第八話 隠れ家の夜
三人は、壊れたガラス窓から夜風が吹き込むマンションを後にした。
街はまだ灯りに包まれていたが、その光は安全を保証するものではなかった。
敵はすでに彼女の命を狙って動いている。
それを痛感したカズヤとアイゼンハワードは、伊藤ハルカを連れて秘密の隠れ家へと急いだ。
「ここなら簡単には見つからない。」
アイゼンハワードが選んだのは、都心から少し離れた古い倉庫を改装したアジトだった。
外見は廃墟同然だが、中は堅牢な扉と防音設備で守られ、簡易の監視システムまで整っていた。
カズヤはドアを閉め、念入りにロックを確認した。
「ふう…やっと一息つけるな。」
「でも、長くは留まれません。奴らは執拗に追ってくるはずです。」
伊藤の声は震えていたが、その瞳には諦めの色はなかった。
ハルカはバッグからノートパソコンを取り出し、机の上に広げる。
「これが福田さんのペースメーカーに送られた不審な信号の記録です。暗号化されていますが、時間をかければ解析できるはず。」
画面には波形データと複雑なコードの羅列が映し出されていた。
赤いラインで示された瞬間――福田の心臓が停止した時刻と、信号が発せられた時刻が完全に一致していた。
「外部から制御された…これで事故じゃないって確定だな。」
カズヤは拳を握りしめた。
アイゼンハワードは顎に手をやり、低い声で続ける。
「問題は、この信号を送った発信源だ。三神建設が使っていた衛星通信網を経由している可能性が高い。」
ハルカはさらに操作を続けた。
キーボードを叩く音だけが静まり返った隠れ家に響く。
「…もし発信源を特定できれば、黒幕を直接指し示せるはずです。」
カズヤは彼女の肩に手を置き、真剣な眼差しで言った。
「伊藤さん、無理はしないでください。あなたの命こそ、この証拠と同じくらい大事なんです。」
彼女はわずかに笑みを浮かべ、しかし決意を込めて答えた。
「大丈夫です。私には守ってくれる人がいる…そうですよね?」
カズヤとアイゼンハワードは視線を交わし、同時にうなずいた。
その夜、隠れ家には静かながらも緊張が張り詰めていた。
外では風が鉄の扉を鳴らし、時折、車の走行音が遠くに消えていく。
三人はそれぞれに覚悟を決め、黒幕の正体を暴く戦いの準備を整えようとしていた。
そしてパソコンの画面に、ある企業ネットワークの断片的なIDが浮かび上がる
三神建設の内部端末から発せられた信号の痕跡。
「やはり…ここに繋がるのか。」
アイゼンハワードの声は、嵐の前の静けさのように低く響いた。
福田 恒夫(死亡)
年齢: 67歳/大富豪、HR東日本の重役。心臓病を患いペースメーカー装着。リニア新幹線成功を遺産とする理想主義者。
福田 優子
年齢: 29歳/恒夫の若妻。社交的だが内面に不満を抱える。
織田 哲夫
年齢: 35歳/恒夫の秘書。忠実だが野心的。優子との関係に葛藤を抱える。
三神 浩太郎
年齢: 56歳/三神建設社長。権力志向が強く冷酷。政財界に太いパイプを持つ。
鈴木 一郎(重症)
年齢: 48歳/三神建設専務。冷静沈着。組織維持のためには法を曲げることも辞さない。
伊藤 ハルカ(いとう はるか)
年齢: 27歳/セキュリティシステムエンジニア。リニアのセキュリティを設計。事件の技術的鍵を握る。
高橋 遥人
年齢: 34歳/三神建設顧問エンジニア。冷徹で計算高い。利益独占を企む黒幕の可能性あり。
小野寺 理沙
年齢: 31歳/福田家の家政顧問。知的で社交的だが秘密主義。夫婦の秘密や金銭問題を握る。




