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第5章①vs薄井①


 1―0

「薄井先輩、なんですか今のボールは?」

「ふん。お前に教える義理はない。そもそも、大虎に頼まれるまではお前と戦うつもりはなかったからな」

 須磨が練習試合しているのは、薄井という名前の先輩だった。最初に大虎や角田と一緒に現れた坊ちゃん刈りの3年生だ。

「やっぱりその変なラケットが関係しているんですか?」

「ふん。変なラケットと言うな」

 須磨は薄井のラケットを指さしながら言った。

 薄井のラケットはペンホルダー+イボだった。今の時代、両面のシェークハンドが主流になっており、片面のペンホルダーは少数派である。それにプラスしてイボのラバーである。イボとは、普通のラバーと違ってブツブツの粒が一面についている。その影響で、ボールの回転や打球方向が不規則になる傾向にある。それはそれで強力な武器だが、扱いにくいので採用している人は少ない。さらに、採用するとしたら両面のシェークハンドが普通であり、両面のうちの一方だけにつけて普通のラバーの補佐的な扱いだ。そんな常識から考えると、薄井のパンホルダー+イボは異常なラケットだった。

「変なラケットでしょ。そんなラケット見たことないですよ」

「そんなことを言うなら、いつでも試合をやめてもいいんだぜ。俺は大虎に言われたから相手しているだけだ」

「でも、変なラケットじゃないですか」

「ふん。だったら、今、見飽きるくらい見たらいいだろ?」

 薄井のサーブ。


 パン!


 須磨のラケットは空を切った。

 2―0

「あらら」

「ふん」

 阿波踊りのような体勢になった須磨と、それをスカシた目で見る薄井。

「くそ、どこにどういうふうにボールが行くかわからないぜ」

「ふん。そんなの俺でもわからない」

「だったら、どうして入るんですか?本当は分かっているんでしょ?」

「ふん。なんの挑発かは分からないが、そんなわけないだろ。細かいところは分からないが、大体のところはわかる。例えるならば、野球におけるナックルボールだ。どこにどういう変化になるか分からないが、とりあえずストライクボールに入れることができるようなものだ。所謂ナックルボーラーだ」

 薄井は鼻息混じりにやれやれという感じに説明した。

「へぇ。そんなことをペラペラ話すなんて、逆に怪しいですね」

「ふん。そんなことより、サーブを打つんだ」

「はいはい」

 須磨はサーブ。

 薄井のレシーブ。


 ボフッ!


 須磨は返って来たボールを当てたが、ネットアウト。

 3―0

「ようやく当たるようになったぞ」

「でも、アウトはアウトだ」

 薄井は当たり前のことを当たり前のように言った。

「なぁに、そのうち入るようになるさ」

「ふん。それはどうかな?」

「俺にかかれば、朝飯前さ」

「そんな言葉を言ったら、うまくいかないぞ」

「そうでもないさ」

 須磨のサーブ。

 薄井のレシーブ。

 スマのレシーブ。


 ヒュー


 ボールはあさっての方角に飛んでいった。

 4―0

「入らないじゃないか」

 薄井の嫌味を聞いて、須磨は頬を赤くした。

「こ、こんなときだってあるさ。次は入れるさ」

 須磨は恥ずかしそうに言った。

「本当か?」

「本当だ。次こそは絶対に入れてやる」

「あっそ」

 薄井のサーブ。

 須磨のレシーブ。

 入る。

「ほら、入った」


 パン!


 薄井のレシーブが入る。

 5―0

「……あり?」

 須磨は口を開けたまま固まった。

「ふん。一球入っただけではしゃぎすぎだ」

「……ですよねー」

 須磨の口は動き始めた。

「次行くぞ」

 薄井のサーブ。

 須磨のレシーブ。

 ラリーが続く。


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