第四話 犯人のプロファイリング
カズヤは暗がりの路地でスマートフォンの画面を見つめ、アイゼンハワードから送られてきたメールを確認していた。彼女の捜査で得られた情報は、福田恒夫の死と「磁力の結界」の関係を示唆するもので、カズヤの観察とぴたりと符合していた。
「アイゼン、君の情報と俺の目撃記録を照らし合わせると、あの夜のレストランでのやり取りが、事件の核心に繋がる可能性がある。」
アイゼンハワードは画面越しに静かに頷いた。
「カズヤ、君の直感は正しい。だが、まだ全てを把握したわけではない。優子の秘密、そして三神建設の内部事情……それぞれが絡み合っている。」
二人は互いに情報を補完し、事件の全貌を解明しようと必死だった。だが、その矢先、緊迫した知らせが入った。
「カズヤ、鈴木一郎が襲撃された。重傷を負って搬送されたそうだ。」
その瞬間、二人の顔色が変わった。鈴木一郎は、三神建設の専務であり、事件の核心に触れる可能性のある人物だった。
現場の情報によれば、鈴木は夜、自宅近くの路地で突然何者かに襲われ、激しく殴打されたという。犯人は巧妙に姿を消し、現場にはほとんど手がかりが残されていなかった。
「これは偶然じゃない……」
カズヤは低く呟いた。
「鈴木が狙われたのは、あの事件に関わる何かを知っているからだ。」
アイゼンハワードも同意する。
「我々が真実に近づくたび、危険が増している。ここから先は、もっと深く、そして危険な世界に足を踏み入れなければならない。」
二人は顔を見合わせ、決意を固めた。事件の闇は深く、予想以上に複雑であったが、真実を暴くためには、どんな危険も避けるわけにはいかなかった。
夜の街に冷たい風が吹き抜ける中、カズヤとアイゼンハワードは、次の一手を考えながら、再び捜査の迷宮に足を踏み入れたのであった。
深夜の路地は、街灯の薄明かりにかすかに照らされ、湿ったアスファルトが冷たい光を反射していた。カズヤは手袋をはめ、慎重に現場へ足を踏み入れる。周囲には警察の規制線が張られ、赤と青の回転灯が路地に乱反射している。
現場には、鈴木一郎のバッグや携帯電話が無造作に落ちていた。アスファルトには、濡れた血が点々と続いており、蹴られたような跡や、もつれた格闘の痕跡が見て取れる。
カズヤはしゃがみ込み、指先で血のしずくの方向をなぞった。「犯人は鈴木をこちらに引きずった後、逃走している……」
小さな足跡や、壁に残されたわずかな擦り傷も見逃さない。彼は現場全体を俯瞰し、犯人の行動パターンを頭の中で再構築した。
「この路地は逃走経路が限られている……」
カズヤはつぶやき、壁際のゴミ箱や排水溝も注意深く確認した。「犯人は事前に下調べをしていた可能性が高い。鈴木を待ち伏せするために、周囲の目を避けられる場所を熟知していたはずだ。」
路面に散らばった小さな金属片や、スニーカーの擦れ跡も彼の目を引いた。「軽量で迅速に動ける者だ……」
カズヤはメモを取りながら分析を続ける。さらに、壁に残された微かな指紋や、ペンライトで照らすとわずかに光る暗号のようなマーキングも見逃さなかった。
周囲の状況を確認し終えたカズヤは、慎重に立ち上がり、空を仰いだ。夜の静けさの中で、路地には犯人の気配がまだ残っているような気がした。
「これだけ綿密に準備された襲撃……偶然ではない。鈴木を狙ったのは、事件にプロによる何者かだ。」
カズヤの眼差しは鋭く、暗闇の先に潜む真実を見据えていた。
彼は携帯でアイゼンハワードに連絡を入れた。
「アルおじ、現場を確認した。これは単なる強盗じゃない。次の一手を急がなければ。」
電話越しにアイゼンの低い声が返る。
「わかっている。情報を整理して、すぐに合流しよう。」
路地に残る血痕と散乱物を前に、カズヤは深く息をつき、さらに事件の核心に迫るため、夜の闇の中へと歩を進めた。




