください」
「先生!イヌイさんが目覚めました!」
パタパタと女性看護師が忙しそうにやってくる。
「そうですか。それは良かった…じゃ、私はこれで」
早足で看護師と共に医師も出て行く。
「なんだなんだ?」
「ああ、今日なんか隣街の高校生くらいの人が血まみれで運ばれてきたようなんです」
「うへぇ、マジで?そりゃ恐ろしい…」
「そうですねぇ」
「………さて、そんな恐ろしい話よりもっと恐ろしい話をしようか?」
「恐ろしい話…ですか?」
「そう。今後起こりうるだろう恐ろしい話の続き」
首を少し斜めに傾けて話しかける琉嬉。
そっちの方がなんか怖い。
「あ、これ、お見舞いのお菓子」
出したのは耿助のやっている神社の饅頭セット。
「ああ、すみません、わざわざ…」
「で、話の続きなんだけどさ」
「はい」
「ズバリ、鳴神家は…もうお前さんが跡取りなんだろ?」
「………鋭い質問ですね」
さすがの言葉に柚羽も目つきが変わる。
琉嬉は変わらず、冷静のまま。
「10年前、静かにある妖怪を封じた。倒す事は叶わずとも。それはなぜか。そこがズバリ聞きたい」
「……それは……」
言葉を止める。
言いたくないような話なのだろうか。
「いや、言いたくないのであれば無理して言わなくていいよ。じゃあ質問を変えよう。封じてる妖怪は何?」
「…妖怪は……「がしゃどくろ」です」
「ふむ。がしゃどくろ……ね。骸骨のバケモンって言われてる妖怪だったけ?」
がしゃどくろ。
巨大な骸骨の妖怪…としか、知らない。
詳しい情報は何もない。
「…詳細は?」
「私もハッキリ分かりません。なんせ、小さい頃だったし…ただ、真実を知りたくって向かったら、このような事に」
「ほほう……(何かが見えてきた)」
「で、そいつはどこに封じられてるの?」
「それは……鞍光高校の旧校舎です」
「!!なるほどね……」
ニヤリと口元が緩む琉嬉。
なんとなく察する。
旧校舎に封じられている。
なぜそんな所に封じられてるのかは不明だが、今も取り壊されずに残っている旧校舎内にいるという。
今は立ち入り禁止になっている理由のひとつでもあるのだろうか。
それもたった10年前の話だ。
まさにふかしぎ――。
琉嬉はそんな風に思う。
「生徒会の人達は、がしゃどくろを倒す……ために動こうとしてるのか……」
「………」
柚羽は静かに頷いた。
「把握したよ。お前さん程の術者がコテンパンにやられるくらいだから…相当なんだろうな」
「コテンパンって…」
さすがにその言い方だと柚羽も悔しさが滲み出てた。
「アハハ、ごめんごめん。でもね、我々ふかしぎ部なら負けないと思うよ」
「ふかしぎ部…ですか」
「柚羽も入る?」
「はぁ……?(いきなり下の名前?)」
入部を薦められる。
それは良いとして、いきなり下の名前で呼ぶからびっくりする。
「よし、退院したらふかしぎ部に入れ。そしてその妖怪倒そう。10月1日になったら」
「そ、そうですか…?でも…」
「その間に対処法考えよう。多分、今やってもおそらくは…柚羽のようになりかねない。危険な感じがする」
來魅と同じように慎重にしたい。
万が一…あの力もある。
だが、今回は來魅を封じる宝玉の力がない。
そこをどうするかだ。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫!」
ほぼ、行き当たりばったりな考え。
「いずれにしろ、封印は解けるんだよね?だったらギリギリまで対処法考えておこうじゃないか」
「…ふふ、先輩って面白い方ですね?遠目でみたらクールそうなのに…結構喋るし」
「おう、僕の事みんな勘違いしてるかもしれないけどね…、意外と社交的(?)なんだよ?」
クスクス笑いがこぼれる病室。
「ふふ、それまでなんとか生徒会のヤツらを説得させよう。力ずくでも」
「ええぇぇ?それはさすがに…」
「いーじゃん、現状はあれは一緒に協力する気ないよ?」
「いやしかし……」
「五大家…霊術名家…、それに劣らず優秀な術者。面白いじゃないの?こんなのが集まってるってのも」
「なんか……考えが男の人みたいですね?」
「よく言われる」
否定はしない琉嬉だった。
妖怪「がしゃどくろ」。
全容が見えない妖怪の話。
それを封じてるという旧校舎。
謎が謎を呼んでいる。
それに、あの夢のようなはなんだったのだろうか?
それまでになんとか、学校中の霊術者達の連携を作りたい。
頭の中にぼんやりそんな事浮かべながら琉嬉は病院を後にした。




