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第38話「再出発」

今回はキリよく短めの急ぎ投稿です。

思いがけず森の中をアレクシオスと二人きりで散策することになった。


(今のさっきであまり話したくないところだけど、このタイミングで言わなければ……)

私は意を決して口を開いた。


「あの、アレクシオス様……」


「ん?」

少し前を歩いていたアレクシオスが僅かにこちらへ顔を向ける。

たったそれだけのことなのに、色気を含んだ低い声音とその顔の破壊力がすごい。


「い、いつぞやは、王宮に服や布を送って頂き、ありがとうございました。寒い時期を乗り越えるためにとても助かりました!」



「いや、手配したのはローランだ。礼なら奴に言え」


「はい。しかしそれもアレクシオス様の許可なくしては行えなかったと思うので、そのように取り計らって頂き、ありがとうございました!」


「ん」

そっけなく返されたが、一応礼は受け入れてもらえたようなのでよかった。



「ところで、お前は何しにここへ来たのだ」


「へ、何って……」


そう言われた私はおもむろにアレクシオスに近付いて、彼の手を取った。


「!」

彼の目が驚きに見開いた。


「突然のご無礼をお許しください。ですが、こちらの葉に触れそうでしたので」


「これはトゲか……?」

アレクシオスが傍に生えていた植物に目をやる。

よく見ると、茎や葉の表面に細かい毛のようなものが生えている。


「はい。この部分には毒があり、触れると数日かぶれ、痛みを伴います」


「なるほど。時折兵士が山でそのような症状を訴えている者がいたようだが、こいつの仕業だったわけか」


アレクシオスはその葉の特徴を刻み込むように見つめた。


「これも王妃だの聖女だのの教育の賜物か?」


「いえ、こちらは少し前にある方に教わりました」


「ある方?」


「はい、旅で出会った原住民の方なのですが……」

そう言いながら、突然パッと空を見上げたので、アレクシオスも同じように顔を上げるが、空に鳥が飛んでいるだけだった。

(なんだ鳥か)

そう思った次の瞬間、隣にいたクリスティアが素早く弓矢を構えて空に放ち、あっという間にその鳥を射落とした。


「よし!」

そう言って、鳥が落ちた方に駆け出した。



「……お前は一体今まで何をしていたのだ」


鳥を絞め、血抜きの準備をしていた私の背後から、アレクシオスが呆れたようにこちらを眺めていた。





◇◇◇





「クリスティア様ぁ〜!こちらの鶏肉とても美味しいです!!スープもまるで宮廷で食べるものみたいにいろんな味がします!!」


ローランが口いっぱいに肉とスープを頬張りながら感嘆の声を上げる。


「ええ、どの料理もとても美味ですね」

ミゲルも優雅に切れ長の目を細める。


「ありがとう。フェリシアとルイスが手伝ってくれたおかげよ」


「へへ!」

ルイスが嬉しそうに笑う。


「ふふ、クリスティア様が捕まえてくださった鳥肉のおかげで、スープにいいダシが出ましたわ」

フェリシアも上品に器を持ちながら微笑んだ。


「こいつが突然空に向かって矢を射始めた時は、気が触れたかと思ったがな」


「まあ、アレクシオス様ったら、おほ、ほほほ……」

余計なことを言うアレクシオスに返す言葉がなく、誤魔化すように口元に手を当てて笑った。

いまだに公爵令嬢だった頃の癖が抜けないのはご愛嬌だ。






早めの昼食の後、私達はそれぞれの目的地に向かうことにした。

ここからは、アレクシオスとローランとは少しの間、別行動になる。



「ああ〜!三日もクリスティア様とお別れなんて……!」

ローランががっくりと肩を落とす。


「たった三日だろ」


「普通の三日ならいいですけどね!そうじゃないでしょ!!」


ローランの嫌がりようから、この後の用事とやらが、なかなか大変であることが伺えた。


代わりに、彼に狩人のアルガスからもらったとっておきの干し肉を渡すと、「絶対にすぐ戻ってきます!!」と、少しやる気を取り戻したようだった。




ローランと話していたら、不意にアレクシオスが私の前にやってきて、私の手を自分の口元へとすくい上げた。

「!」


「くれぐれも早まった真似はするなよ?」

強い光を放ったルビーレッドの瞳がまっすぐに私を捉える。


「……も、もちろんです」

間近で見つめられてドギマギしたが、表情を取り繕って答えた。


「どうだか。お前は慌てると、とてつもなく短絡的な行動に走るからな」

そう言って、アレクシオスがニヤリと笑う。


「ぐっ……!」


これまでやらかしてきたあれこれが思い出され、言葉に詰まってしまう。



「無事にことが済んだら、今度こそ逃げないように誓約書を書いてもらわないとな」


「何の誓約書ですか……?」


捕虜か、逃げ出さないための約束状か、はたまた……?


「そうだな。婚約誓約書なんてのはどうだ?」


そう言って、私の顔を見つめながら、私の手にキスをした。


「!!!」


どうやら婚約者という設定はまだ有効だったようだ。


恥ずかしくて、真っ赤になった顔を隠すように後ろを向くと、興奮したフェリシアが卒倒していた。







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