第8話 エリシアの遺した鍵《メモリー・コードΩ》
帝都イグニスの夜は、妙に静かだった。
嵐の前に、街全体が息を潜める、そんな空気だ。
その静寂を破ったのは、けたたましい警告音。
〈全軍に通達。“記憶封鎖令”発動。対象はノア・アステリア。
体内に存在する“記憶の核”至急確保せよ〉
帝国の放送が終わる頃、パンドラ博士は白衣を翻しながら笑っていた。
「さてさて……“エリシアの置き土産”を、いただくとしましょうかねぇ…」
ノアの記憶核《メモリー・コードΩ(オメガ)》。
それは帝国が数十年と間探し続けた、世界最大級の“秘密”。
そして、アイゼンが抱えてきた“罪”の核心。
■作戦会議
廃墟となった研究塔の屋上。
月明かりの下に、4人の影が集まった。
ルアーナ
白衣にゴーグルをかけながら、にやり。
「ヘイ、ちょっと聞いてよ!
ノアの体内にある“Ω”を抜き取るには、最新の量子共鳴装置が必要なんだ。
もちろん作ったさ、天才だもんね!」
リュカ
優しい目をしているのに、握る短剣は鋭い。
「ノアは絶対に守るから。
でも…僕、こんな大きな戦いに向いてるかな?」
死神レイヴ
黒い外套が風に揺れる。
「怯えるな、リュカ。
俺は死神だ。お前の“死”は俺の許可がないと訪れん。」
アイゼンハワード
軍服を脱ぎ捨てた男は、煙草の火を指で弾き消した。
「いいか。帝国は本気で動く。
“封鎖令”は、戦争開始の合図だ。」
口調は冷静だが、どこかルパンのように軽い。
まるで「どうせ派手にやるなら、見せ場は多い方がいい」と言っているようだった。
イグニス帝国軍、迫る
城壁を越え、黒い影が次々と接近。
パンドラ博士の私設部隊、記憶狩り部隊。
ルアーナが叫ぶ。
「来た来た来たぁ!
向こうも準備万端ってか!」
レイヴは鎌を肩に乗せ、冷ややかに微笑む。
「さて……狩られるのはどちらだ?」
ノアの胸が光る
ノアの体内で、淡い光。記憶核Ωが脈動する。
そのたびに、エリシアが残した映像が揺れる。
「ノア、あなたが最後の希望よ」
ノアは震えた。
「母さん…僕、何をすればいい?」
アイゼンが彼の肩に手を置く。
「ノア、お前は何も悪くない。
悪いのは俺だ。」
風が止まった。
アイゼンの目は、過去の亡霊を見るように暗かった。
だが、表情の隅にワルの笑みが浮かんでいる。
「終わらせるぞ。
俺の罪を。
そして、お前の未来を盗み返す。」
まるで、ルパンが宝を盗る前に言う名台詞のようだった。
そして最終決戦前夜
ルアーナの科学。
リュカの優しさ。
レイヴの死神の力。
アイゼンの戦術と過去。
それらが一つに噛み合った瞬間、
巨大な物語の歯車が、ゆっくりと回り始めた。
帝都の空に無数の照明弾が上がる。
戦いのゴングが鳴った。
《メモリー・コードΩ》争奪戦。
開幕。




