第2話 老刑事の影
石井美和子から託されたノートを、カズヤとアイゼンハワードは慎重に机に広げた。
ページをめくるたびに現れるのは、石井龍太が執念を燃やして追い続けた事件の記録だった。
カズヤは眉をひそめる。
「……すごい。石井さん、退職したあともこんなに細かく調べてたんだ。」
アイゼンハワードは無骨な指でノートを押さえ、鋭い眼光で書き込みを追う。
「こいつは単なる怨恨事件じゃないな。奴は“組織の臭い”を嗅ぎつけていた。」
その時、遺品の中から一枚の古びた写真が出てきた。
カズヤが拾い上げる。
「これ……石井さんと誰かが一緒に写ってる。」
背景には霞が関の庁舎が映っていた。アイゼンハワードが写真を凝視し、低く唸る。
「ただの記念写真には見えん。石井はこの男を“記録に残す必要があった”のだろう。」
カズヤは記憶をたどり、息をのんだ。
「……見覚えある。数年前の未解決強盗事件の容疑者だ。この人、警察でも行方が掴めなかったって。」
アイゼンハワードは顎に手をやり、静かに言葉を落とした。
「石井さんは、なぜ容疑者と並んで写真を撮っていた? 共犯か、内通者か、それとも……。」
二人はノートを再び開き、そこに残された数字の羅列を見つけた。
「この数字……日付じゃない?」
カズヤが声を潜める。
アイゼンハワードは首を振った。
「いや、単なる日付じゃ説明がつかん。これは“暗号”だ。事件の背後にある、もっと大きな動きを示している。」
二人は石井が最後に調べていた未解決の「連続強盗事件」のファイルを洗い直した。
その資料は、警察が扱いきれず放置したままになっていたが――石井はその背後に組織的な陰謀を嗅ぎとり、独自に追跡していたのだ。
やがて、背後に気配が忍び寄る。
カズヤが振り返るが、そこには人影はない。だが確かに、誰かが後をつけている。
「……アイゼン、今の感じた?」
カズヤが囁く。
アイゼンハワードは鋭い目で暗がりを見据えた。
「間違いない。俺たちの動きを監視している奴がいる。石井を殺した連中か……あるいは、それを操っている黒幕か。」
二人は歩調を緩め、あえて足取りを変えながら監視者を炙り出そうとした。
石井が命を懸けて残した「苦渋の決断」という言葉。その真意に近づくたび、二人の周囲には闇が濃くなっていくのだった。




