はじめてのタンデム。
僕も神さんも1日中バイクをいじってたから手が真っ黒だ。
ほのかにオレンジの香りがする工業用のスクラブ入り石鹸で手を洗う。 汚れを落とすというより、皮膚まで削れていくような感覚だ。
神「タクミーお姉ちゃんを鉱泉に連れてってやれ!!」
タクミ「ナツミさんここから少し行ったところに神さんが作った掘っ立て小屋に鉱泉があるんです。」
タクミ「そこへ案内します。」
ナツミ「たくちゃんと混浴〜?笑」
タクミ「いや・・・それは・・・・」
ナツミさんは冗談のつもりだろうが完全に僕は俯いてアタフタしていた。
耳が真っ赤だ。
もう・・・。
どうすれば・・・。
タクミ「2Kmぐらい離れているから・・・このバイクで行きましょう!!」
ナツミ「なにこのバイク可愛い!!」
タクミ「SUZUKIのボルティーってバイクです。」
タクミ「あまりにも長い間、売れ残っていたので今は僕が足代わりに乗っています。」
ナツミ「たくちゃん、アタシそういえば着替えとか持ってきてなかった。たくちゃんのパンツとTシャツ借りていい・・・?」
え・・・・・??
いいですけど・・・・。
ナツさんってホントに考え方が自由で奔放で。
僕はまだ1回も履いたことがなかった・・・3枚セットで買ったパンツをナツさんに渡した。
ナツミ「うふふ。新品じゃん。しかも白ブリーフなんだ。」
ナツミさんもう勘弁して…。
タクミ「Tシャツはこれ使って下さい。きちんと洗濯してありますから。」
リュックに自分の着替えとタオルを放りこんだ。
「ボロロオン・・・・!!」
お世辞にもかっこいいとは言えないSUZUKI ボルティーだけど頑丈で頼りになる僕の相棒だ。
ナツミ「たくちゃん乗るよ~~~~!!」
僕はドギマギしていた。
二人乗りをするのも初めてなのに・・・・。
こんな綺麗なお姉さんを乗せるなんて・・・。
すっかり暗くなった山道を下る。
僕はいつもの左コーナーを少しだけ深くバンクさせて曲った。
勉強も出来無い。
お金も無い。
将来の夢も無い。
せめてバイクだけでも格好いいとこを見せたかった。
ナツミ「きゃ~~~~バイクが倒れちゃうよ~~」
僕は無言で加速した。
バイクしか僕には誇れるものがない。
ナツミさんに見せられるものも。
今はこれしか無かった。
静まりかえった山道にエンジン音と鼓動だけが鳴り響いていた…。




